MEMSジャイロの高性能化:ジャイロセンサの基礎知識6

ジャイロセンサの基礎知識

更新日:2022年7月1日((初回投稿)
著者:東北大学 大学院工学研究科 ロボティクス専攻 教授 田中 秀治

前回は、MEMSジャイロの優れた製法であるエピポリシリコンプロセスのキーポイントを解説しました。今回は最終回です。MEMSジャイロの高性能化について紹介します。

1. 高性能MEMSジャイロが必要な訳

第1回で説明したように、さまざまなジャイロがある中でMEMSジャイロはローエンドに位置します(図1)。MEMSジャイロは小さく、大量生産によって安価でもあるため、スマートフォンやゲーム機器、自動車など、身の回りの製品に広く使われています。このように身近なMEMSジャイロがより高性能になれば、さまざまな未来が広がります。

図1:各種ジャイロの性能

図1:各種ジャイロの性能

高い性能が要求される用途には、光学式ジャイロがよく使われます。近年、開発が盛んな自動運転車にも、おそらく光学式ジャイロが使われていると思われます。実際、自動運転車にはバイアス不安定性(どのくらいゆっくりとした回転を検出できるかを評価軸に選んだ性能)が0.1°/h以下でなくてはならないといわれています。これは、光学式ジャイロの性能レンジです。

一方、光学式ジャイロは、一般的に3軸で100万円台にもなり、実験車ならともかく、大衆車に採用するにはあまりにも高額です。自動運転車をリーズナブルな価格で普及させるには、一つ一つの構成部品を技術革新によって低コスト化しなくてはならず、他の高性能ジャイロも同様です。そのためには、2つの考え方があります。一つは、光学式ジャイロを低コスト化する方法。もう一つは、安価なMEMSジャイロを高性能化する方法です。筆者は、後者が有望だと思っています。

2. MEMSジャイロの高性能化の方法

どうしたらMEMSジャイロを高性能化できるでしょうか。ここでは、第2回で説明した原理に基づいて考えてみましょう。改めて、振動式ジャイロの原理を図2に示します。x軸に沿ってその固有周波数fxで振動させると、ジャイロの角速度に比例して、コリオリ力がy方向に働きます。y軸の固有周波数fyはfxと異なるものの、スケールファクタ(感度)を高くするためには、数%以内の違いにしておくべきです。

図2:振動式ジャイロの原理

図2:振動式ジャイロの原理

高性能化に有望な方法は、fxとfyを一致させることです。これをモードマッチといいます。さらに、Q値を大きくすれば、スケールファクタをより大きくできます。では、そうすればよいではないか、と思うかもしれません。しかし、実際はそう簡単ではありません。確かに、fx=fyとするだけなら、MEMS構造をかなり精密に作り、それでも一致しないところは後で調整して、モードマッチさせることは可能です。

3. 高性能化の難しさ

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

4. フーコーの振り子をMEMSで実現

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。