光の基礎:レンズの基礎知識1

レンズの基礎知識

更新日:2019年12月13日(初回投稿)
著者:株式会社オプト・イーカレッジ 代表取締役 河合 滋

レンズは光の進む方向を曲げる光学部品です。光を集めたり、発散させたりすることができます。光は波であると同時に粒子としての性質もあり、この粒子が移動した軌跡を光線と考えることができます。こうした光の性質によって物体の像を結ぶことができるレンズは、さまざまな光学機器の中で使われています。本連載では、レンズの基礎知識を全6回にわたって説明します。第1回は、レンズを知るための前提知識として、光の性質と色について解説します。

1. 光とは

・電磁波

光は、電磁波と呼ばれる横波の一つです。周期的に変動する波は三角関数で表現できます。例えば、一方向に伝わる電磁波の位置z、時刻tにおける電界の大きさE(z,t)は、以下のように表すことができます。

上式で、λは波長、Tは周期、kは波数、ωは角振動数(角周波数)を示し、波長は波の一周期の長さ、周期は波の1回の振動時間を表します。また、周期の逆数1/Tを振動数(周波数)νと呼びます。

電界の大きさの変化は、2つの視点から捉えることができます。一つは、波が空間的に位置を変えるという視点です。もう一つは、ある場所に着目し、その点において波が時間的に変化するという視点です。また光の速度cは、振動数(周波数)νと、波長λの積、すなわち、c=νλで表されます。

一般の電磁波における電界の変化は、より複雑です。ただし、全ての周期関数は、振幅と周期の異なる無数の三角関数の和で表現できることが知られています(フーリエ級数)。このように、単純な三角関数の議論を一般の周期関数に拡張できることから、光の基本的な伝搬は三角関数で表現できます(図1)。

図1:波のパラメータ

図1:波のパラメータ

・光と電波の違い

電波も光と同じ電磁波です。波長の長い電磁波が電波、短い電磁波が光です。周波数でいえば、電波の周波数は低く、光は高くなります。その境は、波長0.1~1mm(周波数300GHz~3THz)にあります(図2)。

図2:電磁波

図2:電磁波

光は電波に比べて回折しにくいため、直進性が高くなります。電波も波長が短くなるに従って直進性を増し、物質を透過しにくくなるなど、光に似た性質を持つようになります。

私たちに最も身近な光は可視光です。人に見える光の波長の範囲には個人差があり、厳密に定義できないものの、通常、波長380~780nmの範囲を可視光とします。この範囲の光は、ほとんどの人が見ることができます。可視光は、波長の短い方から、紫、藍(あい)、青、緑、黄、橙(だいだい)、赤と変化します(虹の7色)。また、赤色よりも波長の長い光を赤外光(赤外線)、紫色よりも波長の短い光を紫外光(紫外線)と呼びます。可視光の範囲を外れると、急に色が消えるわけではなく、徐々に暗くなって見えなくなります。

2. 光の直進性

光が真っすぐ進むということは、当たり前と思うかもしれません。しかし、この理由を説明できるでしょうか? ピンホールカメラは、光が真っすぐ進むことを証明する一つの例です。

・ピンホールカメラ

カメラはスマートフォンに搭載されるようになり、非常に身近な光学機器となりました。通常のカメラは、レンズによってできる像を撮像素子(あるいはフィルム)に記録します。しかし、レンズを使わなくても、カメラの機能を実現することができます。

像を形成するには光を集める必要があり、凸レンズにはそのような機能があります。しかし、光を集めずに像を作ることもできます。図3に示すように、ついたてに小さな穴を開けます。ついたての左側に物体を置き、物体から出る光をついたての裏側から観測します。

図3:ピンホールカメラ

図3:ピンホールカメラ

物体の一番上の部分から出る光は四方八方に拡散し、そのほんの一部が小さな穴に入ります。小さな穴に入った光は、ついたての裏側では、物体の上の部分と小さな穴を結ぶ一筋の光になって進みます。このような光を光線と呼びます。同じように、物体の各部分から出た光も光線になって進みます。これらの光線を全て集めると物体の情報が再現され、像ができます。これが、ピンホールカメラの原理です。

