前回は、拡散によって原子が移動する距離、相互拡散と、金属の機械的性質を紹介しました。今回は、炭素鋼、および合金鋼の強化方法について解説します。
1. 鉄鋼
鉄は、最も古くから知られている金属の一つです。中でも炭素鋼は、全鉄鋼生産量の約90%を占めています。合金鋼は、炭素鋼から派生して開発された鉄鋼です。合金鋼は、クロムやニッケルなどを6%以下含む低合金鋼、クロム18%、ニッケル8%の組成を代表とするステンレス鋼、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、コバルトなどの合金元素を高濃度含有する工具鋼に分けられます。
炭素は、最も有効な鋼の強化元素です。炭素は鉄中に0.04%から4%の範囲で添加され、添加量が多くなるにつれて、低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼、鋳鉄に分類されます。
2. 焼ならし組織
焼ならしとは、鋼を所定の温度まで加熱した後に空冷し、金属組織の結晶を均一微細化させて、機械的性質の改善や切削性の向上を行う熱処理をいいます。炭素鋼は、熱間圧延加工されてから室温まで徐冷された状態、すなわち焼ならし状態での入手が可能です。
熱加工による組織変化を解説する前に、まず、炭素鋼の熱処理による状態の変化を説明します(第2回、5章参照)。図1は、Fe-C状態図です。
オーステナイトは、γ鉄固溶体です。鋼を常温から加熱すると、結晶構造が体心立方から面心立方に変わります(第1回、図4参照)。この状態がオーステナイトです。軟らかくかつ延性があります。
フェライトは、α鉄ともいい、結晶構造は体心立方構造です。常温下における純鉄は通常フェライトです。軟らかい性質を持ちます。
セメンタイトは、鉄の炭化物で、Fe3Cで表されます。硬くてもろい性質です。
パーライトは、フェライトとセメンタイトFe3Cとの共析晶で、交互に重なった層状を持ち、光沢がある組織です。組織全てがパーライトのみでできた鋼を共析鋼といい、炭素量が少ないものを亜共析鋼、炭素量が多いものを過共析鋼と呼びます。
熱加工による組織変化を説明します。図2~6は、炭素鋼の室温におけるミクロ組織が、炭素含有量によりどのように変化するかを模式的に示したものです。純鉄の場合、γ鉄が914℃以下に冷却されると、γ組織の粒界にα相が核生成し、組織はα変態します(図2)。
炭素含有量が0.8%の共析組成の鋼を冷却すると、723℃以下でパーライトのノジュール(塊)が粒界に核生成し、それが成長してパーライト組織になります(図3)。
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3. 焼ならし炭素鋼の機械的性質
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4. 焼入れ焼戻し炭素鋼
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5. 合金鋼の固溶硬化
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6. 合金鋼の析出硬化
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