私たちにできること:海洋プラスチック汚染の基礎知識6

海洋プラスチック汚染の基礎知識

更新日:2022年4月15日(初回投稿)
著者:九州大学 応用力学研究所 教授 磯辺 篤彦

前回は、海洋プラスチック汚染の現状と今後の見通しについて、正しい情報発信と確かな情報の見極めが大切であることを説明しました。今回は、最終回です。世界の海を海洋プラスチック汚染から守るために、これから私たちにできることを考えてみます。

1. 一人ひとりのモラルの問題ではない

連載第1回にも述べたとおり、現在、日本では年間で約900万トンのプラスチックを廃棄しています。ただ、そのほとんどは焼却や埋め立て、あるいは再利用を経て適正に処理されます。日本における廃棄プラスチックの流れを、図1に示します。

図1:2018年現在の日本における廃棄プラスチックの流れ

図1:2018年現在の日本における廃棄プラスチックの流れ(引用:磯辺篤彦、海洋プラスチック問題の真実–マイクロプラスチックの実態と未来予測、DOJIN選書86、化学同人、2020)(原典資料:一般社団法人プラスチック循環利用協会、「2018年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況 マテリアルフロー図、2019」を基に作成。エネルギー回収を焼却処理に加え石油基礎化学原料への再生利用(マテリアルリサイクル)を再生利用にまとめる変更を加えた。原典資料では再生利用に加えていた輸出を単独に表記)

ここで、どの処理方法がよいのかといったことは、海洋プラスチックごみの軽減において本質的な議論にはなりません。年間で10万トン(すなわち廃棄量の1〜2%)規模のプラスチックが、どの処理経路にも乗らず、環境中に流出することこそが問題です。例えば、中国や東南アジアで今後、適正な処理が進んだとしても、単純に人口比を掛ければ年間で100万トン超の流出となってしまいます。これを世界で合わせれば、数百万トンを超えるでしょう。

一般論として、廃棄プラスチックの適正処理を99%から100%にまで高めることは、コストを考えても困難です。私たちは、「プラスチックごみは環境中に漏れるもの」といった前提に立つ必要がありそうです。特に、処理が個人に委ねられるシングル・ユース(使い捨て)プラスチックの環境流出をゼロにするという考えは、いかにも楽観的すぎるでしょう。

海洋プラスチックごみ問題が、「プラスチックの問題ではなく、一人ひとりのモラルの問題だ」との意見には賛成できません。最大の問題は、消費され廃棄されるプラスチックの量が膨大になりすぎて、わずか1%の漏れが積み上がっていくことにあるのです。漂流ごみやマイクロプラスチックはもちろん、大型の海岸漂着ごみであっても、いったん漏れてしまえばその回収は容易ではありません。そうであれば、私たちは、焼却やリユース・リサイクルに過大な期待を寄せず、社会に出回るプラスチックの総量を縮小させるより他ないでしょう。数値目標を設定した上で、プラスチックの使用量削減を行うことが重要です。

2. プラスチックは富裕層の贅沢品ではない

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3. 私たちにできること

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