工作機械の未来:工作機械の基礎知識6

工作機械の基礎知識

更新日:2022年9月28日(初回投稿)
著者:芝浦工業大学 大学院 機械工学専攻 臨床機械加工研究室 教授 澤 武一

前回は、工作機械に求められる機能と性能について解説しました。今回は、最終回です。工作機械のこれからを展望していきます。

1. 進化する複合加工機

工作機械は、時代の要求に応え高精度化、高速化、高機能化、多軸化、省スペース、省エネルギー化など、性能を向上させてきました。ただしそれは、基本的には、1台の工作機械が各加工法に特化した専用機としての進化といえます。しかし、近年ではニーズの多様化とさらなる生産性の向上(低コスト・短納期)、高付加価値化を追求するため、複数の機能を持つ複合加工機が開発されています(第5回参照)。さらに、複合化する機能は2つから複数へ、熱エネルギーや電気化学エネルギーとのハイブリッド化へと進んでおり、超複合加工機といわれるようになっています。

例えば、切削加工、研削加工、積層造形、レーザ焼入れの4つの機能を1台の工作機械に複合化し、全ての加工工程を1台で完結できる工作機械も開発されています(図1)。

図1:超複合加工機の一例
図1:超複合加工機の一例

また、このような複合加工機では、材料から形をつくるだけではありません。部品に亀裂や欠けが生じるなど一部が損傷した場合、その部分だけを切削で取り除き、削った部分を積層造形し、レーザで焼入れをして、研削加工で仕上げるというように、部品の修復も行うことができます(図2)。結果として、部品をリユース(Reuse)できるため、環境にやさしいものづくりが実現しているといえます。近い将来、こうした超複合加工機が量産の製造ラインに並び、次世代の工作機械の標準になるかもしれません。

図2:超複合加工機MU-6300V LASER EX(右)、MULTUS U 3000 LASER EX(左)(引用:オークマ株式会社ウェブサイト)
図2:超複合加工機MU-6300V LASER EX(右)、MULTUS U 3000 LASER EX(左)(引用:オークマ株式会社ウェブサイト

2. 第4次産業革命

第4次産業革命とは、IoT(Internet of Things:もののインターネット)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)を利用したビッグデータを用いた技術革新のことをいいます。

・IoTを用いた技術革新

IoTはあらゆるものがインターネットに接続され、家電をスマートフォンやタブレットから操作できるようになり、利便性をもたらします。工作機械も例外ではありません(図3)。

工作機械をインターネットに繋(つな)げることで、部分最適から全体最適という取り組みが可能になり、稼働状況や生産状況をスマートフォンやパソコンなどで確認できる上、どこからでも情報を収集することができます。また、工作機械メーカーとネット接続されていれば、故障時にも迅速な対応と修理が可能になります。

図3:IoTを取り入れた工場(イメージ)
図3:IoTを取り入れた工場(イメージ)

・AIを用いた技術革新

さらに、第4次産業革命は、AIを利用したビッグデータの解析によって、データに埋もれている新しい情報を導き出し、新しい価値の創造やビジネスモデルの革新を目指し、AIとロボットによる新しい生産システムを創り出しています。

現在、工作機械に搭載されているAIの例としては、

  • 主軸の状態を監視し正常状態と比較することで、軸受などの劣化を予測して故障を予知できる自己診断機能
  • CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)カメラによって工作物の形状を把握し、切削工具のアプローチ速度を自動で調整する機能
  • 切りくずの絡まりや噛(か)み込みなど、生産設備の正常運転を阻害する要因(ダウンタイム時間)を加工前に予測する機能

などがあります。また、写真画像からSTLファイル(3D CADソフト用のファイルフォーマット)をつくり、NCプログラムを作成せずに加工できる機能を持ち、スマートフォンと同じような言語処理機能を備え、口頭で指示できる工作機械も開発されています(図4)。このようなNC工作機械が普及すれば、NCプログラムを覚える必要がなくなり、初心者をはじめ誰でも簡単に工作機械を使える、という時代が到来しそうです。今後は、作業者の動きの分析や段取り、刃具や条件設定など熟練技能者の暗黙知の形式知化、図面の管理、製品不良からのフィードバックなど、AIによる機外の改善も期待されます。

図4:AI搭載の口頭で指示できる工作機械(イメージ)
図4:AI搭載の口頭で指示できる工作機械(イメージ)

一方で、歴史を振り返ると、新しい加工技術は生産現場の創意工夫が起源であり、知能化、自律化が加工技術の革新速度を遅らせる可能性を否定できません。工作機械が高機能・高性能になったとしても、工作物を削るのは刃物であることは変わりません。加工点における現象を見える化し、作業者がその良しあしを認識できることが大切です。そのため作業者が成長できる、見える自動化(ナビゲーションシステム)の構築が必要だと考えます。IoTやAIによる生産の変革が、見えない自動化ではなく、見える自動化に進むことを期待します。

3. DX、CAMとの連携

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