機械の運動に関わる動力伝達要素:機械設計の基礎知識6

機械設計の基礎知識

更新日:2017年7月20日(初回投稿)
著者:関東学院大学 理工学部 機械学系 専任講師 西田 麻美

前回は、機械要素のうち、機械構造を支える部品について伝えました。今回は、機械の運動に関わる動力伝達要素について説明します。

1. 動力伝達要素とは

機械を適切に動かすには、駆動源(モータなど)の動力を機構設計通りの運動に変えるメカニズムが必要です。動力伝達要素とは、このメカニズムを構成している主な部品のことで、動力を伝える部品を原動車(または原動節)、動力が伝わって運動をする部品を従動車(または従動節)といいます。機構設計では、動力を目的の運動に変換するための方法、具体的には、1:運動の変換、2:運動の方向、3:運動の伝達について考察し、動力伝達要素の中から適切なものを選定します。

1:運動の変換

運動の変換は不変型と可変型に大別できます。

  • 不変型:速度や力(トルク)は一定(等速)で、方向のみを変えて運動を出力する
  • 可変型:速度・力(トルク)・方向を変えて運動を出力する

2:運動の方向

運動の方向は4種類あり、複数を組み合わせることで複雑な動きが可能です。

  • 正転
  • 逆転
  • 上下運動
  • 左右運動

3:運動の伝達

運動伝達要素を選定する際は、力(トルク)や回転数、伝達方向、要素間の距離、減速率、伝達効率、メンテナンス性などを考慮します。

運動の方向に着目すると、一般的な動力伝達の種類は以下の4つに分類できます。この4種類の動力伝達要素を、詳しく見てみましょう。

  • 回転運動を別の回転運動に変えて伝える
  • 直進運動を別の直進運動に変えて伝える
  • 回転運動を直進運動に変えて伝える
  • 任意の運動に変えて伝える

2. 回転運動を別の回転運動に変えて伝える

回転運動を別の回転運動に変えて伝えるには、かみ合いで運動を伝える方法と摩擦で運動を伝える方法があり、前者は歯車伝達、後者は摩擦車伝達が該当します。

1:平歯車

平歯車は時計の内部や自動車の変速機など、さまざまな産業で使用される歯車伝達要素です。歯車の数量や歯数を変えることで、力(トルク)・回転速度・方向を容易に調整できます。

図1:平歯車

図1:平歯車

Gears animation.gif

参考:平歯車の動き(引用:Wikipedia)

2:ウォーム・傘歯車

ウォーム・傘歯車は、運動の回転方向を90度(直角)の方向に変更し、高トルクの機構に適します。一方で、高速回転の機構にはあまり向きません。身近な製品では、ウォームはオルゴールの調速機、傘歯車はコーヒーミルの手回しハンドルに用いられています。

図2:ウォームと傘歯車(黄色が駆動車、緑色が従動車)

図2:ウォームと傘歯車(黄色が駆動車、緑色が従動車)

Worm Gear.gif

参考:ウォームの動き(引用:Wikipedia)

3:ゼネバ(ジェネバ)

ゼネバは、連続回転運動を断続回転運動に変換する動力伝達要素です。原動車(連続回転する側の機構)に付いているピンが従動車(断続運転させる側の機構)のスロットに入り込むことで、断続回転を起こします。機械式時計のために開発された機構で、スイスのジュネーブ(ジェネバ)から名称が付けられました。

図3:ゼネバ機構(黄色が駆動車、緑色が従動車)

図3:ゼネバ機構(黄色が駆動車、緑色が従動車)

Geneva mechanism 6spoke animation.gif

参考:ゼネバ機構の動き(引用:Wikipedia)

4:摩擦車

摩擦車は摩擦を利用して回転を伝える動力伝達要素で、軸同士が比較的近い場合に用います。摩擦によって動力を伝達するため振動が発生しにくく、低速回転に適しています。一方で、滑りが発生すると効率が落ちる点に注意が必要です。身近な製品では、自転車の発動機に用いられています。

図4:円筒摩擦車と円錐摩擦車(黄色が駆動車、緑色が従動車)

図4:円筒摩擦車と円錐摩擦車(黄色が駆動車、緑色が従動車)

3. 直進運動を別の直進運動に変えて伝える

直進運動を別の直進運動に変える機構として一般的なリンク機構は、シリンダなどの駆動源から直進運動を得て、リンクで直進・往復運動を伝えます。トグル機構はリンク機構の一種で、小さな力で大きな力を得ることができ、工具や機械に広く用いられています(図5)。同じ仕事量を与えた場合、機能する部分(図5では緑色の部分)の速度が大きければ得られる力は小さくなり、逆に速度が小さければ得られる力は大きくなります。

図5:トグル機構(黄色のリンクに運動を加えると、緑色の部品が別方向の直進運動をする)

図5:トグル機構(黄色のリンクに運動を加えると、緑色の部品が別方向の直進運動をする)

4. 回転運動を直進運動に変えて伝える

回転運動を直進運動に変える機構には、ねじを利用するものと歯車・車輪を利用するものがあります。

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5. 任意の運動に変えて伝える

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