・光速度と屈折率

光や電波が真空中を進む速度は、秒速29万9,792.458km(秒速約30万km)と決められています。1秒間に地球を7周り半、月まで1.28秒で到達する速度です。「決められている」と書くと不思議に思うかもしれません。これは、1983年の国際度量衡総会において、1mを定義したことに基づきます。1mは、光が真空中を1秒間に進む距離の1/299,792,458と決められたのです。

真空中の光速度は一定です。しかし、物質の中で光速度は変化します。真空中の光速度よりも速く進むものはないので、物質中では、これよりも遅くなります。物質中の光の速度は、物質の比誘電率εrと、比透磁率μrという物理量を使い、次のように表されます。

ここで、次式で表される物理量を屈折率と呼びます。

これらの式より、屈折率は、物質中の光速度を表す物理量であることが分かります。表1は、主な物質の屈折率の値を示したものです。例えば、水の屈折率は、波長589.3nmにおいて1.333なので、水中の光速度は秒速22.5万kmです。

表1:物質の屈折率

表1:物質の屈折率

ここで、屈折率を定義するのに波長を指定したのには理由があります。屈折率は、同じ物質でも波長によってわずかに異なり、このことを分散と呼びます。分散は色収差の原因となります。

3. 反射と屈折

異なる屈折率を持った透明な物質に光が入射すると、その物質の境界において、入射した光は反射と屈折をします。

・反射

光が物質に入るとき、その光の一部は必ず反射します。物体の表面が鏡面のように滑らかな場合、光は一方向に反射します。これを正反射と呼びます。物体の表面上の光の入射位置で物体に対して垂直な法線を引き、入射光線と法線のなす角度を入射角とすると、光線は入射光線と法線を含む面内で、法線に対して入射光線と対称な方向に反射します。このとき、反射光線と法線がなす反射角は入射角と等しくなります。これを反射の法則と呼びます(図4)。

図4:反射の法則

図4:反射の法則

ただし、通常の物質の表面が、鏡のように滑らかであることはまれで、実際には細かい凹凸があります。この場合、それぞれの凹凸に対して反射の法則に従って反射するので、全体的には広い範囲に反射します。このような反射を乱反射と呼び、これにより、物体はさまざまな角度から見ることができます。

・屈折

光が物質を透過するとき、媒質中の光速度の違いによって、境界面で光が曲がります。光の入射位置に法線を引き、入射角をθ1、屈折角をθ2とします(図5)。

図5:屈折の法則

図5:屈折の法則

このとき、入射角θ1と屈折角θ2間には、次の関係が成り立ちます。

ここで、n1とn2は、入射側、および透過側(出射側)の媒質の屈折率です。この関係式をスネルの法則、または屈折の法則と呼び、レンズではこの屈折により光が曲げられます。

屈折によって光が曲がる理由を説明します。光の振動数はいつでも一定なので、先述の光の速度cと振動数(周波数)ν、および波長λの関係式c=νλにより、光の伝搬速度vが変わると、波長λが変化します。

添え字の1と2は、それぞれ入射側と透過側の物理量であることを表しています。屈折する際、屈折面に平行な波の成分は連続です。そこで、図6に示すように、

の関係が成り立ちます。

図6:屈折によって光が曲がる理由

図6:屈折によって光が曲がる理由

このことから次式が導かれ、屈折によって光線が曲がることが分かります。

・全反射

屈折率の高い媒質から小さい媒質へ光を入射させるとき、入射角を大きくすると、屈折角は入射角よりも必ず大きくなります。そのため、ある入射角で屈折角が90°になり、その入射角よりも大きな角度で入射した光は、屈折率の小さい媒質へ透過できなくなります(図7)。

図7:全反射

図7:全反射

この角度を臨界角と呼び、スネルの法則から次のように求められます。

ここで、n1は入射側の高い屈折率、n2は透過側の低い屈折率です。例えば、水(n1=1.333)から空気(n2=1.000)へ光が入るときの臨界角は48.6°です。

私たちは、最も屈折率の低い空気中で生活しているため、全反射を身近に経験することはありません。しかし、水の中では全反射を体験することができます。プールや風呂に潜って真上を見ると、天頂から48.6°までの円の範囲の中に、魚眼レンズのように、空気中の全方位の景色を見ることができます。

