マネジャーとリーダーの違い:リーダーシップの基礎知識2

リーダーシップの基礎知識

更新日:2022年11月24日(初回投稿)
著者:立命館大学 総合心理学部 総合心理学科 教授 髙橋 潔

前回は、リーダーシップ・リテラシー、リーダーシップの3レベル、上昇志向とインポスターについて紹介しました。今回は、マネジャーとリーダーの違いについて、詳しく解説します。

1. マネジャーとリーダーが混同されるわけ

リーダーシップをしっかりと理解する上で避けて通れないのは、マネジャーとリーダーの違いを知ることです。どちらも管理職の人を指しており、また、人と人との関わりの中で影響力を発揮し、全体の目標の達成に向けて部下やメンバーに働きかける点で、似ているように見えます。

名刺にも、マネジャーやリーダーという肩書きが用いられます。一般に、マネジャーは管理職を指し、課長や部長レベルを意味します。これに対し、グループリーダー(GL)やプロジェクトリーダー(PL)は、班長や主任など、係長レベルとして使われています。なお、肩書きとは別に、誰かをリーダーと呼ぶのは、各国の首脳や企業の経営トップなど、マネジャークラスよりもはるか上位の人に対してであるのがほとんどです。

一般的な組織では、組織内の人材の中からマネジャーを選んでいきます。いわゆる内部昇進です。昇進するということは、マネジャーとしての能力が買われているということです。そのため、管理の仕事をきっちりこなすことが求められます。日々の業務をきちんと遂行していくために、他者の仕事や進み方を管理するマネジメントの能力です。その根本には、PDCA(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)サイクルを回したり、自分以外の人(部下、後輩、他部署の社員)を通して成果を出したりすることに特化した能力が求められます。

しかし、勤続歴が長くなると内部の事情に通じてきて、前例を尊重し、周りと摩擦を生まず円満な組織運営を行うことが、暗に期待されてもいます。そのため、「ムダ・ムリ・ムラ」を正して大胆な改革を進めなければならないのに、空気を読みすぎたり、前例に倣って非効率な会議や書類がなかなか減らなかったりするといった副作用も出てきます。

一方、上級の管理職になると、全体を導くリーダーとしての役割が求められます。部門の長として、部門全体を率いていくリーダーシップが期待されるのです。しかし、ここがくせものです。1人の社員が、マネジャーとリーダーの両方をこなさなければならなくなるためです(図1)。マネジメントとリーダーシップが混同される理由は、ここにあります。

図1:マネジメントとリーダーシップの混同
図1:マネジメントとリーダーシップの混同

日本の職場では、組織の中から仕事がきちんとできる人、すなわちマネジメントの才覚がある人が選ばれて、管理職に昇進することが多くあります。それ自体は、何の不都合もありません。きちんとできる人が昇進するのは、どの組織でも当然です。

しかし、南カリフォルニア大学のローレンス・ピーターは、組織で上のレベルに昇進をすると、全く別の役割が求められ、うまく立ち回れなくなることを指摘しています。有名なピーターの法則では、「階層組織では、従業員は誰も、自分の無能さがはっきりする階層まで昇進する」といわれています。

マネジメントの能力が買われて昇進したと思ったら、今度はマネジメントの実力ではなく、リーダーシップの能力が新たに求められることになります。また、現場は部下に任せてリーダーシップを発揮してほしいと期待され、真面目な人ほど悩んでしまう結果となります。職場をまとめ、仕事の進捗を管理監督するという、これまで得意としてきたマネジャーとしての実力が、かえってリーダーシップを妨げるというマネジメントのジレンマが生じてしまうのです。

2. 優れたマネジャーと優れたリーダー

ここで質問です。できるマネジャーとは、どんな人を思い浮かべるでしょうか? また、すごいリーダーとは、どんな人でしょうか? 皆さんの上司は、該当するでしょうか? ここでは、プラスの面に光を当てて、5分間だけ考えてみましょう。

コンサルタントのマーカス・バッキンガム(イギリス)は、組織で働いている一般の従業員に聞き取りを行い、優れたマネジャー像とリーダー像について、図2のようにまとめています。アメリカで活躍するイギリス人の考え方なので、受け入れにくい要素があるかもしれません。しかし、ここには一つの真実があります。

図2:優れたマネジャーと優れたリーダー
図2:優れたマネジャーと優れたリーダー

バッキンガムは、マネジャーとして優れた人は、部下一人一人の才能や知識、経験を、業績に結びつけるのがうまいと述べています。予算計画やマーケティング、業務の実施と管理、情報技術など、さまざまな役割をこなさなければならない現代のマネジャーにとっては、ちょっと意外かもしれません。しかし、マネジメントの最も重要な職務は、仕事の質を保つことでも、顧客サービスを徹底させることでも、目標を定めることでもないようです。

マネジャーが担うべき最も重要な役目は、部下やメンバー一人一人の強みと弱みを認識し、その強みに光を当てて、どうすればその強みが本人とチームの成果につながるのかを見つけることです。人にはそれぞれ、得手不得手があるものです。自分の得意分野について、本人でも気付いていないこともあるでしょう。「やはり野に置けレンゲソウ」の言葉にもあるとおり、本人の持ち味は得意な場面でこそ生きてきます。優れたマネジャーであるためには、メンバー一人一人の本来のよさを知ることが重要です。

例えば、何時間も飽きずに商品の整理ができる人、顧客に寄り添い悩みを解消するのが好きな人、数字を眺めてパターンや全体像を把握するのがうまい人、話がうまくプレゼンテーションが得意な人など、組織にはさまざまな強みを持った人がいます。組織で仕事をする以上、個々の特長を生かさない手はありません。個人の強みを生かして、本人とチームの成果につなげていくことは、マネジャーとしての腕の見せどころです。

一方で、リーダーとして優れた人として、マーカス・バッキンガムが出した答えは、よりよい未来を描き、人々を団結させるということです。ぐいぐいと周りを引っ張るのがリーダーの役目ではありません。リーダーにとって肝心なことは、未来への関心を持ち、将来を楽観視し、前に進むことです。現在の課題や、過去からの慣例にとらわれるのではありません。自分と組織と社会の未来に目を向け、頭の中で未来の姿をはっきりと描くこと。その未来像を、言葉や絵や数字を使って、人々の心の中にしっかりと伝えること。つまり、人を引きつけるビジョンを描くということが、リーダーの役割なのです。

ビジョンとは、決して数字や計画ではありません。現状の延長としての事業計画でも、義務と責任を伴う必達目標でも、「べき論」で語られる経営理念や道理でもありません。過去の成功モデルやデータから推論して理性的に考えても、未来は分かりません。また、当然なすべき義務や社会への責任をアピールしても、そこに未来はありません。部下に命令しても、事態は変わりません。ワクワクするような未来像を語り、それに共感した部下の力が、自然にビジョンの実現に向かうようでなければならないのです。

3. 問題解決か問題発見か

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