スマートシティ戦争、コングロマリット各国モデルで激戦:国際的スマートシティの基礎知識7

国際的スマートシティの基礎知識

更新日:2023年1月11日(初回投稿)
著者:亜細亜大学 都市創造学部 都市創造学科 教授 岡村 久和

前回は、日本のスマートシティにおけるにコングロマリットについて紹介しました。日本では、異業種企業が財閥やグループ企業としてチーム化し、産業を発展させてきました。現在、このモデルは、多くの国で見られます。ただし、地域ごとの生い立ちや、成長の理由は同じではありません。日本では、スマートシティはなくなったと思われた、失われた10年間(2010年から2020年)、国際社会ではこの産業が急成長していました。今回は、世界の国や地域における、それぞれのコングロマリットモデルの強みを紹介します。

1. ヨーロッパの国をまたいだ協業DNA

日本がスマートシティビジネスの促進をやめ、活動を休止した10年間、海外ではこの巨大産業は失速を知らず、順調に成長を続けていました。特に、ヨーロッパ企業の目指す事業形態の特徴は、いかにコングロマリット型の企業群を作り、スマートシティビジネスをアジアで獲得するかということでした。実はヨーロッパには、もともと国をまたいだ協業の精神や、実例が数多く存在します。例えば、ドイツのシーメンスや、フランスのブイグなどが挙げられます。これらのヨーロッパのコングロマリット型企業の形成方法は、日本とは異なります。

ヨーロッパには、アメリカやアジアと同じくらいの広大な地域に、たくさんの小さな国が隣接して存在しています。歴史的にこの地域は、国々が領土を取り合う一方で、お互いの産業を助け合い、人々が交流し合うことで、地域を形成してきました。

例えば、ドイツのメルセデスベンツは、オーストリアの工場に大量の製造委託をし、同時にフランスのプジョーも同じ工場に製造委託をしています。エネルギーでは、フランスは国境沿いに56基の原子力発電所を建設し、ヨーロッパ各国に電力を供給しています。

10年以上前に、スウェーデンのストックホルムでは、ダイナミックなスマートシティの典型ソリューションである、オンデマンド渋滞課金税の実証実験が行われました。現在、これは世界中に普及しています。都市部に入る車に対し、刻々と変わる渋滞課金税を課する仕組みです。さらには、ストックホルムの中心地に入る道路の表示装置に、変動する高速料金をリアルタイムで表示し、車を振り分けることで、交通集中による渋滞を回避します。課金は、ストックホルム市の税金や、スウェーデンの国税として都度徴収されます。

スウェーデンは、現在イギリスまで陸続きになっています。つまり、イギリスからスウェーデンに来た車も、この渋滞課金税の課税対象となるのです。そのため、車載端末機器や、制御するソフトウェアには、さまざまな国の車が使えるように国際化対応が要求されます。また、市税と国税のリンクなども必要です。スウェーデンの国税局、ストックホルム市の税務署、高速道路料金計算のIT企業、流入車のナンバー画像認識技術企業、車載機器製造メーカー、車載機器を販売するコンビニエンスストアなど、多くの企業体が集まってこの実証実験が成立しました。

このように、スウェーデンの企業だけではこのプロジェクトは成り立ちません。国をまたいで30以上の企業と政府や自治体が集まって、一つの連合体を作り、プロジェクトを実行しました。アメリカに母体を持つIBMスウェーデンも、コンサルティングとシステム開発で参加しています(図1)。

図1:ストックホルム、産官の国際共同事業体
図1:ストックホルム、産官の国際共同事業体

このプロジェクトは国を挙げての実証実験だったため、10年後の現在では世界中にこのノウハウが波及し、スマートシティの渋滞課金税の仕組みに発展していきました。

コングロマリットモデルは、ビジネスとしての取り組みです。日本でも、スマートシティコンソーシアムというタイトルで、多くの企業が名前を登録することはよく見られます。ただ、国際版コンソーシアムは実ビジネスを行う集団であるため、日本でいうスマートシティコンソーシアムとはその定義が違います。日本でも、スマートシティのコンソーシアム型で、30以上の企業が集まることはよく見られます。ただし、コンソーシアムなので名前は連ねるものの、実ビジネスを行うかは疑問です。

ヨーロッパの歴史を振り返ると、バイキングから第2次世界大戦まで、ヨーロッパ全土の統廃合は繰り返されてきました。そのたびに、民族や人種、文化が交じり合っています。このことは、ヨーロッパが、コングロマリット型の企業連合を簡単に作れる文化を持っていることを意味します。共存を前提にした歴史も数多く、たとえ現在の国境が、人種や文化を分断していても、ビジネスを共有することは多々あります。ヨーロッパの基本的なDNAには、この緩い結合の文化が組み込まれていると感じます。これは、スマートシティ産業におけるコングロマリットモデル作りの基礎体質であるといえるでしょう。

2. 中国の戦略、国内

中国のスマートシティビジネスを考えてみましょう。この産業で、強い競争力と実績を出す中国のスマートシティ戦略は、国内と国外に分かれます。

中国国内には、400ともいわれているスマート化プロジェクトがあり、それぞれの地域では、農民戸籍を持った住民の戸籍を都市戸籍に変更し、中央部に集中させて、人と経済を集約します。そこには、都市特有の需要が生まれます。高層ビルを建て、不動産価値を上昇させます。海外の企業誘致も進めます。連携する国内企業も集まり、活性化を図ります。

次に、こうしたまちの都市化の一方で、スマートシティ同士をつなぐ必要性が出てきます。そのインフラが新幹線です。中国国内における新幹線は、スマートシティをつなぐ役目を持っています。400以上の都市をスマート化させ、それぞれを無数の新幹線で網のように結ぶという考え方です(図2)。

図2:中国国内スマートシティ
図2:中国国内スマートシティ

そこで、多企業連合であるコングロマリットが作られます。ただし、中国は社会主義国家なので、全ての企業のオーナーは共産党であり国家です。多くの会社が、国という会社の下にまとまっています。このように、中国にとってさまざまな産業をまとめ、巨大な連合体を作ることは非常にたやすいことなのです。

3. 中国のスマートシティビジネス一帯一路の戦略、国外

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4. アメリカにおけるコングロマリット企業戦略

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