ユニバーサルデザイン:ヒューマンインタフェースの基礎知識5

ヒューマンインタフェースの基礎知識

著者:東京農工大学 名誉教授 北原 義典

前回は、ユーザビリティの評価方法について解説しました。今回は、ユニバーサルデザインという概念について紹介します。バリアフリーとはどう違うのか、どんな設計原則があるのかなど、多様性を受け入れるという観点から、その設計思想を見てみましょう。

1. バリアフリーデザインからユニバーサルデザインへ

バリアフリー化とは、高齢者や身体障がい者が、非高齢者や障がいのない人と同様に生活できるよう、製品や設備のユーザインタフェースを改良する考え方で、1990年代以降は、ユニバーサルデザインという考え方に変化しつつあります(参考文献:北原義典、イラストで学ぶヒューマンインタフェース 改訂第2版、講談社、2019)。

ユニバーサルデザインは、高齢者や身体障がい者は特別ではなく、誰でも同じような状況になり得るもので、そうした状況下でも、人間は平等に社会生活を営む権利があるという立場を取ります。さらに、性別や国籍まで含め、さまざまな特性を持つ人に応じて特別な製品や設備を作るのではなく、あらかじめ、できるだけ多様な人々がともに使いやすいように設計するという考え方です(図1)。

若年者もいずれ高齢者になることは自明であり、また、例えば突発性難聴を患う、あるいは交通事故やスポーツでけがをするなど、ある日突然、不自由な生活を余儀なくされるかもしれません。海外に行けば自分も外国人であり、さらには、身体に支障がなくても、近所の工事の騒音などで、相手の話し声が聞こえない状況に置かれる可能性も常にあります。

図1:バリアフリーデザインからユニバーサルデザインへ

図1:バリアフリーデザインからユニバーサルデザインへ

ユニバーサルデザインには、バリアフリーデザインでまだ存在していた「異なる人」という概念を取り払う願いも込められています。ユーザーに合わせて調整でき、機能を選べるという方法で対応する場合もあります。一方で、実際には全ての人に使いやすいデザインは困難で、障がいの程度に応じて特化したバリアフリー製品は、やはり必要だという指摘もあります。ユニバーサルデザインでは、必ずしも全ての人でなくても、最大限共用の範囲を広げることが、基本的姿勢となっています。つまり、ユニバーサルデザインは、バリアフリーデザインを包含する概念といえます。

ユニバーサルデザインは、一般の人の考え方、態度を変える力も持っています。例えば、建物で階段の代わりにスロープがあれば、足の不自由な人もそうでない人も、一緒に歩くことができます。こうした工夫の積み重ねで、障がいの有無を意識しないようになります。

2. ユニバーサルデザインの例

ユニバーサルデザインの施された日用品・家電品、公共施設、飲食品などの実例として、図2に示すものが挙げられます。

図2:ユニバーサルデザインの例

図2:ユニバーサルデザインの例

(1)日用品や家電品

日用品や家電品には、主にシャンプーとコンディショナー、仕切り皿、洗濯機にユニバーサルデザインが取り入れられています。

1:シャンプーとコンディショナー

シャンプー容器の側面にギザギザの凹凸をつけ、視覚障がい者や、また、特に障がいのない人でも目を閉じて髪を洗う際、コンディショナー容器との区別ができる。文字が読みづらい高齢者や、子供でも区別しやすい。

2:仕切り皿

浅くなだらかなへこみを複数もたせ、スプーンですくって食べやすくした食器。片手しか使えない人や、高齢者幼児にも便利。

3:洗濯機

洗濯槽を浅くしたり、操作ボタンを大きくしたりして、高齢者や背の低い人も使いやすくしている。

(2)公共設備

公共設備には、主にトイレ、エレベータ、バス、駅のホームにユニバーサルデザインが取り入れられています。

1:トイレ

空間を広くとり、車椅子やベビーカーの使用者、体の大きい人、荷物をたくさん持った人も使いやすくしている(多機能トイレ)。

2:エレベータ

幅や奥行きを広くしたり、操作ボタンパネルを低く設置したりして、車椅子使用者や高齢者、子供も使いやすくしている。

3:バス

床を低くし、スロープ板を付けられるようにして、車椅子使用者や高齢者、子供も利用しやすくしている。

4:駅のホームのアナウンス

一方を男性の声、他方を女性の声にするなど、アナウンス音声の高さを路線の上り下りで変え、視覚障がい者や高齢者、日本語に不慣れな人でも聞きとりやすくしている。

(3)飲食物

飲食物には、例えば缶ビール、とろみ食品にユニバーサルデザインが取り入れられています。

1:缶ビール

缶の上部に点字で「オサケ」と表示し、視覚障がい者をはじめ子供、外国人など、誰でもジュースと区別できるようにしている。

2:とろみ食品

パサつく食品にとろみをつけ、高齢者や子供、のどを痛めている人など、飲み込みが困難でも食べやすくしている。

これらはどれも、身体障がい者や高齢者に対応した仕様を基準としつつ、障がいの有無にかかわらず誰にとっても使いやすい設計がなされています。

3. ユニバーサルデザイン設計

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4. 情報系のユニバーサルデザイン

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