照明とは:照明の基礎知識1

照明の基礎知識

更新日:2022年9月9日(初回投稿)
著者:放送大学奈良学習センター 所長 特任教授 井上 容子

照明とは、光によって明るくする技術のことをいいます。狭義には、人工的な光による技術のことです。ただ、建築環境工学の分野では、太陽の光(自然光)による採光技術も含めます。照明の目的は、用途にかなった機能や雰囲気を有する光環境・視環境を形成することです。照明は、明視照明と雰囲気照明に大別されます。前者は視作業、後者は印象に関わり、それぞれ主に環境生理と環境心理が対応します。本連載では、全6回にわたり照明の基礎知識について説明します。第1回である今回は、暮らしの中での光の役割を概説した上で、測光量とその測定機器について説明します。

1. 光と暮らし

光は、人の暮らしに深く関わり、光の環境を快適な状態に維持することは必要不可欠です。例えば、光には生体リズムの確保、メラトニンやビタミンの生成という保健衛生的作用があります。また、農業、工業、医療、情報、通信の各分野における光応用技術の進歩はめざましく、それらの技術が今日の便利な生活を支えています。

そして、光の最も重要な役割は視覚を生じさせることです。私たちは日常の生活情報の大半を、目を介した視覚情報として得ています。光が目に入り、網膜上の視細胞に当たると、光化学変化による電気信号が脳に送られ、視覚が生じます。私たちが安全、快適に行動するためには、周囲の情報を、視覚を通して正確に得ることが必要です。主な視覚情報は、物の形や大きさ、動き、質感、明るさ、色です。光がなくては、これらの認識に必要な視力も色覚も得られません。物の形を識別したり、美しく彩られた空間を楽しんだりできるのは、適切な光があってこそです。

快適なくらしには、いつ、どこで、誰が、何のために光を必要とするのかが適確に考慮され、目的にかなった量と質の光環境計画が必要です。例えば、活動には十分な明るさが必要であり、安らぎには適度な陰影が求められます。また、視機能が低下している高齢者には、若齢者に比べて、より質の高い光が必要とされる場合が多いことへの配慮が必要です。

2. 光と色

色は、光による重要な視覚情報の一つです。色には、光の色と物の色があり、視覚的作用とともに、見る人の心にさまざまな感情をもたらす心理的作用があります。また、生活空間を美しく快適に演出するだけでなく、情報の伝達手段としても重要な役割を担っています。例えば、路線図のような複雑なものも、適切な色分けによって、その理解が容易になります。

光の色は、その光の分光分布(スペクトル分布)によって決まり、その光固有の属性といえます。一方、自ら発光していない物(非発光体)の色は、その物体からの反射光の分光分布によって決まり、照明光に依存する視覚情報であり、その物体固有の属性ではありません。そのため、色を設計者の意図通りに出現させる(知覚させる)ためには、照明に用いる光の選択が鍵となります。色は、照明光の分光分布、光量、観察方向によって変化します。さらに、観察者の視覚特性にも依存します。

図1に、視対象から反射される光の分光分布を示します。物体によって反射された光は、色を知覚するための目への刺激となります。物体の分光反射率と照明光の分光分布によって、物体からの反射光、つまり目に入る光の分光分布が決まり、色が知覚されます。

図1:視対象から反射される光の分光分布(引用:色を読む話、コニカミノルタ株式会社、P.37)
図1:視対象から反射される光の分光分布(引用:色を読む話、コニカミノルタ株式会社、P.37

従って、分光反射率が異なる物体は、同じ照明の下では、通常は異なる色として知覚されます。しかし、同じ色に見える場合があります。これを条件等色(メタメリズム)といいます。例えば、自宅の照明の下でズボンと靴下の色を合わせたつもりなのに、外出して太陽の光の下で見たら色が違っていた、ということが起こります。これは、分光反射率が異なるにもかかわらず、特定のスペクトル分布の光の下で、物体からの反射光の色度(色をx-y座標で表示した場合の座標値)がおおむね等しくなる現象によるものです(表1上段)。

表1:光源のスペクトル分布と資料の色度(引用:色を読む話、コニカミノルタ株式会社、P.39
表1:光源のスペクトル分布と資料の色度(引用:色を読む話、コニカミノルタ株式会社、P.39)

