溶融めっきと溶射:金属表面処理の基礎知識8

金属表面処理の基礎知識

更新日:2016年11月24日(初回投稿)
著者:仁平技術士事務所 所長 仁平 宣弘

前回は、硬質膜の開発動向および特性を解説しました。最終回の今回は、溶かした金属中に処理物を浸せきする溶融めっきと、溶融もしくは半溶融材料を処理物に吹き付ける溶射について解説します。

溶融を利用した表面処理法には多くの種類があり、主な利用目的は、耐食性、耐摩耗性および耐熱性の向上です。鉄鋼業や金属製品、輸送用機械や電気機械など、製造業の多分野で利用されています。

1. 溶融めっき

溶融めっきは、溶融金属中に処理物を浸せきし、表面に溶融金属およびその合金層を形成させる表面処理です。代表的なものに、溶融亜鉛 Znめっきや溶融アルミニウムAlめっきがあり、JISでその種類や、記号、試験方法、作業標準を規定しています。例えば、JIS H 8641による溶融亜鉛Znめっきの記号はHDZ、溶融アルミニウムAlめっきの記号はHDAです。また、記号の後に付着量などを示す番号が付きます。

溶融亜鉛Znめっきは、鋼の防錆(せい)を目的として利用されます。他の表面処理に比べて防錆(せい)期間が長く、経済的にも有利です。処理物の形状や大きさの制約をほとんど受けないため、小物部品から大型部品まで広範囲の分野で利用されています。構造物としては、鋼製のボルトやナット、架線用金具、大型構造物などに利用されます。また亜鉛Znめっき鋼板は、洗濯機や冷蔵庫など家電製品の外内板や、屋根や壁などの建材、自動車車体などに利用されています。

溶融亜鉛Znめっきの処理温度は440~470℃です。図1に470℃で溶融亜鉛Znめっきを施したSS400の断面顕微鏡組織を示します。めっき層は、純亜鉛Zn層と、鉄Fe-亜鉛Zn合金層から構成されていることが分かります。

図1:溶融亜鉛Znめっきを施したSS400の断面組織

図1:溶融亜鉛Znめっきを施したSS400の断面組織

亜鉛Znの付着量や純亜鉛Zn層と合金層の生成比率は、めっき浴の温度、浸せき時間、処理物の表面粗さや寸法、化学成分などによって影響を受けます。処理温度が高いほど、また浸せき時間が長いほど付着量が増加し、同時に鉄Fe-亜鉛Zn合金層の割合も増加します。特に後工程で塗装する場合は、溶融亜鉛Znめっき後に加熱して鉄Fe-亜鉛Zn合金層を積極的に生成させる合金化溶融亜鉛Znめっきも行われ、自動車車体、家電製品、建材などに多用されています。

2. 溶射

溶射は、利用初期には美術品や工芸品など、装飾品に用いられていました。その後、防錆(せい)・防食を目的とした亜鉛ZnやアルミニウムAlの溶射が注目され、1950年頃から構造用鉄骨や船体などにも利用されるようになりました。

さらに、熱源の高温化や粒子速度の高速化を目指した溶射法の開発が活発化し、溶射皮膜の性質が著しく改善されました。現在では、防錆(せい)・防食だけでなく、耐摩耗性や耐熱性をはじめ、各種機能性付与を目的とするなど、溶射の適用分野は急速に広がっています。

溶射法は、熱源の種類によって、ガス式と電気式に大別されます。さらに加熱形態や、溶射材料、処理物の種類や形態によって細分化され、使い分けられています(図2)。

図2:溶射の種類と分類

図2:溶射の種類と分類

図3に、溶射によって皮膜が形成される過程の模式図を示します。

図3:溶射膜形成の模式図

図3:溶射膜形成の模式図

供給された固体(線材、棒材、粉末)の溶射材料は、ガスや電気的放電によって急速に加熱され、溶融または半溶融状態の粒子になります。この粒子は、圧縮された空気やその他のガスによって加速され、高速で処理物表面に叩きつけられて付着し、処理物上で冷却されて固体化します。この繰り返しによって、溶射材料が処理物表面に堆積し、皮膜が形成されます。

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