化成処理と陽極酸化:金属表面処理の基礎知識5

金属表面処理の基礎知識

更新日:2016年10月7日(初回投稿)
著者:仁平技術士事務所 所長 仁平 宣弘

第3回第4回では、電気めっきと化学めっきを解説しました。両処理共に、基材とは全く異なる皮膜を形成する表面処理でした。今回は、基材と薬品との化学反応を利用する化成処理と、電解反応を利用する陽極酸化について解説します。

1. 化成処理

化成処理は、化学反応のみで金属の表面に化合物層を生成させる表面処理です。金属を低温(常温~70℃)の薬品に短時間(数秒~数分)浸せきします。安価に行うことができ、小物の大量生産に適しています。

化成処理の種類は多く、リン酸塩処理を主体として、シュウ酸塩処理、クロメート処理、黒染め処理、不導態化処理などがあります。その多くは防錆(せい)をはじめ、塗装下地や塑性加工用の潤滑を目的に利用されています(表1)。

表1:主な化成処理の種類と用途
処理法 表面処理層 適用材料 用途
リン酸塩処理 含水リン酸亜鉛 鉄鋼、亜鉛、アルミニウム 防錆(せい)、塗装下地、塑性加工用潤滑
含水リン酸亜鉛カルシウム 鉄鋼 焼付塗装下地、塑性加工用潤滑
含水リン酸鉄 鉄鋼 塗装下地、干渉色
含水リン酸マンガン 鉄鋼 防錆(せい)、摺動部潤滑、耐摩耗性
シュウ酸塩処理 シュウ酸鉄 ステンレス鋼 塑性加工用潤滑
クロメート処理 含水クロム酸化物 亜鉛、アルミニウム 防錆(せい)、装飾、塗装下地
黒染め処理 鉄酸化物 鉄鋼、ステンレス鋼、銅合金 防錆(せい)、着色
不働態化処理 クロム酸化物 クロム酸化物 防錆(せい)

リン酸塩処理

リン酸塩処理は、適用材料や用途によって処理法が使い分けられています。最も一般的な処理法はリン酸亜鉛処理です。表面処理層は、リン酸亜鉛 Zn3(PO4)2・4H2Oを主体とする含水リン酸亜鉛で構成されています(図1)。主な適用目的は、防錆(せい)や塑性加工する際の潤滑です。また、塗装の下地処理としても利用されています。リン酸亜鉛処理された鋼板はボンデ処理鋼板と呼ばれ、冷間圧延など塑性加工用に用いられています。

リン酸亜鉛処理品表面のSEM像とEDS分析事例

図1:リン酸亜鉛処理品表面のSEM像とEDS分析事例

クロメート処理

クロメート処理は、電気亜鉛めっきには欠かせない表面処理です。第3回で説明したように、その目的は耐食性の向上です。色合いは、皮膜質量が小さい場合は透明光沢で、質量が大きくなるにつれ、淡黄色、黄色、緑色などの装飾効果も得られます(表2)。

表2:クロメート皮膜の等級・種類および記号(抜粋:JIS H 8625 1993)
等級 種類 記号 皮膜質量(g/m2) 代表的色合い(参考) 耐食性
1級 光沢 CM1A 0.5以下 透明、時として青味 6
淡黄色 CM1B 1.0以下 わずかに干渉模様 24
2級 黄色 CM2C 0.5を超え1.5以下 黄色干渉模様 72
緑色 CM2D 1.5を超えるもの オリーブ、グリーン、ブロンズ、褐色 96

装飾効果の一例として、以下に2種類の有色クロメート皮膜の表面状態を示します(図2)。ただしクロメート処理は、特定第一種指定化学物質である六価クロムを使用するため、三価クロムへの転換が急がれています。

電気亜鉛めっき上の有色クロメート皮膜の表面状態

図2:電気亜鉛めっき上の有色クロメート皮膜の表面状態

黒染め処理

黒染め処理は、ほとんどの鉄鋼材料に適用可能です。鉄鋼材料を水酸化ナトリウム NaOH(苛性ソーダ)水溶液などの高濃度アルカリ溶液に浸せきすることで、表面に黒色の緻密な四三酸化鉄 Fe3O4皮膜を生成させます。主な適用目的は着色(黒色)です。ただし、表面層は緻密な酸化物なので、耐食性の向上も期待できます。また皮膜表面に多数の微細孔が存在し、保油効果があるため、焼き付き防止を目的として工具類にもよく適用されています。

不働態化処理

不働態化処理はパッシベーションとも呼ばれ、機械加工や真空熱処理などで不働態膜が破壊されたステンレス鋼(SUS304など)を対象として行う表面処理です。不働態膜は自然に放置しても生成します。人工的に生成促進するには、ステンレス鋼を硝酸 HNO3などの酸化性酸に浸せきします。これにより、表面に安定な不働態膜(クロム酸化物)を生成し、耐食性を復活させます。

2. 陽極酸化

酸水溶液などの電解液中で直流電解を行うと、陽極では酸化反応、陰極では還元反応を生じます。すなわち、陽極側の金属は金属イオンとして電解液中に溶出するか、表面に安定な酸化物層を形成します。この酸化物層を形成する現象を利用した表面処理が陽極酸化です。アルミニウム Alやチタン Tiの表面処理として利用されています。

アルミニウム Alの酸化皮膜やその製品は、アルマイト(商品名)という通称で呼ばれています。この陽極酸化の主な用途は、防食です。処理条件を調整することで硬質皮膜も得られるため、耐摩耗性も要求される機械部品や航空機部品などにも適用されています。

アルマイトの種類は電解液として使用する水溶液によって分類され、主なものに硫酸皮膜とシュウ酸皮膜などがあります。

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3. 酸化皮膜による着色

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