MEMSジャイロの作り方(前編):ジャイロセンサの基礎知識4

ジャイロセンサの基礎知識

更新日:2022年5月18日(初回投稿)
著者:東北大学 大学院工学研究科 ロボティクス専攻 教授 田中 秀治

前回は、ジャイロセンサのメカニズムについて解説しました。今回は、MEMSジャイロの作り方を紹介します。MEMSジャイロはシリコンウェハ上に形成された微細構造からできています。この小さなメカニズムを、フォトリソグラフィ、エッチング、成膜といった半導体微細加工技術を駆使して作ります。

1. SOIプロセス

最も単純な作り方はSOIプロセスと呼ばれ、SOIウェハを使用します(図1)。SOIプロセスは、SOIウェハの準備、Siデバイス層の加工、SiO2エッチングによるMEMS構造のリリースの3つの過程を経て作製されます。

図1:SOIプロセス

図1:SOIプロセス

1:SOIウェハの準備

SOIはSilicon On Insulatorの意味で、デバイスが作られる比較的薄いシリコン層(デバイス層)が、酸化シリコン層(BOX層)を間に挟んで、厚いシリコン層(ハンドル層)で支えられた構造のことです。MEMSジャイロの場合、デバイス層の厚さは数10μm程度かそれ以下です。

2:Siデバイス層の加工

SOIウェハの表面に電極や配線を形成した後、デバイス層をジャイロのメカニズムに加工します。このとき、デバイス層を垂直にエッチングしなくてはならないため、ボッシュプロセスと呼ばれる方法を使います。これはドイツの自動車部品企業大手ロバート・ボッシュによって発明されたことに由来します。ちなみに、その創業者は火花点火の巨人ロバート・ボッシュ(1861~1942)であり、彼の甥(おい)にはハーバー・ボッシュ法の発明者の一人で、ノーベル化学賞受賞者のカール・ボッシュ(1874~1940)がいます。

3:SiO2エッチングによるMEMS構造のリリース

MEMSジャイロの構造はできたものの、現状ではBOX層を介してハンドル層に固定されているため、メカニズムは動きません。そこで、MEMS構造の下にあるBOX層を、フッ酸を使ったエッチングで取り除きます。ただ、BOX層を全てエッチングしてしまうと、デバイス層のMEMS構造がハンドル基板から分離してしまうので、可動部下のBOX層は完全に取り除きつつ、基板に固定するアンカーは残るようにエッチング時間を調整します。もちろん、そうなるようにMEMS構造を設計しておく必要があります。

このようにして、MEMSジャイロを作製できます(図2)。しかし、この方法は少し古めかしく、特に多軸ジャイロを作るのに競争力のある方法とはいえません。いくつかある問題点の一つは、一般的に厚さ2μm程度と薄いBOX層で、面外方向の動きを大きくできないことです。前回説明したように、3軸ジャイロのメカニズムでは面外方向(z方向)の振動が必要です。

図2:SOIプロセスで作ったMEMSジャイロ(著者の研究室により開封、撮影)

図2:SOIプロセスで作ったMEMSジャイロ(著者の研究室により開封、撮影)

2. キャビティSOIプロセスとエピポリシリコンプロセス

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3. エピポリシリコンプロセスの利点

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