光量によっても、知覚色は異なります。その原因の一つは、次章で紹介する光量による視感度の変化です。私たちが日常体験する光の量は、自然光だけでも星や月の明かりから太陽の直射光まであり、数100万倍の範囲で変化しています。そして、同じ物でもよく観察すると、月明かり、黄昏(たそがれ)時、日中、さらに直射光が当たっている場合などでは、知覚される色が変化しています。

また、物体からの光の反射は、どの方向に対しても同じわけではありません。このため、光源と視対象、さらに観察方向の位置関係が変化すると、目に入ってくる刺激としての光の量やスペクトル分布が変わります。その変化が大きいと、色知覚も異なってきます。

3. 光の量(測光量)

光の量は、放射束(単位時間当たりに放出される放射エネルギー)と明るさを感じる能力によって定められています。単なる物理量ではないため、光の量は心理物理量といわれています。明所視と暗所視、視感度、比視感度について説明します。

・明所視と暗所視

明所視とは、十分に明るいところでの目の働きをいい、暗所視とは、暗いところでの働きをいいます。光が目に入ると明るさを感じ、物の形や色が分かるようになります。目は、380〜780nm(nm:ナノメートル、1nm=10-9m)の波長の放射に対して光覚を生じます。ただし、同じ放射量であっても、波長によって明るさや色の感じ方は異なります。明所視なのか、暗所視なのかという、目への刺激としての光の量によっても異なります。

・視感度

視感度とは、明るさとして感じる能力の、放射束に対する割合をいいます(図2)。明所視では、黄緑色の555nmで最大感度となり、683lm/Wを明所視の視感度の最大値としています。暗所視では、青緑色の507nmで最大感度となります。暗くなるにつれて短波長に対する感度が上がるため、青い色が次第に明るく鮮やかに見えます。反対に、長波長に対する感度は下がるため、赤い色が暗く沈んで見えるようになります。黄昏時によく見られる現象で、プルキンエ現象と呼ばれます。

図2:視感度
図2:視感度

・比視感度

比視感度とは、最大視感度に対する他の波長の視感度の割合をいいます。明所視の比視感度に基づいて、光束(単位時間当たり流れる光のエネルギー量)、照度(単位面積当たりの入射光束)、光束発散度(単位面積当たりの発散光束)、光度(点光源より単位立体角当たりの発散光束)、輝度(発散面の単位投影面積当たり、単位立体角当たりの発散光束)という測光量が定められています(表2)。

表2:基本的な測光量と単位
表2:基本的な測光量と単位

光束Fは、放射束を視感に基づいて測った量です。波長ごとの放射束と明所視の視感度の積を、波長について積分することで求めることができます。従って、定義式では、波長ごとの放射束と比視感度の積を波長について積分したものに、明所視の最大視感度683lm/Wを乗じています。

照度Eと光束発散度Mは、ともに光束の面積密度です。面が光を受ける場合を照度、面が光を発散する場合を光束発散度といいます。

図3に光束の定義の解説図を、図4に照度、光度、輝度の関係を示します。

図3:光束の定義
図3:光束の定義
図4:測光量の関係
図4:測光量の関係

光が入射する面(受照面)の反射率がρ、透過率τの場合、受照面ではM=ρE、その裏面ではM=τEという関係が成立しています。点光源の場合、照度は受照面と光源との距離の2乗に反比例します。距離が1/2になると照度は4倍になります。点光源とは、距離に対して大きさが無視できるような光源のことです。しかし、照明計算では、実用上はかなり大きな光源でも点光源と見なします。光源の最大径の5倍ぐらい離れれば、点光源と見なすことができます。

光度Iは、点光源からある方向への発散光束の立体角密度です。面光源については、観察点との距離を無限大にしたときの極限値を考えます。

輝度Lは、ある方向に対する面の明るさを表します。面からの発散光束を、面の見かけの面積と面に対する立体角で除したもの、つまり光度の見かけの面積密度です。

ここで見かけの面積と立体角について説明します。面の見かけの面積とは、ある方向から見た、面の大きさです。面積Sの場合、面の法線と角θをなす方向から見た場合は、見かけの面積はS×cosθとなります(図5)。

