前回は、小売業におけるEC(エレクトロニックコマース)の台頭と、EC専業、リアル店舗専業、ECとリアルを持つ小売業にとってのマーチャンダイジング戦略について説明しました。今回は、最終回です。マーチャンダイジングの新しい傾向と、小売サービスとしてのさまざまな集客プロモーションや、ARの利用について解説します。
1. マーチャンダイジングと集客プロモーション
ECは成長し続けています。一方で、リアル店舗でも、店舗の魅力を向上させるため、リアル店舗ならではの、マーチャンダイジングにおけるさまざまな展開が見られるようになりました。
一つは、集客プロモーションとして、マーチャンダイジングを戦略的に実行するということです。百貨店では、以前より催事場でのイベントとして、地方名物や海外輸入品の物産展を企画し、行ってきました。近年では、常設の売り場ではなく、イベントコーナーの売り場を作り、週替わりで、地方の名産品や人気のある食品ブランドを品ぞろえし、販売するというマーチャンダイジングを行っています。
消費者からすれば、店舗に行くと、同じブランド、同じカテゴリーの商品群による売り場構成ではなく、週ごとに売り場で販売されているものが変わり、また普段手に入りにくい地方の名産品や、話題の商品が販売されるため、頻繁にその店舗を訪れるというインセンティブが生まれます。一方で、百貨店側には、全国の名品や、まだ知られていない地方の人気商品を見つけ出し、商品企画を行い、毎週連続的に展開できるマーチャンダイジングの実行能力が必要となります。
2. 小売サービスとマーチャンダイジング
リアル店舗での魅力度を高めようとすると、物販を陳列するだけでなく、小売店舗で展開されるサービスの向上も求められます。セルフサービスのスーパーや量販店では、買い物客自身が陳列棚から商品を取り出し、レジに持って行って精算し、自分で袋詰めをします(図1)。このようなセルフレジによるサービスは、精算時間の短縮につながります。また、重く、かさばる商品については、配達サービスなども展開されています。

その他、飲食店サービスと物販とを、同じ売り場で展開することも行われています。例えば、阪急百貨店うめだ本店では、ワインなど、アルコール飲料と総菜を販売している売り場のそばにテーブル席を設置し、購入した商品を飲食できるようなスペースを提供するというサービスを展開しています。
商品の企画において、その場に陳列するだけではなく、飲食の機会を提供することは、消費者にとって売り場の魅力が増すばかりか、まだ購入していない他の買い物客の目にも触れるため、消費者の五感に訴える機会にもなります。
マーチャンダイジング戦略においては、物販と飲食の両方を連動させる商品の企画や陳列、プロモーションが必要です。また、サービスについては、その場で消費者自身が経験するものであるため、サービスの提供と物販の提供の、両方をマネジメントする必要があります。
図2に示すように、物販における小売業の店と消費者の関係と、サービスにおける店と消費者の関係は異なります。サービスにおいては、消費者の知覚や経験がより重要になります。しかし、物販とサービスとを両方企画し、管理することは容易なことではありません。

3. ARの利用とマーチャンダイジング
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