その外側は、狭いところではプールの水底が見え、広いところでは水中から外に出られない光が全反射してきらきら光っています。ただし水面は動くので、この光景がはっきりと見えるわけではありません。

光の全反射をうまく実用化したものが、光ファイバーです。光ファイバーは、屈折率の高いコアを屈折率の低いクラッドが取り囲み、コアの中を光が伝搬します。このときコアの中を伝わる光は、クラッドとの境界で全反射して閉じ込められます。全反射では全ての波が反射するので、コア内部の損失だけで光信号が伝わり、0.2dB/kmという低損失(100km伝送して光量が1/100に減衰する)の信号伝送を可能にしています。

4. 色

・眼の働き

色は主観的なものです。ここでは、眼(め)の働きから説明します。図8は、人間の眼球の構造を示したものです。水晶体がレンズの働きをし、網膜にある視細胞が撮像素子の働きをします。水晶体は柔らかく、それを保持している毛様体の伸び縮みによって厚さが変わり、近くのものにも遠くのものにもピントを合わせることができます。

図8:眼球の構造

図8:眼球の構造

水晶体によって網膜上に結ばれた像は、視細胞によって電気信号に変換され、神経細胞によって脳に伝わります。視細胞には、明るいところで動作する錐(すい)体と、暗いところで動作する桿(かん)体があります。錐体は3種類あり、図9に示すように、波長570nm(黄橙色)、540nm(黄緑色)、430nm(青紫色)に感度のピークがあり、それぞれL錐体、M錐体、S錐体と呼ばれています。

図9:視細胞の分光感度

図9:視細胞の分光感度

私たちは、それぞれの視細胞で感じる光量から色を識別しています。そのため、これらの色を混ぜることによって、さまざまな色を作ることができます。桿体は一種類しかないので、暗いところで色を識別することはできません。

・三原色

赤色、緑色、青色を光の三原色と呼びます。これらの色は、錐体のピーク感度の波長よりも多くの色を表現することができます。例えば、赤色と緑色、赤色と青色、緑色と青色を同量混ぜると、それぞれ、黄色、マゼンタ、シアンになります。そして、3色を同量混ぜると白色になります。このことから、全ての波長が混ざった光を白色光と呼びます。

このように、色を混ぜると明るくなることを、加法混色と呼びます。例えば、液晶テレビの表面には3色を透過させるフィルタがあり、白色のバックライトからそれぞれのフィルタを透過する光量を制御することによって、さまざまな色を作り出しています。

色の見え方は、自分で発光している場合と、光が当たって反射している場合では、大きく異なります。光が当たって反射している場合、その光を反射している物が反射光の補色を吸収するため、反射光の色が見えます。補色とは、最も似ていない色、すなわち色相環の正反対に位置する色です(図10)。絵の具やインクの混色が、これに相当します。

図10:色相環

図10:色相環

色を混ぜると、どんどん光が吸収され暗くなります。これを減法混色といいます。この場合も三原色を用います。ただし、光の三原色とは異なり、光の三原色を混ぜて作られる、シアン、マゼンタ、黄色を用います。これらは、色の三原色と呼ばれ、それぞれ同量混ぜると黒色になります。

・色の表現方法

冒頭に述べたとおり、色は主観的な要素が大きいため、それを表現するのも容易ではありません。色の表現方法には、大きく分けて、顕(けん)色系と混色系があります。

混色系は、三原色による色表現です。どの色をどれだけ混ぜるかによって色を表現します。表現方法としては簡単なものの、私たちは、普段このような方法で色を表現しないので、実用的ではありません。

顕色系は、色相、明度、彩度の要素によって色を表現する方法です。これらを色の三要素と呼びます。色相は色の種類、明度は色の明るさ、彩度は色の鮮やかさを表します。この表現は、私たちが普段色を表現する方法に近く、自然です。円柱状のモデルを考え、軸に垂直な断面で色相環を表現し、軸方向で明度、軸からの距離で彩度を表します。

いかがでしたか? 今回は、光と色について説明しました。次回は、レンズによる結像を取り上げます。お楽しみに!