海洋プラスチック汚染の問題とは:海洋プラスチック汚染の基礎知識2

海洋プラスチック汚染の基礎知識

更新日:2021年12月14日(初回投稿)
著者:九州大学 応用力学研究所 教授 磯辺 篤彦

前回は、海洋プラスチック汚染とは何なのか、その発生源や新たな問題となっているマイクロプラスチックについて解説しました。今回は、海洋プラスチックごみが環境や海洋生物、人体に与える影響を説明します。

1. 海洋プラスチックごみの問題とは

前回述べたとおり、ほぼ腐食分解しないプラスチックごみは、海岸に漂着することで景観を損ねてしまいます。現在、日本の海岸では10万トン規模の漂着ごみが散乱しており、景勝地や海水浴場の観光価値を維持するための海岸清掃事業に、毎年30億円程度の予算が費やされています(参考:磯辺篤彦、海洋プラスチック問題の真実–マイクロプラスチックの実態と未来予測、DOJIN選書86化学同人、2020)。しかし、海洋プラスチックごみの影響は景観を損ねるだけにはとどまりません。まず、海洋生物への影響として、絡まりと誤食が挙げられます。腐食分解しないプラスチックごみが、ひとたび海洋生物に絡まってしまえば、劣化して砕けるまで体から離れることがありません。インターネットで「海洋プラスチックごみ」と画像検索をかければ、ロープやビニール袋に絡まったウミガメなどの写真がヒットします。あるいは、海に投棄され海底に沈んだ化学繊維の漁網が海洋生物を捉え、死に至らしめるゴースト・フィッシングの事例も多く報告されています(図1)。

図1:放棄されサンゴに絡まった漁網

図1:放棄されサンゴに絡まった漁網

また、ある種の海鳥は、プラスチック片を好んで食べてしまうようです。理由は、色か匂いか判然としないままとなっています。現在では、世界の海鳥のうち59%の種類で、プラスチック片の誤食が確認されています(参考:Wilcox, C. et al., PNAS, 112, 11899-11904, 2015)。誤食による食欲の減退や消化管の損傷が体長低下を招くと報告されています(参考:Spear, L. B. et al. Marine Environmental Research, 40, 123-146, 1995)。また、海鳥に限らず、ウミガメに至っては、わずか2.5gのプラスチック片の誤食でも消化管が詰まって死んでしまうそうです(参考:Santos, R. G., R. et al., Marine pollution Bulletin, 93, 37-43, 2015)。

プラスチックには汚染物質を吸着させやすい特性があるため、海を漂ううち、プラスチック表面にはPCB(Poly Chlorinated Biphenyl:ポリ塩化ビフェニル)などの汚染物質が吸着します。それを誤食した海鳥の体内には、PCBが移行します(参考:Yamashita, R., H. et al., Marine Pollution Bulletin, 62, 2845-2849, 2011Tanaka, K. et al., Current Biology, 30, 723–728, 2020)。プラスチックを介して生物体内へ移行した化学汚染物質の影響について、今後とも注視する必要があります。それでは、マイクロプラスチックについてはどうでしょうか?

2. マイクロプラスチックの問題とは

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3. 人体への影響

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