国際的なスマートシティとは:国際的スマートシティの基礎知識2

国際的スマートシティの基礎知識

更新日:2022年8月19日(初回投稿)
著者:亜細亜大学 都市創造学部 都市創造学科 教授 岡村 久和

前回は、スマートシティの本来の意味に基づき、国際的スマートシティ産業について解説しました。今回は、実際の国際スマートシティのプレーヤーは誰か、そのビジネスはどこで展開されているのか、また、これらのプレーヤーや場所でスマートシティが展開されている理由について解説します。

1. 市場規模

日本と諸外国では、スマートシティの定義が異なります。ここでいう諸外国とは、スマートシティをビジネスエリアとして見なす国々です。主に、自社の製品やサービスを販売し、スマートシティをビジネスエリアと考える西ヨーロッパ、アメリカ、中国などを指します。また、自国や自分の地域にスマートシティを構築し、活性化を狙う意味でのビジネスエリアと考えるアジア各国も含みます。

一方、日本国内では、スマートシティの大半は実証実験の場であり、ビジネスエリアと考えられることは多くありません。しかし、日本国内においても、駅前や地域の再開発など、国際的にも十分にスマートシティの形態を成すプロジェクトは数多く存在しています。大規模な例としては、渋谷地区の再開発、六本木ヒルズ、あべのハルカス、みなとみらいなどの都心中心の地域開発が挙げられます。また、ライトレールの導入に始まり、新幹線の誘致にこぎ着けた富山市なども良い例です。富山市は、航空機で訪問する街から新幹線で訪問する街へと大きな変貌を遂げました。その他にも、人口の少ない地域の駅前を中心にした地域再開発や、新たなアーケード街の商業地区整備など、国際的にも誇れるスマートシティとしての事例は国内に多数存在します。

このように、スマートシティの定義を国際的な視点から考えると、その市場規模は国内でいわれているものとは全く違う数字になってきます。国内におけるスマートシティとは、実証実験や企業の商品やサービスの展示場と考えられ、市場という考え方があまり多くありません。そのため、国内では、スマートシティをどのようにしてビジネスにするのかというマネタイズ議論が出てきてしまいます。

前回、国際的なスマートシティの市場規模は、推定700兆円としました(2015年)。この数値は、国際的かつ標準的なスマートシティをビジネスとして考えた場合の試算です。日本国内では、各省庁や自治体が支出する補助金や助成金を目的とし、その金額的規模を市場規模と考える人も多いと思われます。しかし、国内における実証実験の数字は、市場規模に含まれていません。国際的スマートシティが産業と考えると、その市場規模は明確にその実際のビジネスサイズとなります。

2. プレーヤーとビジネス戦場

ビジネスである産業というからには、そのプレーヤーとマーケットが存在します。図1に、世界の100万人以上の人口を有する都市とスマートシティ市場のプレーヤー、および実行場所を示します。赤い丸は、1,000万人以上の人口を持つ都市です。黄色の丸は、人口500万~1,000万人未満の都市を表しています。国々の塗り分けは、都市化率を表しています。色の濃い部分は都市化が進んでいると考えてください。

さらに、赤や水色の大きな楕(だ)円が存在します。水色の楕円は、主にスマートシティをビジネスと考え、自国のサービスや製品をスマートシティに適用したい、または販売したいと考えて活動している国です。一方で、赤い大きな楕円は、実際にスマートシティプロジェクトが集中的に起きている地域を表しています。つまり北半球にある日本、中国、西ヨーロッパ諸国が、南半球、または赤道上にある東南アジア、東アフリカ、インドなどにおいてスマートシティビジネスを展開していると読み取ることができます。

図1:世界のメガシティとスマートシティビジネスプレーヤー(国連資料を元に著者作成、2022年)
図1:世界のメガシティとスマートシティビジネスプレーヤー(国連資料を元に著者作成、2022年)

それでは、ここに示した赤い楕円に囲まれた国の人々は、スマートシティに何を期待しているのでしょうか。

読者の皆さんは図1の中で、アメリカに楕円形のマークがないことに気付いたでしょうか。スマートシティの市場の50%近くを占めるアジア各国は、かつてヨーロッパ各国や日本の植民地であった歴史があります。図2は、日露戦争直前のアジアの植民地地図です。

図2:日露戦争直前のアジアの植民地地図
図2:日露戦争直前のアジアの植民地地図

アジア各国は、ヨーロッパ、日本、中国と、植民地という関係を通じて非常に深いつながりを持っていました。植民地化政策においても、占領地という考え方だけではなく、その地域の発展に大きく貢献しようという考えもあり、現に多くのアジア各国がヨーロッパの良い影響を受け、経済成長や文化の向上が図られました。すなわち、東南アジア各国は、植民地化を進める国々と長年の良い関係を保っていると考えることもできます。

例えば、アメリカの植民地であったフィリピンは、約300年間のスペインの植民地としての歴史を持っています。これは文化や経済のみならず、人種の交流なども含めた大きな影響です。筆者の考えでは、これらの地域に新しいスマートシティを作ろうと考えたときに、当然、このような歴史的背景や影響があることは否めないと思われます。つまり東南アジア区域において、アメリカはフィリピンを植民地化したものの、その期間は非常に短く、影響は少ないと考えられます。

これらの理由から、スマートシティビジネスの半分近くを占めるアジアの、スマートシティマーケットにおけるメインプレイヤーは、ヨーロッパ、中国、日本ということができます。東南アジアに知性的、文化的に強い影響を持たないアメリカは、前述のように、図1上ではスマートシティビジネスの展開に存在感を示していません。しかし、投資という観点からの金融市場で、スマートシティに数多く参入しています。

3. 目指す方向性のパターン

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