ものづくりと健康経営~産業衛生・安全衛生からの発展~:健康経営の基礎知識4

健康経営の基礎知識

更新日:2022年5月19日(初回投稿)
著者:山野美容芸術短期大学 教授 新井研究室主宰 新井 卓二

前回は、年1回の顕彰制度である健康経営銘柄と健康経営優良法人について紹介しました。今回は、ものづくりにおいて重要な産業衛生・安全衛生からの展開を紹介します。産業保健や安全衛生を越えた健康経営の取り組みについて考えていきましょう。

1. 産業衛生と安全衛生からの発展

職場における健康は、古くから職域(産業)保健といわれ、長く厚生労働省の管轄です。法制度面では1916年、工場労働者を保護する工場法に始まり、1964年に労働基準法、1972年には労働安全衛生法が制定されました。また、健康経営表彰制度が始まった2015年には、厚生労働省で新たに、データヘルスが推進されました。データヘルスとは、特定検診制度やレセプト(診療報酬明細書)の電子化によってデジタル化されたビッグデータを分析し、健康増進や病気の予防に活用しようとする取り組みのことをいいます。医療保険者(医療保険事業を運営するために保険料(税)を徴収したり、保険給付を行う実施団体)が電子的に保有された健康医療情報を活用した分析を行い、加入者の健康状態に即してより効果的、効率的に保健事業を行います。

2017年、厚生労働省は、データヘルスと健康経営が連携するコラボヘルスを発表し、職域での両輪として推進し始めました。コラボヘルスとは、健康保険組合などの保険者と事業主が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境の下、加入者(従業員・家族)の疾病予防・健康づくりを効果的、効率的に実行することです。同年、メンタルヘルスの不調を未然に防止することを主な目的として、ストレスチェック制度も義務化されました。

近年では、メンタルヘルスの研究が進み、メンタルヘルスの研究をまとめた「川上憲人、職場のメンタルヘルスの現状と展望、2009年」や、2015年に義務化されたストレスチェック制度の基になった「堤明純、健診におけるストレス評価、2009年」などの研究が発表されています。なお、ストレスチェックは、前回紹介した健康経営度調査票の項目にも含まれています。

近年新しく提唱された概念の一つに、ワーク・エンゲージメントがあります。ワーク・エンゲージメントとは、提唱者のウィルマー・B・シャウフェリら(2002)によると、「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。エンゲージメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である」とあります。

ワーク・エンゲージメントは、ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度(AmericanPsychologicalAssociation、Utrecht Work Engagement Scale:UWES)によって評価されました。日本でも島津明人ら(2008)による「Workengagement in Japan」(慶応義塾大学 総合政策学部 島津明人研究室、ワーク・エンゲイジメント(UWES))と題した研究により、日本版ユトレヒト労働従事尺度の検証が進み、ワーク・エンゲージメントという言葉が浸透していきました。そして、2018年度の健康経営度調査票から、「従業員や組織の活性度の確認」として、ワーク・エンゲージメントが組み込まれるようになりました。さらには、Well-being(幸福で肉体的、精神的、社会的全てにおいて満たされた状態)という概念も提唱され、広がりを見せています。

・企業における健康経営メンバーの役割

健康経営で最大の効果を得るためには、関係部署が多岐にわたって関わります。健康経営は、「健康」と「経営」のハイブリッド型です。この中で産業保健スタッフは、健康の中でも主となる一つの役割(健康データ分析など)を担っていると考えられます。図1に、健康経営における健康経営メンバーの役割を示します。

図1:健康経営メンバーにおける役割(例)

図1:健康経営メンバーにおける役割(例)

産業保健や安全衛生の延長から健康経営に取り組む企業もあります。しかし、関係部署が多岐にわたり、企業に求められている安全衛生委員会などとはメンバーが違うため、別組織を用意した方が、推進には好ましいでしょう。本連載の読者には、製造業が多いと思われます。従来の産業衛生や安全衛生を土台に、さらなる健康経営を推進していきましょう。

2. ものづくり企業の健康経営

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