ユーザビリティ評価:ヒューマンインタフェースの基礎知識4

ヒューマンインタフェースの基礎知識

更新日:2022年6月15日(初回投稿)
著者:東京農工大学 名誉教授 北原 義典

前回は、多くの情報機器で主流となっているGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)の設計について解説しました。このGUIも含めたユーザインタフェースでは、第1回で説明したように操作のしやすさや分かりやすさに加えて、使い心地のよさ、満足感までが重要視されてきています。ユーザビリティという言葉も、単に使い勝手というより、これらの総称として使われるようになっています。今回は、このユーザビリティの評価方法について解説します。

1. ユーザビリティの評価方法

ユーザインタフェースを設計する上で、ユーザビリティ評価は欠かせません。ユーザビリティ評価は、目標性能の設定、方式の有効性確認、改良の効果確認、他方式との比較の4つの目的で行われます。

・目標性能の設定

設計する方式の、ユーザビリティに関する目標値を設定する。

・方式の有効性確認

設計した方式の、ユーザビリティの高さを確認する。

・改良の効果確認

方式の改良を行った結果の、ユーザビリティの向上度合いを確認する。

・他方式との比較

設計した方式を、他の方式とユーザビリティの観点で比較する。

これらの目的のために、ユーザビリティに関する尺度を設定し評価を行い、その結果を踏まえつつ開発を進めていくことが肝要です。ユーザビリティの評価には、ユーザインタフェースの専門家による評価方法、開発者による評価方法、ユーザーによる評価方法の3つがあります(参考文献:北原義典、イラストで学ぶヒューマンインタフェース 改訂第2版、講談社、2019)。

・専門家による評価方法

専門家による評価方法では、視認性はどうか、用語は一貫しているかなど、経験則に基づいた手法や人間の情報処理モデルを使った手法などが使われます。

・開発者による評価方法

開発担当者による評価方法では、ユーザビリティに関するチェックリストを用いて、開発した製品やプロトタイプが各項目を満たしているかをチェックするチェックリスト法が一般的です。項目として、例えばGUI画面では、「見やすくなっているか」「重要な情報は強調されているか」「レイアウト・情報は簡潔になっているか」などが挙げられます(参考文献:山岡俊樹、鈴木一重、藤原義久編著、構造化ユーザインタフェースの設計と評価、共立出版、2000)。他にも、実際の製品やプロトタイプではなく、コンピュータ上に擬似システムを作り、動作させながら評価するコンピュータシミュレーション法もあります。

・ユーザーによる評価方法

ユーザーによる評価方法は広く行われており、ユーザーを実験参加者として、製品やプロトタイプを使ってタスクを行わせ、ユーザビリティの指標を測定します。ユーザーによる評価手法は最も実際の使用状況に近く、得られた結果の信頼性も高くなる一方で、時間やコストがかかるという難点があります。そのため、上記の複数の手法を組み合わせる場合も多く、状況に応じた評価方法を検討するようにします。

2. ユーザビリティの定量化と指標

ユーザーが、何らかのタスクを実行する情報機器や、情報処理アプリのユーザビリティを定量化する指標には、客観指標と主観指標とがあり、それぞれ具体的に、図1に示す項目が挙げられます。

図1:ユーザビリティの評価指標

図1:ユーザビリティの評価指標

・客観指標

客観指標には、作業時間、作業の正確さ、習得時間、生理的負担の4つの項目があります。

作業時間:

作業時間は、作業にかかる時間を指標とします(あるアプリケーションソフトで所定の作業が完了する時間、キーボードでの打鍵時間など)。値が低いほど、ユーザビリティが高くなります。

作業の正確さ:

作業の正確さは、どれだけ正確に作業をこなせたかを指標とします(全項目数に対する、正確にこなせた項目数の比率など)。値が高いほどユーザビリティが高くなります。逆に、ユーザーがどれだけエラーを起こしたかというエラー生起率を、精度に関する指標として用いる場合もあります。その場合には、値が低いほどユーザビリティが高くなります。

習得時間:

習得時間は、操作方法を習得する(システム動作に関するメンタルモデルが構築される)までに要する時間を指標とします。作業時間が短いほど、ユーザーが速く習得できたことを意味します。このため、多くの場合、ある作業を行う時間が、ある一定の値を下回るようになるまでの時間を測定します。作業遂行に必要な、最低限の操作を習得するまでの時間を測定する場合もあります。

生理的負荷:

生理的負荷は、作業を行う中での疲労度や緊張度、ストレスなど、生理的な変化を指標とする方法で、作業を行う前後に測定することにより評価します(図2)。

疲労度の測定には、フリッカーテストや二点弁別閾(いき)測定法などが用いられます。フリッカーテストは、LEDの点滅弁別周期(識別できる時間間隔)が疲労に伴って増大することを利用して測定する方法です。二点弁別閾(いき)測定法は、皮膚の2点を針状のもので同時に刺激したときの弁別間隔(識別できる2点間の距離)が疲労によって広がることを利用して測定する方法です。ただし、軽度の精神的疲労の場合は平常時との差が現れにくいため、質問紙(簡単な文字や記号だけで回答できる測定形式)に回答させる主観的疲労度測定方法や、脳波・皮膚電位の変化など生理指標を用いる場合もあります。

緊張度やストレスは、R-R間隔(もしくは心拍数)、血圧、まばたき回数などの生理指標を用いて測定されます。いずれの場合でも、実験参加者の動作に影響を与えたり、身体を傷つけたりしないよう注意します。

図2:生理的負荷測定例

図2:生理的負荷測定例

・主観指標

主観指標は、満足度で評価されます。

満足度:

満足度は、使い心地に関する、満足の度合いを指標とします。ユーザビリティ評価では満足度や心地よさとなり、また例えば、音質評価では「聞きやすさ」「自然さ」「肉声感」、画質評価では「見やすさ」「美しさ」などとなります。

これらの指標は絶対的なものではなく、ユーザビリティを評価する対象や重視すべき項目によって、ふさわしいものを選ぶようにします。また、作業時間が短くなれば作業の正確さが低下したり、作業を正確に行おうとすると生理的負荷が増したりするなど、指標が互いに関連性をもつ場合もあることにも注意が必要です。客観指標では、測定値をもとにした定量化が容易である一方、主観指標では、次項で述べるような尺度構成を用いて量的表現をする必要があります。

3. 主観指標の尺度構成

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