大企業が逃げ出す破壊的イノベーション:イノベーションの基礎知識4

イノベーションの基礎知識

更新日:2022年8月31日(初回投稿)
著者:関西学院大学 専門職大学院 経営戦略研究科 教授 玉田 俊平太

前回は、イノベーションをいくつかのタイプに分けて解説しました。今回は、イノベーションを「破壊的」なタイプと「持続的」なタイプに分類するという新しい考え方をご紹介します。世界では、技術も歴史もある大企業が破壊されてしまった事例がいくつも見られます。例えば、大型コンピュータ(メインフレーム)市場で圧倒的シェアを誇りながら、ミニコンピュータ(研究室や設計室などの環境で使用できる小型のコンピュータ)に市場を奪われたIBM。また、写真や映画のフィルムでの世界シェアナンバーワンの地位をデジタルカメラに打ち破られたコダック。なぜ、こうしたことが起こるのでしょう。これらの企業は、顧客の声にも耳を傾けており、技術開発も怠っていませんでした。しかし、あるタイプのイノベーションにはうまく対応できず、まるで自ら市場を明け渡すかのように破れてしまいました。こうしたタイプのイノベーションは、破壊的(disruptive)イノベーションと呼ばれ、近年注目されています。

1. 持続的イノベーションとは

持続的イノベーションとは、顧客が重視する既存製品の性能が向上するタイプのイノベーションのことをいいます。イノベーションは、企業が提供する製品やサービスが新しくなったり、企業がビジネスを行うプロセスが新しくなったりして、それらが普及することです(図1)。そして、多くの場合、イノベーションによって製品やサービスの性能向上が見られます。

図1:イノベーションのタイプ分け(参考:玉田俊平太、日本のイノベーションのジレンマ第2版 破壊的イノベーターになるための7つのステップ、翔泳社、2020年)をもとに筆者改訂
図1:イノベーションのタイプ分け(参考:玉田俊平太、日本のイノベーションのジレンマ第2版 破壊的イノベーターになるための7つのステップ、翔泳社、2020年)をもとに筆者改訂

例えば、ガソリンエンジンだけを搭載した自動車より燃費が大幅に向上したハイブリッド車や、これまでの白熱電球より省エネ性能が5倍、寿命は10倍近く長いLED電球などが該当します(図2)

図2:持続的イノベーションの例
図2:持続的イノベーションの例

これらの新製品を既存顧客に見せると、「おっ、良くなったね!買い替えようかな」と喜ばれるでしょう。この持続的イノベーションは、多くの人がイノベーションという言葉から連想するものであり、既存製品の性能向上により買い替えたい欲求を促すものです。

持続的イノベーションは、最も収益性の高い顧客に向けて、高い利益率で売れることが見込まれるため、既存大企業には、その市場で積極的に戦う強い動機があります。従って、このイノベーションの競争で勝つのは、ほぼいつも経営資源が十分にある既存大企業です。

持続的イノベーションの中には、製品やサービスなどの性能を徐々に向上させる「漸進的(incremental)イノベーション」もあれば、一気に性能を向上させてライバル企業を突き放す「革新的(revolutionary)、画期的(radical、epoch-making)イノベーション」もあります。これらの漸進的イノベーションや革新的イノベーションは、いずれも既存顧客が重視する性能が向上するという点で共通しているため、持続的イノベーションの一種といえます。

2. 破壊的イノベーションとは

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