ISO 9001規格と品質マネジメントシステム(QMS):ISOマネジメントシステムの基礎知識2

ISOマネジメントシステム規格とは?:ISOマネジメントシステムの基礎知識1

更新日:2016年5月27日(初回投稿)
著者:一般財団法人日本品質保証機構 マネジメントシステム部門 企画センター 仲矢 新

前回は、ISOマネジメントシステムの概要を解説しました。今回は、品質マネジメントシステム(ISO 9001)の概要と、それを運用する際に留意すべき事柄について解説します。

1. マネジメントシステムのPDCAサイクル

品質マネジメントシステム(ISO 9001)を取り上げる前に、一般的なマネジメントシステムから説明します。企業などの組織がマネジメントシステムを構築する際に、まず考えることは、組織が取り組むべき課題(目標・目的)の設定です。そして、課題の設定のためには、組織の内外にあるリスクを洗い出す作業として「リスクマネジメント」または「リスクアセスメント」を実施する必要があります。

例えば、環境マネジメントシステム(ISO 14001)を構築する場合、組織を取り巻く全ての環境管理事項(資源、廃棄物、生態系への影響など)を管理することは不可能です。経営の観点からみても、限られた資源(人・モノ・金)を、環境管理のためだけに重点的に投入する余裕はないでしょう。そこで優先順位を決めます。環境上の問題点を列挙し、影響の大小を評価し、影響の大きいものから優先的に管理するのです。

これは、どんな種類のマネジメントシステムを構築する場合でも同じです。まず管理する対象(品質、環境、情報セキュリティなど)における問題点を列挙し、リスクの大きさに応じて優先順位を決め、課題を設定します。次に、課題を解決するための「計画・方策」を立て、それを「実施」します。さらに、実施した結果が課題の解決につながったかどうかを検証し、必要に応じて課題を見直したり、実施方法を変更するなどの改善をして、次の活動につなげていきます。

このように、課題の設定に始まる「計画(Plan)→実施(Do)→見直し(Check)→改善(Act)」という組織活動のループを、「PDCAサイクル」と呼びます。ISOのマネジメントシステムでは、個別の管理対象に焦点を当ててPDCAサイクルを回すこと、すなわち「継続的改善」を行っていくことが要求事項として定められています。

PDCAサイクルによる継続的改善

図1:PDCAサイクルによる継続的改善

組織が置かれている状況は、業種や会社の規模、地域や従業員などのさまざまな要因によって決まるため、列挙する課題も優先順位を決める判断基準も、課題を解決する方法も組織ごとに異なります。つまり、構築するマネジメントシステムは、一律ではなく組織によって異なるものができるのです。

2. ISO 9001規格の概要

ISO 9001規格で求められる管理すべき対象(管理対象)は、「組織が生み出す製品の品質」です。そして、おのおのの組織はISO 9001規格に基づいて「品質マネジメントシステム(QMS:Quality Management System)を構築し、PDCAサイクルを回して、継続的改善を図っていくことになります。なお、ISO 9001規格には、製品を生み出して外部に提供するための「活動モデル」が定められているという特徴があります。

この「活動モデル」について、注文住宅を手がける工務店(建設会社)を例に考えてみましょう。工務店はまず、顧客と十分なコミュニケーションをとることで、顧客がどのような家を作りたいのかを確認します(製品の要求事項の明確化)。次に、家の設計図を引き(設計・開発)、それが完成すると建築に取り掛かります(製造およびサービス提供)。自社ではできない作業については外注(設計と監理を、外部の設計監理事務所に任せるなど)することもあるでしょう。建築中には、さまざまなチェックポイントがあります。そして建築作業が一通り完了すると最終検査を行い、顧客へ引き渡します。このような過程を経て、注文住宅は完成します(製品実現の完了)。

このようにQMSを構築する組織では、規格に定められている「活動モデル」に沿って、顧客とのコミュニケーション、設計・開発、製造、外注管理、最終検査などの活動に取り組んでいかなければなりません。

また、その他の要求事項として「顧客満足(CS:Customer Satisfaction)」があります。製品に対するクレームの発生や、顧客満足度調査で悪い結果が出たなど、顧客からの評価が明らかになった場合には、必要な対処を講じることが規格で要求されています。

さらに2015年に改訂されたISO 9001規格には、「リスクに基づく考え方」が初めて導入され、QMSを構築する上で「リスクと機会」を新たに特定する必要性が生じました。しかしながら、普通の組織であれば、組織を取り巻く問題点やリスクを考えて経営していることと思いますので、とりたてて厳しい要求が追加されたわけではありません。

3. QMSに取り組む際の留意事項

まずは、組織が「品質を良くしたい、不良品を減らしたい」という課題を実現するためにQMSを運用する場合について考えてみましょう。

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。