病院単体の全体計画・設計:病院建築の基礎知識3

病院建築の基礎知識

更新日:2022年6月1日(初回投稿)
著者:東京大学名誉教授、工学院大学名誉教授、一般財団法人ハピネス財団理事長 長澤 泰

前回は、地域における病院の施設計画について解説しました。今回は、病院単体の全体計画、および設計について説明します。

1. 配置計画

配置計画とは、病院の各棟を敷地内でどのように配置するかを考える計画で、ブロックプランと呼びます。まず、容積率(敷地面積に対する建物の延べ床面積-各階の床面積の合計-の割合)や建ぺい率(敷地面積に対する建築面積-建物を真上から見たときの面積-の割合)の他、隣地や周辺道路の日照・通風・採光を確保するために、主に建物の高さに関して、道路斜線・隣地斜線・北側日影制限などの法規的検討を行います。

次に、患者の来院や職員の出退勤、物品の搬入・搬出、遺体の搬出などの動線を考えます。それぞれの敷地への出入り口や構内の動線や駐車場の配置を考え、四季による日照・風向きの変化も考慮します。並行して、構内の舗装や植樹といった外構計画も行います。その際に、周辺市街地との関係、特に病院からの風景や病院自体が周辺からどのように見えるかにも配慮が必要です。

病院の各部屋が持つさまざまな異なる機能は、院内の多様な活動を反映しています。配置計画では、まず同じような機能の部屋を集めた部門の全体構成を考えます。部門には、病棟、外来、診療、供給、管理の5つがあります(表1)。そして、各部門間での人、物、情報の流れを考慮して、効率のよい部門配置を計画します。

表1:病院の部門構成(引用:長澤泰・在塚礼子・西出和彦、建築計画 改定版、市ヶ谷出版社、2011年9月、P.115)
部門
(面積構成割合)
概要 環境特性
病棟
(35 ~ 40%)
入院患者に対して診療や看護を行う場である。同時に、患者にとっては生活の場ともなる。病院の中心となる部門である 居住空間的
外来
(10~15%)
通院患者への診療が行われる部門である。リハビリテーションやガンの化学療法などの通院治療や日帰り手術の出現などにより、外来部門の重要性が増してきている 公共空間的
診療
(15~20%)
検査部・放射線部・手術部など、医師の診療行為を支援する部門である。
病院管理の考え方から中央化が進められてきた。
診療技術の進歩により面積割合が増加しつつある
特殊空間的
供給
(15~20%)
滅菌材料・看護用品・薬品・食事・リネン・事務用品など院内の各部門に必要な物品を供給する部門である。エネルギーや医療廃棄物も扱う 生産空間的
管理
(10~15%)
院長・看護部長・事務長室や医局、庶務・医療事務室などで構成され、病院全体の管理・運営を行う部門である。カルテ(診療録)の管理や職員食堂、更衣室などの福利厚生なども司どる 執務空間的

2. 動線計画

動線計画とは、人の動きを線で結んだ動線を分析して、合理的な設計をすることです。院内の人々には、患者(外来、入院)、来訪者(家族、付き添い、見舞い)、病院スタッフ(医療、看護、コメディカル)、外注者(事務、メンテナンス、委託)に分けられます。これら利用者のグループによって、建築や設備に対する要求は異なるため、動線計画では部門ごとの優先順位を常に考える必要があります。

3. 物流計画

物流計画とは、搬送物を目的地まで機能的な方法で届ける計画のことをいいます。院内で搬送される物品には、医療(機器、薬剤、滅菌材料など)、看護(リネン、清拭タオルなど)、検体(検査用の血液、身体組織など)、患者給食、各種データ(検査結果、放射線撮影フィルム、診療録など)、事務書類(伝票、用紙など)、廃棄物(ごみ、感染危険物、放射性物質など)があります。その中には、亡くなった患者の遺体もあります。こうした搬送物の動きが錯綜(さくそう)しないように、部門間の位置関係を考慮した計画が必要です。

物流計画を行う際には、通過型ベッド搬送エレベータ(前後2方向に出入り口を持ち、病棟から清潔区域の手術部などへの搬送に都合が良い)を導入するなど、各種の自動搬送機器の特性を考えて導入します。さらに、病院内ではベッド、ストレッチャー(患者搬送用ベッド)、車椅子、可動式X線撮影機、各種医療・看護作業台など、車輪付きの器具が移動すること、そして歩行困難な患者がいることを念頭に置き、床の段差をなくすことや適切な床仕上げの選定が必要です。

図1は、各部門間の人と物の動きを模式化したものです。図の上部に管理部門、下部に供給部門、左側に外来部門、右側に病棟部門、中央左上から右下に向かって診療部門の各室が示されています。黒い矢印は人の動き、白抜きの矢印はものの動きです。矢印の太さは、大まかな交通量と搬送量を示しています。

図1:人とものの動きと部門構成

図1:人とものの動きと部門構成(引用:長澤泰・在塚礼子・西出和彦、建築計画 改定版、市ヶ谷出版社、2011年9月、P.121)

4. 情報計画

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5. 安全計画

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6. 成長と変化の計画

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