日本のスマートシティ:国際的スマートシティの基礎知識3

国際的スマートシティの基礎知識

更新日:2022年9月8日(初回投稿)
著者:亜細亜大学 都市創造学部 都市創造学科 教授 岡村 久和

前回は、国際スマートシティのメインプレイヤーとしてのヨーロッパ、中国、日本と、新興国や発展途上国との関係を解説しました。今回は、日本におけるスマートシティについて取り上げます。国際的なスマートシティの定義は、新しい都市づくりのビジネスです。しかし、日本国内では、ITやハイテクを用いて、都市OSを導入することと考えられています。また、スマートシティの定義を明確にしないままプロジェクトが進められるため、さまざまな取り組みが分散してあるように見えます。

1. 日本ではITやハイテク、都市OS?

国際的に、スマートシティは都市づくりのビジネスとして考えられ、巨大な資本が投下されています。ただし、他のまちづくりと若干異なるのは、スマートという言葉に表されるように、何かしら目玉となる売り物や、土木工事も含めた新しい技術が含まれ、それらが特長として前面に出されることです。

戦後の日本で大規模に進められてきた、田中角栄元首相の日本列島改造論に従ったプロジェクトの多くは、現在の国際的スマートシティプロジェクトと酷似しています。1964年に開通した東海道新幹線は、当時、世界で最も速い鉄道でした。その停車駅周辺は猛スピードで開発され、素晴らしいハイテクのまちとなりました。既にあった国鉄の駅の隣に新幹線の駅が作られ、その駅の未来的なデザインは人々の目を引きました。

同時に作られた高速道路は、これまでに見たこともない土木技術により、地震大国の空中に道路を作るという夢のプロジェクトでした(図1)。

図1:1963年開通から既に半世紀以上経過した首都高速道路(江戸橋ジャンクション付近)
図1:1963年開通から既に半世紀以上経過した首都高速道路(江戸橋ジャンクション付近)

これらの道路は、密集した首都圏や阪神地区に、半ば強引に建設されました。住民が多く住む土地の買収や、用途地域の変更作業も、今では考えられないスピードで行われました。さらに、地方都市から東京都心の六本木まで数百か所で駅前再開発が行われ、すさまじい数のスマートな駅前タウンが、あっという間に作られました。

このように、日本はこれまで世界で最も多くのスマートシティを、最速で作ってきた国であるということができます。実際、アジアの多くの国で、日本のスマートシティは尊敬、信頼され、建設を委ねられています。インドネシアや、マレーシアのイスカンダルで行われている日本製スマートシティによる開発事業は、日本の戦後開発と比べると、その類似点の多さに驚かされます。

現在、日本で行われているスマートシティの議論や、政府から出る指示は、都市OSを持ってデータ利活用を行うこと、できれば法改正を伴うこと、ITやDXを利用したまちを考えることなどに基づいて構成されています。果たして、日本のお家芸ともいえるこれらのスマートシティは、その強みを正確に認識しているのでしょうか? ここ10年来の日本国内におけるITやハイテク、都市OSは、本当にスマートなまちづくりといえるのでしょうか?

2. 3種類の日本のスマートシティ

国内では、スマートシティは分かりにくい、パターンが多すぎてつかみどころがない、ビジネスとして成立するのか分からないなどといわれることがあります。実は、その実態はそれほど複雑ではありません。日本におけるスマートシティは、大きく3種類に分けて考えることができます。

1つ目は、前述した日本列島改造論時代に始まり、膨大な駅前再開発など多くの実績を持つ、日本が得意とするスマートなまちづくりです。

2つ目は、企業の広報宣伝のためのスマートシティです。トヨタのウーブン・シティや、パナソニックのスマートシティ、海外では、グーグルのスマートシティ(カナダ・トロント)、双日のデルタマス・シティ(インドネシア)などが挙げられます。

トヨタ:ウーブン・シティ

トヨタは静岡県裾野市に、ウーブン・シティと呼ばれる実験都市を開発し、社会生活に関してさまざまなソリューションやサービスを作り上げ、展示しています。もちろん、関連会社の社員が移り住むことも可能で、実際の利用実績を作る試みも行われています。

パナソニック:スマートシティ

パナソニックのスマートシティは、藤沢、綱島、吹田の3か所の、いずれも自社関連工場があった土地を更地にし、そこにパナホーム(元々は松下電工のブランド名。関連3社の合併により、パナソニックのビジネスの一つとなった)の分譲住宅を建設しました。そこに、パナホーム用に開発されたセキュリティや通信システム、自動化された家、発電設備など、さまざまなハイテクソリューションを埋め込みました。さらに、このハイテク住宅や街は一般に販売され、人々は身近にパナソニックの製品やサービスを体感できるようになりました。

グーグル:スマートシティ(カナダ・トロント)

上記2つの取り組みに酷似しているのが、カナダ・トロントで行われ収束させた、グーグルのスマートシティです。ここで、ある期間進められたグーグルのスマートシティの目的は、明確に都市における次世代移動手段の実証広報です。自動運転を中心にした新しい技術の実証実験は、研究所内だけではその安全性や先進性が立証できません。そこで考え出されたのが、自動運転車の開発と、その地域実装です。トロントの海岸の一部の地域に、最先端で最も商品力が高いグーグルの自動運転車を走らせ、人々に利用してもらい、その実装可能性を披露したと考えられます。

グーグルのスマートシティがある期間で閉鎖したことを見て、それは失敗だったと言う人がいます。しかし、これは全くの誤解です。彼らはスマートシティをビジネスと捉えているため、その実装可能性証明という投資案件が終われば、直ちに撤退し、その実験の場を閉じるのです。

双日:デルタマス・シティ(インドネシア)

双日株式会社が進めているインドネシアのデルタマス・シティは、山手線内の半分面積に当たる巨大なジャングルを、最大15万人のまちにしようとする取り組みで、現在2万5千人の人口を有しています(図2)。ここに、パナソニックのパナホームが、350棟建てられました。ここでは、自社製品をまちで展示することが、実際のビジネスになっています。これは、スマートシティにおける企業の広報宣伝として、正しいビジネス展開であるといえます。

図2:双日株式会社がインドネシアで手掛けているデルタマス・シティ
図2:双日株式会社がインドネシアで手掛けているデルタマス・シティ

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3. 健全なビジネスの考え方

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