マーチャンダイジングとは:マーチャンダイジングの基礎知識1

マーチャンダイジングの基礎知識

更新日:2022年11月16日(初回投稿)
著者:神戸大学 大学院 経営学研究科 経営学部 教授 南 知惠子

コンビニや、スーパー、ホームセンターなどの店舗に行くと、それぞれの店の種類や立地に合った商品が品ぞろえされ、棚に並んでいます。今日の日本の消費者は、店頭に商品が並んでいることを当たり前のように感じています。これを実現させているのが、マーチャンダイジングといわれる活動です。本連載では、6回にわたり、マーチャンダイジングの基礎知識を解説します。

1. 小売業とマーチャンダイジング活動

マーチャンダイジングは、日本語に訳すと商品政策となります。主として、流通業で使われる言葉です。特に小売業では、最も重要な仕事の一つとして考えられています。

小売業は製造業と異なり、原材料を仕入れて生産活動を行うということをしません。生産されたもの、例えば生鮮品や加工食品、日用品雑貨、建材、工具などの製品を仕入れて、消費者に対して商品として販売するのが小売業の役割です。製品を仕入れて販売するというプロセスには、どのようなものを仕入れるのか、どれだけの量を仕入れるのか、それぞれいくらで販売するのか、どのように売り場を作って販売していくのかといった意思決定と活動が含まれます。

これらの仕入れから販売までの一連の活動について、計画を立てて実行し、管理することがマーチャンダイジング活動です。仕入れ、商品企画、品ぞろえ、価格設定、陳列、販売プロモーションの全てに関わることになります(図1)。

図1:マーチャンダイジング活動
図1:マーチャンダイジング活動

店舗の売り場には物理的なスペースがあり、そこにどのような商品をどれだけ仕入れて販売するかには、仕入れと販売計画を必要とします。例えば、総合スーパーの場合、1店舗における品目ごとのサイズや色など、仕入れの取り扱いの単位は、実に10万個以上に及びます。これらの数の商品を企画し、店頭に並べて売っていくのは大変な活動です。

2. マーチャンダイジングに関する店舗と本部の調整活動

コンビニや、スーパー、ホームセンターは、多くの場合、多店舗を展開する経営形態となっており、実際の販売活動を行う店舗の部門と、管理を行う本部があります。この場合、本部の商品部と呼ばれる部門と、店舗側の商品課長など商品政策に関わる担当者たちとが協働して、マーチャンダイジングを行います。

多店舗を展開する小売業は、本部の商品部が仕入れるべき商品の計画を立て、製造企業や納入業者(卸売業者)との交渉を一括して行い、店舗部門には、商品の販売計画を指示します(図2)。仕入活動としては、本部一括で管理する方が効率よく、また価格面での交渉もしやすいという利点があります。一方で、本部では店舗の商圏についての詳細な情報を入手するのが難しいため、マーチャンダイジングの具体的な展開については、店舗の意思決定に多くを任せるということも行われます(参考:高嶋克義・高橋郁夫著、小売経営論、有斐閣、2020年)。

図2:小売業の本部と店舗との関係とマーチャンダイジング
図2:小売業の本部と店舗との関係とマーチャンダイジング

小売業の本部では、店舗から実際の販売実績に関する情報を収集し、さまざまに需要予測を立て、期間ごとの商品企画と販売計画を立てます。つまり、ある時期にこれだけの品目を販売しようと綿密な計画を立てるのです。しかし、実際には冷夏や暖冬といった気温差により、ミネラルウォーターは予想より売れない、コート類が売れない、一方で感染症の流行により衛生用品が売れる、台風シーズンには防災グッズが飛ぶように売れるということが起こります。

本部と店舗(現場)との情報ギャップ、予測と実需というギャップとをできるだけ埋めるために、商品部門と店舗のマーチャンダイジング担当者とが協働します。このとき、本部の権限が強い場合と、店舗の権限が強い場合とがあります。

3. 店舗内でのマーチャンダイジングに関する調整活動

マーチャンダイジング活動は、店舗内でもさまざまな部門との調整を必要とします。月ごとの販売計画において、店舗では商品担当、販売担当、マーケティング担当者間で販売計画を調整します。

天候や気温など需要の変動要因があると、販売の調整手段として、値引きがよく行われます。生鮮食品は、閉店時間が迫ってくると値段を下げ、アパレル商品は、シーズンの終わりにセールを行います。

また、需要喚起のために、商品の陳列を変え、売り場の構成を変えるということが行われます。商品と販売担当者だけでなく、売り場づくりの担当者や販促担当者も協働して販売活動を行います。

総合スーパーでは、入学シーズンにはランドセルや式典参加用のフォーマルなスーツ、夏休み前には浴衣や納涼グッズ、クリスマスにはインテリアグッズやパーティー食材など、コーナーを作って販売プロモーションを行うこともマーチャンダイジングの一例です。コンビニでも、バレンタインデーやクリスマスなど催事ごとに、レジのそばに関連商品を陳列し、ポスター類などの販促物を目立たせます。

このように、季節や催事のタイミングに合わせて、限られた売り場をどのように仕切って商品を陳列し、どのタイミングで商品を入れ替えるかを企画、決定し、作業を行います。

その店舗が、どのような地域に位置しているか、近くの住民が日常的に店舗を利用しているのか、あるいは遠方から車でやってくる顧客が多いのかによっても売れる商品は異なります。そのため、マーケティング担当者は、商圏内の情報や、実際に来店する顧客の属性、買い物の仕方などを情報収集する必要があります。徒歩や自転車で少量の買い物を頻繁に行う買い物層と、車で来店してまとめて購入する層とでは、購入の単位や、需要する品目も違うことが想定されるためです。収集した情報に基づく分析と、売り場担当者とのミーティングといった情報共有により、マーチャンダイジングにおけるさまざまな調整が行われます。

いかがでしたか? 今回は、マーチャンダイジングにおけるさまざまな調整活動を紹介しました。次回は、ビジュアル・マーチャンダイジングと題し、視覚的なマーチャンダイジングについて解説します。お楽しみに!

参考文献
Dessein, W. Lo, D.(Ho-Fu) & Minami, C., Coordination and Organization Design:Theory and Micro-Evidence, American Economic Journal:Microeconomics( Vol.14(3) 2022.)