図5:見かけの面積
図5:見かけの面積

立体角とは広がりを表す角度です(図6)。二次元における角(平面角)の概念を三次元に拡張したものです。単位はステラジアン、略号はsr、記号にはωを用います。球の中心Pを頂点とする錐体(すいたい)と球との相貫面の面積をS、球の半径rとした場合、この錐体の広がりをS/r2で表します。従って、全空間の広がりは4π(sr)となります。

図6:立体角
図6:立体角

4. 光の測定機器

私たちの活動が、安全で容易、かつ快適に行えるための推奨照度は、照明基準総則JIS Z 9110に定められています。明るさの把握には、輝度が有効です。色の把握には、色度、色温度、スペクトル分布が必要です。色温度について説明します。色温度とは、光源の温度や明るさとは関係がなく、光の色を表す最も簡単な方法となります。光の色、あるいはそれに近い色をもつ完全放射体(理想黒体:あらゆる波長の電磁波を吸収する物質)の絶対色温度です。単位はケルビンKです。朝日や夕日はおおむね2,000Kであり、昼間の太陽光は5,000~6,000Kです。オフィスビルでは一般に4,000~4,500Kの人工光が用いられています。

これらを計測するために、照度計、輝度計、色彩計をはじめとして、各種の測光機器があります。

・照度計

照度計は、照度を測定します(図7)。受照点への、単位面積あたりの入射光束を測定します。受光部は、光を電気信号に変換するフォトダイオード、目の感度(明所視の視感度)に合致させる光学フィルタ、余弦則に従うための拡散グローブなどで構成されています。必要性能はJIS C 1609-1に規定されています。受光部と測定部を離して使えるものや、小型の受光部もあります。他に、色度・色温度も測定する色彩照度計、波長別に測定する分光放射照度計などがあります。

測定に際しては、測定者が光を遮らないように注意する必要があります。照度計による一般的な測定方法は、JIS C 7612に規定されています。

図7:照度計、分光放射照度計(参考:コニカミノルタカタログ、コニカミノルタ株式会社)
図7:照度計、分光放射照度計(参考:コニカミノルタカタログ、コニカミノルタ株式会社)

・輝度計

輝度計は、輝度を測定します(図8)。輝度計は、指定した角度からの入射光のみを測定する機器です。レンズにより、被測定面の微小部分の像を受光器上に結ばせ、絞りにより入射光線束の立体角を制限して測光します。測定視角は0.1〜2°程度です。他に、色の測定まで行う色彩輝度計、スポットではなく面内の任意の点を同時に計測する2次元色彩輝度計、波長別に測定する分光放射輝度計などがあります。

図8:輝度計、分光放射輝度計(参考:コニカミノルタカタログ、コニカミノルタ株式会社)
図8:輝度計、分光放射輝度計(参考:コニカミノルタカタログ、コニカミノルタ株式会社)
測定に際しては、測定対象近くに高輝度源があると、その影響を受け正しい値が得られないことがあるので、注意が必要です。屋内照明の場合は1°、屋外照明の場合は道路照明0.1°、その他1°とされています。一般的な測定方法は、JIS C 7614に定められています。また、照明用白色発光ダイオードの測光方法はJIS C 8152に規定されています。

・色彩計

色彩計は、色を測定します(図9)。色彩計は、内蔵された標準光源とレッド・グリーン・ブルーのフィルタを使用することによって、三刺激値という光色に対する人間の目の反応に応じた値を得ることができます。他に、波長別の透過率や反射率などを測定する分光測色計などがあります。

図9:色彩計・分光測色計(参考:コニカミノルタカタログ、コニカミノルタ株式会社)
図9:色彩計・分光測色計(参考:コニカミノルタカタログ、コニカミノルタ株式会社)

色の測定方法は、反射および透過物体色はJIS Z 8722に、光源色はJIS Z 8724に規定されています。また、三刺激値や色度などの測色はJIS Z 8781に規定されています。

いかがでしたか? 今回は、くらしに関わる光の役割と、測光量およびその測定機器を紹介しました。次回は、光の種類として自然光と人工光を取り上げます。お楽しみに!