企業の競争力とイノベーション:イノベーションの基礎知識2

イノベーションの基礎知識

更新日:2022年6月14日(初回投稿)
著者:関西学院大学 専門職大学院 経営戦略研究科長 玉田 俊平太

前回は、イノベーションとは何か、さまざまな企業がイノベーションを目標に掲げるのはなぜか、などについて取り上げました。イノベーションとは、新しい製品・サービスを顧客に普及させたり、新しいビジネスのプロセスを社内に普及させたりすることです。従って、イノベーションは技術革新ではなく創新普及と訳すのが適切です。今回は、こうした考えに基づき、企業の競争力とイノベーションという点を中心に解説します。

1. 競争力とは

ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授は、前回説明したように、企業には差別化とコスト・リーダーシップの2種類による競争力があると述べています(図1)。

・差別化

差別化は、自社が供給する製品やサービスを他社とは異なるものにすることで、顧客がその商品に代金を支払いたいという意志を高め、他社よりも高い値段で自社の製品やサービスを販売します。そして、より多くの利益を得ることができるようになる、というものです。

・コスト・リーダーシップ

コスト・リーダーシップは、他社と同様の製品やサービスを供給する際にそのコストを下げることによって、他社と同じ価格で製品を販売しても、より多くの利益を得られるようになる、というものです。

図1:イノベーションと競争力の関係

図1:イノベーションと競争力の関係

2. 差別化による競争力

それでは、差別化による競争力を得るために、イノベーションはどのように役立つでしょうか? 多くの人がすぐにイメージできるように、自動車メーカーの差別化による競争力を考えてみましょう。競合他社との差別化を図るためには、顧客に対して明確に異なった価値を提供する必要があります。前回解説した、新しい製品やサービスを生み出すプロダクト・イノベーションと、新しいビジネス・プロセスを取り入れるビジネス・プロセス・イノベーションがどのようにして差別化による競争力につながるか説明します。

・プロダクト・イノベーション

革新的な新製品を開発して差別化を図る例を挙げます。例えば、排気ガスや二酸化炭素を出すガソリンエンジンではなく、バッテリーとモータで動き、空気を汚さない電気自動車、または、車線をはみ出したり前の車と衝突しそうになると、自動でブレーキを掛けたりハンドル操作をして、事故を回避してくれる安全装備搭載の自動車などが挙げられます。

顧客がディーラーへ自動車を買いに行き、こうした新しい装備に魅力を感じ、より多くの対価を払っても良いと思うのであれば、メーカーは差別化による競争優位を達成していることになります(図1のa)。

・ビジネス・プロセス・イノベーション

業務の過程や製造工程を革新的なものにすることを通じて、差別化された製品やサービスを提供する例があります。例えば、トヨタはレクサスLCという新しい差別化されたモデルを製造するために、トヨタの元町工場の中に専用の製造ラインを引き、新しい製造プロセスを導入しました(図2)。

図2:Lexus LC500 Convertible(左:外観、右:エンジン部分)

図2:Lexus LC500 Convertible(左:外観、右:エンジン部分)

「LCのアッセンブリーラインでは、技能認定を受けたTAKUMI(=匠)しか作業に当たることは許されていない」とのことです(参考:島下泰久、レクサスLC専用生産ラインで量産とは違う新たな試みを見た、カービュー、2017年5月)。これは、差別化されたレクサスLCというプロダクト・イノベーションを起こすために製造工程というビジネス・プロセスのイノベーションが必要不可欠だったという意味で、ビジネス・プロセス・イノベーションを通じた差別化の例ということができるでしょう(図1のb)。

3. コスト・リーダーシップによる競争力

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4. 外部環境の変化への適応

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