前回は、気象学の基本概念とその歴史などを紹介しました。さて、日本は世界の中でも雨が多い国です。平均すると、年間で100日程度、3.5日に1回は雨が降る計算になります。日本では、四季の他にも「梅雨」や「秋雨」という雨の季節があります。歌の歌詞などにも「雨」というワードがよく出てくるほど、日本では雨が身近な存在です。今回は、その雨が降る仕組みについて考えてみましょう。
1. 水はなくならない
地球は「水の惑星」と呼ばれるように、表面の約70%が海水で覆われています。地球上の水は、水蒸気(気体)、水(液体)、氷(個体)のいずれかの形で存在しています。水は、暖めると水蒸気になり、逆に冷やすと氷になります。このように、水が温度によって姿を変えることを、状態変化(相変化)といいます(図1)。

自然界でも、この水の状態変化が行われています。海水が太陽の熱で暖められ蒸発することによって、空気中に水蒸気が増えます。次に、水蒸気を含んだ空気が冷やされ、水蒸気が凝結することで水に変化します。その水は雨(気温が低いと雪)となり、川や地中を流れて再び海に戻る、という循環を繰り返しています。このように、水は姿を変えるだけで、決してなくなることはありません。
2. 潜熱の効果
水が状態変化をする際に発生する熱のことを、潜熱(せんねつ)といいます。図1で紹介したように、この潜熱には、状態変化の種類によって、放出して周囲の空気を暖めるパターンと、吸収して周囲の空気を冷やすパターンがあります。例えば、夏場に暑さを和らげる打ち水は、この潜熱の効果を利用しています。地面などに撒いた水が、蒸発する時に熱を奪う(吸収する)ことで、地面や空気は熱を失って冷やされるのです(図2)。

地球は、極地(北極や南極)で寒く、赤道では暖かいといったように、場所によって温度差があります。これは、地球が丸いために、太陽の当たり方(日射量)が場所によって異なるからです(図3)。ただ、極地と赤道には確かに温度差があるものの、その温度差はある一定の幅を保つことができています。これはなぜでしょうか。実は、赤道の過剰な熱が、熱の少ない極地へ運ばれることで、必要以上に温度差が広がらないようになっているのです。これを熱輸送といいます。

この熱輸送を行っているのは風と海流、そして、今お話ししている潜熱です。風や海流に関しては、どちらも暖かい場所から冷たい場所へと吹いたり流れたりすることで、熱輸送を行っています。潜熱については、もう少し複雑なのでイメージしづらいかもしれません。例えば、赤道付近で水が蒸発して水蒸気に変化すれば、熱を吸収して冷やす効果があります。逆に、極地付近で水蒸気が凝結して水に変化すれば、そこでは熱を放出して暖めます(図4)。このように、潜熱は打ち水のように身近なことから、熱輸送のようにずっとスケールの大きなものにまで、広く関係しているのです。

3. なぜ雨が降るのか
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