前回は、スマートシティビジネスにおける不動産を紹介しました。これまで、国際的なスマートシティと日本におけるスマートシティの違いを解説してきました。日本のスマートシティではあまり強調されることはないものの、国際的スマートシティにおいて大前提となっているのは、スマートシティというビジネスの定義です。今回は、前回に引き続き、スマートシティにおけるビジネスとしての売り物のうち、巨大な売り上げと利益を上げるインフラ、それも日本の得意な、ハイテクインフラ産業について解説します。
1. スマートシティを求める地域の動向
第1回でも説明した、スマートシティの国や地域別の産業規模を再掲します(図1)。国際的スマートシティは産業として、2012年の時点で、2020年には1,500兆円規模になるとの予測もありました。2023年現在、推定800兆円規模に膨張していると考えられています。そのうち、約50%の市場がアジアで、残りの50%がアジア以外、つまり、アメリカ、ヨーロッパ諸国、南アメリカ、アフリカ、中東などです。

アジア以外のスマートシティ開発についていうと、西ヨーロッパでは、オーストリアの首都ウィーンの巨大スマートシティや、各国のデジタルツインプロジェクト、木造高層ビル建設、鉄道の無人化など、インフラ系やIT系プロジェクトが進められており、東ヨーロッパにおいても、先進国を目指して、活発なスマートシティ開発が行われていました。しかし、東西共に、ウクライナ危機を受け、その開発は急減速しています。一方、中国が支援を続ける東アフリカや、独自路線を突き進む中東諸国では、スマートシティ開発は変わらず進んでいます。
2. 日本の強みハイテクインフラを再認識
先進国の国際的スマートシティでは、都市の完成度をさらに上げることを目的とした、ハイテクの部分導入という先進国型が多くあります。しかし、それ以外の場所では、放置された草原のグリーンフィールドや、古い都市が存在するブラウンフィールドの両方を対象に、先進国のような都市インフラ導入が目標になってきています。
戦後の日本と、これらの地には、類似点があります。戦後の日本には、全く手付かずの荒野もジャングルもなく、あちこちに大中小の都市が存在し、都市国家が形成されていました。ブラウンフィールドということができるでしょう。
日本の戦後復興事業の中心は、幹線道路、高速道路、一般鉄道、新幹線、個別住宅、集合住宅、電気、ガス、水道などのインフラ構築でした。まさに、基盤となるインフラストラクチャー整備です。その過程で、アメリカをもしのぐ超先進的なハイテクインフラ技術が次々と開発され、実装されてきました。例えば、住宅建設の効率化のために、他国ではほとんど存在しないハウスメーカーという業種が生まれ、成長しました。
鉄道会社は、まず、まちを創生する事を考えます。次に出来上がったまちの中心に駅を置き、それらを繋ぐ鉄道やバスなどのインフラ事業を考えてきました。出来上がったまちの中心は、駅として機能し、高度成長期(1970年代)からはその駅前を日本中で再開発するという動きが広がります。さらに現在DXなどを考慮した、より先進的な駅前施設や統合開発が行われています。1970年代の駅前遊園地は商業施設となったものの、代わりにデジタル機器を使った遊戯施設が作られています。ここに都市系の巨大コングロマリット、日本特有の企業連携技術が生まれました。例えば、東急電鉄に始まり、東急不動産、東急ハンズ(現在はグループ外)までの巨大スマートシティ開発コングロマリットが誕生しています。
財閥系のスマートシティコングロマリットには、東京駅丸の内の三菱地所、日本橋を中心にした三井不動産によるハイテク都市開発などがあります。
勤務地と住居の場所やあり方については、現在のUR都市機構が展開したニュータウン構想が、その高い都市計画技術の最適な事例といえます。数万人規模の住居を建設した多摩ニュータウンは、当初、鉄道が届いていない地区であったため、交通の問題がありました。しかし、その敷地内で住宅都市としてのさまざまな機能を持つようになり、いわゆるコンパクトシティの第一号といえるでしょう。その開発は、水田を人工のラグーンに変えた越谷レイクタウンなど、先進土木技術を使った取り組みにまで発展しました。
ハイテクインフラといえば、これらの土木技術に加え、地震大国日本における高層ビル建築があります。ニューヨークやシンガポールなど、地震のない地域の超高層建設はともかく、地震の多発する国での超高層ビル建築は、それまでどこの国にも例がありません。
1968年、地上36階建ての霞が関ビルディングが竣工し、日本中を驚かせました。現在では、地上300m、60階を誇るあべのハルカスや、70階建ての横浜ランドマークタワーなど、高さ100mを超える高層建築が、日本には1,200棟もあります。地震が多発する場所に、これだけのものが建てられていることは、日本における圧倒的なビル設計と建築技術の証(あか)しといえるでしょう。
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3. スマートシティ都市デザイナー
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4. ハイテクインフラビジネス事例
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