ビジュアル・マーチャンダイジング:マーチャンダイジングの基礎知識2

マーチャンダイジングの基礎知識

更新日:2022年12月20日(初回投稿)
著者:神戸大学 大学院 経営学研究科 経営学部 教授 南 知惠子

前回は、マーチャンダイジングにおけるさまざまな調整活動を紹介しました。今回は、視覚的なマーチャンダイジング、いわゆるビジュアル・マーチャンダイジングについて解説します。

1. 視覚的なアピールとマーチャンダイジング

皆さんは、全国展開しているアパレル・ブランドの店舗は、どこの地域の百貨店でも、あるいは路面店でも、醸し出す雰囲気が似ていると感じたことはないでしょうか。衣類と小物の陳列の仕方、照明や什器(じゅうき)など、全体でそのブランドの特徴を伝えています。

マーチャンダイジングのうち、特に顧客の視覚に訴えかける方策を、ビジュアル・マーチャンダイジングといいます。例えば、店舗の入口付近にある商品の陳列を定期的に変え、潜在顧客(商品の存在を知らないものの、必要性を感じた場合に購入する可能性が高い顧客)の目にとまりやすくするなどよく行われています。また、家具やインテリア雑貨を扱う店舗は、商品を一点一点展示するのではなく、空間全体を魅力的に展示することで、個々の商品を際立たせ、また使用の場面を顧客にイメージさせます。

スウェーデン発祥の家具・雑貨店のIKEAは、世界62市場に進出、459店舗を展開するグローバル企業です(2022/12/15現在)。マーチャンダイジング戦略、とりわけビジュアル・マーチャンダイジングに強みを持っています。IKEAは、組み立て家具を、フラット・パック(平箱に家具などを部品に分けて隙間なく梱包し、開封後に組み立てるもの)を消費者に販売するというビジネスモデルを主力としています。商品の低価格のみを訴求するのではなく、組み立てた家具がショールーム内でコーディネートされ、店舗自体が販売促進に重要な働きをしています(図1)。

図1:IKEAダイニングルームのコーディネート例
図1:IKEAダイニングルームのコーディネート例

2. グローバルに展開されるマーチャンダイジング

IKEAグループは、生産部門と小売部門、トレーディング・サービス、および物流機能を持ち、小売部門に関しては、直営とフランチャイズ店舗の形態があります。日本のIKEAジャパンは、フランチャイズ組織のIngkaグループに属する日本での販売会社で、法人向け1店舗と小売店舗12店舗を国内展開しています(2022/12/15現在)。

IKEAのマーチャンダイジングは、グローバルに展開され、商品の企画・デザインは全てIKEA of Sweden(IOS)で行われます。50か国900以上のサプライヤーに対して、IOSが中心となって仕入れ活動の管理を行い、マーチャンダイジングの計画を立てます(参考:IKEA Sustainability Report Y21)。また、需要予測や情報収集活動に基づき、重点商品の品目・数量を決め、IOSが計画を各国のサービスオフィス(販売会社)に伝え、各店舗で展開されることになります。

計画には、3年計画などの長期計画と、四半期ごとの短期計画があります。各国の販売会社は、IOSにその国や地域の市場情報をフィードバックして、調整活動を行い、最終的にはIOSがIKEA全体としての意思決定を行います。サプライヤーのキャパシティや、輸送・在庫などの流通計画と販売計画についての情報がIOSに集約され、これらを踏まえて商品企画が実施されます。

つまり、商品のコンセプトから、最終的に各国の店舗でどのような価格で販売されるかといった全体のマーチャンダイジング計画が、IOSで集中的に立てられます。また、世界各国の市場の多様性がありながらも、当初の計画がぶれずに、店舗側で販売されることが重要になります。

3. ビジュアル・マーチャンダイジングによるMD計画の履行

マーチャンダイジング計画が、世界各国の店舗で、計画通りに展開されるために、各店舗でのビジュアル・マーチャンダイジングが重要な役割を負うことになります。各店舗には、販売や物流、人事といった部門(職能)があり、中でもIKEAを特徴付けるのが、Communication & Interior Design部門です。

この部門の職務は、ショールームと呼ばれるリビングや書斎、寝室といった仮想居住空間を設置し、フラット・パックから組み立てた家具や雑貨を、視覚効果を生かして配置することです。つまり、家具のインテリアデザインを見せることにより、組み立てパーツの購入を喚起することになります。この部門の家具に関する知識と、インテリアデザインの能力、視覚に魅力的に訴求するスキルは、グローバル企業がローカルな市場で展開するのに必要とする、需要の相違を調整する機能を果たす要素となっています。

4. クロス・マーチャンダイジングの有効性

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