海洋プラスチック汚染の現状1:海洋プラスチック汚染の基礎知識3

海洋プラスチック汚染の基礎知識

更新日:2022年1月12日(初回投稿)
著者:九州大学 応用力学研究所 教授 磯辺 篤彦

前回は、海洋プラスチックごみが環境や海洋生物、人体に与える影響について解説しました。今回は、現在世界の海や川で行われている海洋プラスチックごみの調査、およびその最前線の様子を紹介します。

1. 海洋プラスチックごみの調査

海洋プラスチックごみは、漁業をはじめとする要因で海洋に投棄されたものを含みます。しかし、第1回で述べたように、それは全体の20%程度に過ぎません。集計によっては、この割合はさらに低く示しているものもあります(参考:Morales-Caselles, C. et al. Nature Sustainability, 2021 )。中には、釣り客や行楽客が海岸で不用意に捨てたプラスチックごみもあるでしょう。しかし、日本で過去5年間に調査された海岸漂着ごみの多様性は、海岸利用だけで説明するのは不合理的です(図1)。

図1:品目別の漂着ごみ個数

図1:品目別の漂着ごみ個数(参考:磯辺篤彦、海洋プラスチック問題の真実–マイクロプラスチックの実態と未来予測、DOJIN選書86、化学同人、2020より作図

海洋プラスチックごみの多様さは、これらの発生源が私たちの日常であることを示唆しています。特に、捨てる前提で使われるシングル・ユース(使い捨て)プラスチックは、処理が個人に委ねられており管理が難しいものです。そのため、回収経路からの1~2%程度の漏れは避けがたいようです(参考:磯辺篤彦、海洋プラスチック問題の真実–マイクロプラスチックの実態と未来予測、DOJIN選書86、化学同人、2020)。実際に、図1にあるとおり、ほとんどの海岸漂着ごみは使い捨てプラスチック(あるいはその破片)であることが分かります。

最近になって、世界の川や海岸、そして海面から深海に至るまでに発見された1,200万件に及ぶ海洋ごみ(プラスチック以外も含む)の調査結果が発表されています(参考:Morales-Caselles, C. et al. Nature Sustainability, 2021)。この論文によれば、これまで最も多く見つかった海洋ごみは、テイクアウト食品に用いる使い捨てプラスチックで、全体の2/3程度を占めています。そのうち、最多はレジ袋のようなプラスチック・バッグで、全体の約14%です。レジ袋などは長期使用を考えないため、製造段階で劣化防止の添加剤を入れてプラスチックを補強することもありません。従って、自然環境下で劣化しやすく、すぐに粉々に砕けてしまうため、本来は目立たないと思われます。にもかかわらず最多となるということは、相当多くのレジ袋が環境中に漏れているということでしょう。

さて、日本の海岸に漂着するプラスチックごみは、近隣の河川から流出したものに加えて、海外から流れてくるものを含みます(図2)。ただ、海外起源が多く占める海岸は、大陸に近い対馬列島や日本南端の八重山諸島などの一部に過ぎません。平成29年度、漂着ごみのモニタリング調査において、回収された漂着ペットボトルを言語表記別に分類し、海外からの漂着ごみの割合を調べました。その結果、北部九州や九州の島しょ部であれば、日本と中国(台湾を含む)、そして韓国の文字が書かれたごみは、数量比でそれぞれ3分割位ずつ占めます。しかし、周囲を陸に囲まれた内海や太平洋沿岸、日本海北部では、日本起源のプラスチックごみが大半を占めています。

図2: 漂着ごみのモニタリング調査

図2: 漂着ごみのモニタリング調査(ペットボトルの言語表記、平成29年度)(参考:環境省、平成29年度海洋ごみ調査の結果について、別添図1-4、2021年11月2日閲覧

2. 海洋プラスチックごみ調査の最前線

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