ISOマネジメントシステム規格とは?:ISOマネジメントシステムの基礎知識1

ISOマネジメントシステム規格とは?:ISOマネジメントシステムの基礎知識1

更新日:2016年5月11日(初回投稿から微修正)
著者:一般財団法人日本品質保証機構 マネジメントシステム部門 企画センター 仲矢 新

「御社はISO認証を取得されていますか?」
新たに取引を始めようとしている企業から、このような質問を受けたことはありませんか? 相手企業がISOに基づくマネジメントシステムの認証を取得しているかどうかは、この企業が「顧客の要求を満たす製品やサービスを提供できるのか」、「環境に配慮した事業活動をしているのか」など、力量や信頼度を判断するための指標となります。

この連載では、企業活動のさまざまな局面で関わりがあるISOマネジメントシステムについて、5回にわたって解説します。

1. 「マネジメントシステム」とは何か?

ISO 9001は、初版が1987年に発行され、2000 年に「品質マネジメントシステム」として改訂されました。また、ISO 14001は、1996年に「環境マネジメントシステム」として、初版が発行されました。

ともに世界各国に普及し、ISOを取得している組織は現在およそISO 9001が140万件、ISO 14001が33万件、世界190以上の国と地域にあります(参考:The ISO Survey of Management System Standard Certifications (2014))。さて、ここでいう「マネジメントシステム」とは何でしょうか?

ISO認証を取得するのは企業などの法人で、個人ではありません。企業に限らず、地方自治体や学校、病院の場合もあります。これらすべてを含む概念として「組織」と総称します。組織は2人以上の人の集まりです。組織内で大勢の人に動いてもらうためには、「管理(マネジメント)」が必要不可欠です。

例えば、少数の社員で構成されている会社の場合、社長は社員全員の顔を見ることができ、社長の個性による管理が可能です。ところが社員が100人、1,000人となると、社長1人で全体を管理することは不可能になります。会社としての決めごとを作り、それを皆で守ることにより、会社を運営していくことが求められます。その決めごとが、会社の「規定」や「手順」です。

また同時に、部課長などの職制が必要となり、各役職の「責任」と「権限」を明確にしなければなりません。ISOでは、会社(組織)を運営するための責任・権限の体系、および規定・手順を「マネジメントシステム」と呼び、ISOマネジメントシステムの審査および認証の対象となります。

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図1:組織の構成とマネジメントシステム

組織が製造する製品の「品質」を対象としたマネジメントシステムが、「品質マネジメントシステム(ISO 9001)」です。また、組織活動が「環境」に与える影響を対象としたマネジメントシステムが、「環境マネジメントシステム(ISO 14001)」です。

その他にも、組織の「情報」を対象にした「情報セキュリティマネジメントシステム(ISO 27001)」など、組織活動の目的や視点の違いによって、さまざまなマネジメントシステム規格が存在します。

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図2:さまざまなISOマネジメントシステム規格

さて、そもそも「ISO」とは何を指すのでしょうか? 「ISO」とは、スイスのジュネーブに本部を置く非政府機関、International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称です。

国際規格としてのISO規格を数多く制定している機関で、ISO 規格の制定や改訂は日本を含む世界165カ国(2014年現在)の参加国の投票によって決まります。つまり、ISO規格に基づく審査および認証制度は、世界的な広がりをもっているため、ISO認証を取得していれば、世界中どこでも通用するのです。

2. なぜISOマネジメントシステムか?

1987年、「品質保証のモデル規格」として「ISO 9001」が発行されました。これと同時にISO 9001 という「基準」を満たした企業は、認証機関からISO 9001 の「認証」を取得し、それを社会一般に公表することで、ある種の社会的信頼を得られる仕組み「ISO マネジメントシステム審査・認証制度」が始まりました。それ以降日本でも急速に普及し、ISOの認証取得は、その企業が信頼できることを示す証として認知され、取引の前提条件に採用されるまでに普及拡大しました。

では、このような制度がグローバルスタンダードとして世界的に普及したのは、なぜでしょうか?

産業革命以降、大量生産をいかに効率的にこなすかということが、製造業にとっての最大の課題でした。特に20世紀初頭、米国で自動車産業が台頭し、第2次世界大戦では大砲や飛行機などの軍事物資を短期間で大量に作る必要がありました。

その中で、品質管理や品質保証といった考え方が、急速に普及しました。製品の不良率を下げ、コストを落とすための有益なツールとして、主に製造現場で用いられました。ちなみに、米国が戦争で圧倒的に強かった理由は、品質管理の徹底によって高品質なトラックや飛行機を大量に製造することができたためで、日本やドイツは米国の物量に負けたといわれています。

戦後、欧米諸国で製造業が急速に回復していく過程で、品質管理や品質保証は、民間の製造業にも広まります。まず英国が国家規格としての品質保証のモデルを作りました。それが国際規格化(ISO化)され、ISO 9001へとつながるのです。

日本の企業にとっては、欧米に製品を輸出する際に、欧米の規格を導入していることで相手の信頼を得られるというメリットがありました。やがて日本の製品の品質が向上すると、単に輸出のためだけではなく、国内の顧客の信頼を得たり、社内における仕事の効率化を図るためにも使われるようになりました。こうして、ISO認証は社会的な制度として定着したのです。

3. ISO認証を取得する意味とは?

マネジメントシステムとは、「組織の規定や手順を定めること」、「規定や手順を運営する従業員の責任・権限を定めること」と説明しました。しかし、よく考えてみると、これらの事柄はISO 9001の認証がなくても、一般的な組織では実施されていることです。それでは、わざわざ認証を取得するのには、どのような理由があるのでしょうか?

1つには、「認証機関」という外部の第三者にチェックしてもらうメリットがあげられます。その場合、組織として外部に対する説明責任を果たす必要があり、それによって社会的信頼を得ることができます。組織内部の緊張感を高める効果も期待できるでしょう。

また、外部の第三者である認証機関に「審査」してもらう場合、ISOマネジメントシステム規格には、組織を管理・運営するために必要となる「要求事項」が定められています。認証機関の審査員は、組織がその要求事項の一つ一つを満たしているか、満たしていないかをチェックします。ちなみに、要求事項を満たしていることを「適合」といい、満たしていないことを「不適合」といいます。

ISO 9001の場合、ISO 9001で定めているすべての要求事項に適合して初めて、ISO 9001の認証を取得できるのです。場合によっては、要求事項を満たさない箇所があることも考えられますが、それらが審査で見つかったときには不適合となり、組織はそれを適合に変えるために、「是正処置」をとらなくてはいけません。

このように組織内の問題点(要求事項に対する不適合)を発見し、それに対して是正処置を行うことによって再発を防止することが、ISOマネジメントシステムの最も重要な機能といえます。

図3:組織のマネジメントシステム運用と審査

図3:組織のマネジメントシステム運用と審査

ISO 9001が定めている要求事項は、製品の品質を一定レベルに維持するために必要不可欠な内容を網羅しています。組織がISO 9001の認証を取得したということは、基本的な要求事項を一通りクリアしたことを意味しています。

ISO認証制度の良いところは、一度認証を取得して終わりではなく、認証を維持するための活動が求められる点です。毎年審査を受けることによって、顧客に提供する製品の品質を維持し(品質保証)、不良率の低下や、顧客満足度の向上(品質改善)など、継続的な改善につながります。

いかがでしたか? 今回は、ISOマネジメントシステムの概要を解説しました。次回は、ISO 9001の要求事項を具体的に取り上げて、ISO 9001認証を取得するメリットと効果について詳しく説明します。お楽しみに!