ECの成長とマーチャンダイジング:マーチャンダイジングの基礎知識5

マーチャンダイジングの基礎知識

更新日:2023年2月24日(初回投稿)
著者:神戸大学 大学院 経営学研究科 経営学部 教授 南 知惠子

前回は、マーチャンダイジングと小売業の収益性を紹介しました。今回は、消費者向けの電子商取引、いわゆるEC(Electronic Commerce)の成長とマーチャンダイジングについて解説します。

1. ECにおけるマーチャンダイジング

コロナ禍で、ネット・ショッピングの利用率が増えているとよくいわれます。実際、消費者向けの電子商取引(EC)は、1990年代後半より成長し始め、現在では20.7兆円の市場規模にまで拡大しています。小売全体の売上高に占めるECの売上高の比率は、EC化率として表現され、2022年8月では8.78%となっています(経済産業省)。

ECには、楽天、アマゾンといったECプラットフォームと呼ばれる、オンライン上のショッピング・モールや、家電量販店などの小売業者による直営のサイト、製造企業直営のサイトなどがあります(図1)。また、越境ECと呼ばれる、中国やアメリカのショッピングサイトでの取引が増加していることも注目を集めています。

図1:オンラインショッピング
図1:オンラインショッピング

本連載ではこれまで、マーチャンダイジングにおいて、リアル店舗の物理的な空間に、どのような商品企画をして、品ぞろえを構築し仕入れるのか、またどのように陳列してプロモーションを行うかといったことを中心に説明してきました。しかし、ECの成長に伴い、マーチャンダイジングにおいて検討すべきことも増えてきます。

一つは、ECサイトにおけるマーチャンダイジングです。ショッピング・モールであれ、小売業者直営サイトであれ、小売業である限り、商品を仕入れ、販売するということに変わりはありません。ただし、物理的な店舗には、店頭在庫や棚割りという制約があります。オンライン上ではそのような制約はなく、例えば長らく店頭に置いておけないような商品も、オンライン上では販売可能になります。リアルの書店では棚から数か月で出版社に返品されてしまう書籍も、ネットでならば在庫している可能性があるということです。つまり、売れ筋だけではなく、多様な品ぞろえが可能になるというメリットがあります。

一方で、物販の場合は、物理的に商品を在庫しておく必要があります。ECサイトであれども、仕入れた商品は売り切っていく必要があります。どれだけの商品を仕入れ、販売するかは、その企業の資金力や規模によります。逆に、それほど資金力のない店舗であっても、商品を一定量仕入れ、販売できれば、物理的な店舗出店よりも低コストで済むECショッピング・モールでは、小規模ながら商取引を継続できます。いわば生業的な小売業も、ショッピング・モールでビジネスを行うチャンスが生まれます。

製造企業直営のマーチャンダイジングは、小売業とは異なります。幅広く品ぞろえをする必要がないため、自社のブランドを直接消費者に販売するというビジネスが可能になります。自社ブランドを売りたい製造企業にとっては、多様な店舗で販売する方が、販路が広く、ビジネス上のメリットは大きいはずです。一方で、直営サイトで直接消費者と商取引をすることにより、消費者の需要やテイストなど重要な情報を入手でき、商品の企画に生かすことが可能になります。

2. ECとリアル店舗の共存時代のマーチャンダイジング

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