いかなるリーダーもフォロワーであり、フォロワーはいつかリーダーになる:リーダーシップの基礎知識4

リーダーシップの基礎知識

更新日:2023年1月18日(初回投稿)
著者:立命館大学 総合心理学部 総合心理学科 教授 髙橋 潔

前回は、マネジャーとリーダーの違いを解説しました。今回は、リーダーシップ理論を紹介します。

1. 時代とともに変わる上下関係

いつの世も、変わらず語り継がれてきた昔話。実は、時代とともに変化してきたことを知っていましたか? 誰もが知っている桃太郎も例外ではありません(図1)。

江戸時代に広がった桃太郎の物語は、鬼ヶ島への道中でイヌとサルとキジに出会い、空腹を満たすためにきび団子を与えて、家来にするということになっています。昔の話では、人間と動物との間には、恩と忠義に根づいた、はっきりした主従関係がありました。

それに対し、平成・令和で読まれている桃太郎では、3匹と仲良しになり、仲間の証(あか)しにきび団子をあげるということになっています。豊かになった現代では、人間と動物の間にも対等な友達関係が成り立っており、三度の飯や身分などによる縛りが薄れているといえます。

図1:時代とともに変わる上下関係
図1:時代とともに変わる上下関係

これは、組織にとって何を意味するのでしょうか? 主人と家来というはっきりした主従関係は影を潜め、リーダーとメンバーというフラットな上下関係に変わってきているのが、現代の組織です。その中で、配下や部下に当たるフォロワーとの関係から、あらためてリーダーシップを考えていく必要があるでしょう。

2. いかなるリーダーもフォロワーである

リーダーシップというのは、本人の力量だけでなく、部下に依存しているところがあります。率先垂範(そっせんすいはん:自分で手本を示すこと)で自分が先陣を切って進んでいても、振り返れば誰も付いて来ないというのでは意味がありません。それでは独り善がりで、部下から信頼されていない残念なリーダーになってしまいます。また、強いリーダーシップも、一歩間違えば、パワハラと取られかねない時代でもあります。

一方、リーダーシップの反対語として、部下のあるべき姿を表現しているのが、フォロワーシップという言葉です。頻繁に使われることはなく、正しく理解されていることも少ないようです。

普通、フォロワーの責務といえば、命令されたことを実行したり、上長のいうことに従順に従ったりすることと考えられるでしょう。しかし、フォロワーシップは、補佐やサポートにとどまりません。

カーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授によれば、フォロワーシップとは、自己をしっかり持ち、建設的な批判を行い、自分で考え行動する、革新的で創造的な部下の資質と定義されています。上下の関係にありながら、あたかもリーダーシップと同じように、自分の考えをしっかりと持って行動すること、それがフォロワーシップです(参考:ロバート・ケリー、指導力革命-リーダーシップからフォロワーシップへ、プレジデント社、1993年)。組織の人数構成を反映して、「組織の8割はフォロワーシップで決まる」とさえいわれることがあります。

日本の組織では、面従後言(めんじゅうこうげん)が習い性です。表面的には従順なものの、気に食わない上司であれば、陰でグチを言うこともあるでしょう。しかし、理想とされるフォロワーは、単なる追従者でもなければ、従順でもありません。立場は部下ですが、対等な個人であって、自分の考えを正々堂々と上方に進言する強さが必要です。

ケリー教授は、フォロワーのあり方をまとめるために、批判的思考と無批判的思考の切り口と、積極的姿勢と消極的姿勢の切り口に着目します。そして、この2つの軸を組み合わせることで、5つのフォロワータイプを見いだしています(図2)。

図2:フォロワーシップの4タイプ
図2:フォロワーシップの4タイプ

次期リーダーと目されるのは、主体性があり、アイデアが豊かで、積極的に上司をサポートしたり進言したりする理想型フォロワーです。ただし、そんな理想的な態度が自分に合わなければ、批判的精神と積極性をほどほどに身に付けた実務型フォロワーがよいでしょう。

どんな高い地位にある人でも(神や仏を除けば、セレブやトップを含めて)、その命に従わなければならない高い権威が存在するものです。健全なリーダーシップを発揮している人は、他の場面では上手にフォロワーシップを発揮することができます。また、真のフォロワーシップを身に付けていけば、いずれはリーダーシップを取ることができるようになるのです。いかなるリーダーもフォロワーであるというのは、逆説的に聞こえるかもしれません。しかし、ここに一つの真実があります。

3. 次世代リーダーを育むのはリーダーの責任

優れたフォロワーシップを示していれば上司に信頼され、周りから引き上げられて、リーダーとして育つことができます。リーダーシップは生まれつきのものではなく、後天的に身に付けていくものなので、よりよい上下関係において、若いときからリーダーシップを学んでいくのがよいでしょう。

今、多くの組織で、サクセッション・プラン(後継者育成)が切実な経営課題となっています。事業は順調なのに、後継者がいないために、M&A(合併や売却)などを検討しなければならないのです。このような現状において、経営陣が担う大切な役割は、次世代リーダー(後継者)を育成することです。

GE社のリーダーシップ研修を監修してきたミシガン大学ノール・ティッシー教授は、リーダー自らが経験から導き出した持論を語り、次代のリーダーを育成する、組織的な仕組みが必要であることを主張しています。これは、組織の動力(エンジン)となるリーダーを内製するという意味で、リーダーシップ・エンジン理論と呼ばれています(参考:ノール・ティッシー=イーライ・コーエン、リーダーシップ・エンジン、東洋経済新報社、1999年)。

組織の上層部が次の世代を見据え、自らがロールモデルとなり、後進に薫陶を授けることは、組織を未来に導くために、必ず担わなければならないリーダーシップの要素だと考えられています。

4. リーダーはサーバントである

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