教育による残留リスクの低減:機械安全の基礎知識4

機械安全の基礎知識

更新日:2017年11月2日(初回投稿)
著者:職業能力開発総合大学校 教授 千葉 正伸

前回は、保護具を用いた機械安全のリスク低減方策を説明しました。今回は、安全教育の観点から、リスク低減方策を解説します。

1. 安全教育の必要性

近年、機械設備の高エネルギー化や、生産設備の高度化が進み、作業者を取り巻く環境は大きく変化しています。それに伴い、労働災害も多様化しています。図1は、製造業における作業者の不安全な行動と、死傷者数の内訳を示したものです。災害発生の根本的な原因を見ると、多くの場合、設備の不安全状態(事故が発生しうる状態・事故の発生原因が作り出されている状態)と、人間の不安全行動(意図的に人間の安全を脅かす可能性のある行動を行うこと)が関係しています。

図1:不安全な行動の内訳別死傷者数

図1:不安全な行動の内訳別死傷者数(厚生労働省、職場のあんぜんサイト 労働災害原因要素の分析 平成25年 製造業)

人による誤った動作や不安全な行為による事故は、機械設備側に本質的な安全方策を施すことより、防ぎます。これがフェールセーフの考え方です。人はミスをすることを前提に、フールプルーフや機械のフェールセーフは設計されます。

一方、作業現場では、非定常作業(保守作業やトラブル対処など、通常の作業と異なる作業)や再起動の確認など、人に委ねられる作業がなくなることはありません。安全構築には、フェールセーフと同様に、人に対する安全教育が重要です。また、不安全行動は、作業者の知識や経験、技能の不足に起因することが多く、事業者には、安全衛生教育、就業制限、中高年齢者の適正配置が義務付けられています。

2. 法的な安全衛生教育

事業者は労働者を雇い入れたときや、作業内容を変更したとき、危険または有害な業務に就かせるときには、従事する業務に関する教育を行うことが義務付けられています(労働安全衛生法第59条)。

雇い入れ時の安全衛生教育

労働者を雇い入れたときは、遅滞なく、8つの事項について、教育を行なわなければなりません(労働安全衛生規則第35条)。

・安全装置、保護具などの性能および取り扱い方法

・作業手順に関すること

・作業開始時の点検に関すること

・機械、原材料などの危険・有害性および取り扱い方法

・事故時の応急処置および避難に関すること

・業務により発生する恐れのある疾病の原因および予防に関すること

・整理・整頓・清潔の保持に関すること

・その他、安全衛生に関する必要事項

危険・有害な業務に関する教育(特別教育)

事業者は、労働者を危険または有害な業務に就かせるときは、その業務に関する安全または衛生のための特別教育を行わなければなりません(労働安全衛生法第59条、労働安全衛生規則第36条)。特別教育を必要とする業務には、アーク溶接や小型車両系建設機械の運転など計49種があり、労働安全衛生規則第36条に規定されています。事業者は、特別教育を行った受講者や科目などについて記録を作成し、3年間保存しなければなりません。

3. 安全教育の種類

人の不安全行動の原因と、必要となる安全教育の種類を表1に示します。

表1:人の不安全行動の原因と安全教育の種類
人の不安全行動の原因 必要となる安全教育の種類
知らない(安全に関する知識がない、または不足している) 安全知識教育
知っているが、できない(安全に関する知識を持っているものの、技能が伴わない) 安全技能教育
知っているが、やらない(知識、技能を持っていても、実行しない。本人の性格に起因することが多い) 安全態度教育

安全知識教育、安全技能教育、安全態度教育の詳細を、それぞれ説明していきます。

安全知識教育

災害の原因は、入社後1年未満の作業者の不安全行動が多くを占めています。このことから、新入社員に対する安全知識教育が、いかに重要であるかが分かります。新入社員には、入社後1週間のうちに、各職場共通の安全に対する集合教育を行います。教育の項目としては、企業の沿革、生産設備と工程の一般知識、共通の安全作業心得、一般的安全知識、法定教育などがあります。集合教育終了後は、職場ごとに、作業に応じた技能教育を個別に行い、危険箇所を学ばせます。

安全技能教育

安全技能教育の目的は、安全知識教育で得た知識を生かして、技能を身に付けることです。現場作業を通じて、作業者のレベルに応じた個別教育を行います。作業別に作成された作業標準に基づき、繰り返し実施することが重要です。危険作業の場合は、実際に現場に入る前に、パソコンなどを使いシミュレーションによる安全性の確認をすることが、重要です(図2)。

図2:シミュレーションによる安全性の確認の様子

図2:シミュレーションによる安全性の確認の様子

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4. 一般教育と現場監督者教育

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