延性モード研削、ぜい性モード研削とは?:研削加工の基礎知識4

研削加工の基礎知識

更新日:2017年4月20日(初回投稿)
著者:基盤加工技術研究所代表 工学博士 海野 邦昭

前回は、さまざまな研削形態と、その背景となる砥粒保持力と研削抵抗の関係や、作用硬さを説明しました。今回は、延性モード研削とぜい性モード研削を取り上げます。また、最大砥粒切り込み深さ(tmax)と、臨界砥粒押し込み深さ(Dc値)の関連を解説します。

1. 最大砥粒切り込み深さ(tmax

研削加工はフライス加工と似ています。フライス工具の切れ刃が無数に多くなったものが、研削加工に用いられる研削砥石です。フライス加工では切削条件を設定する際、刃当たりの送りを考慮します。一方、研削加工では、平均切りくず断面積や、最大砥粒切り込み深さが問題となります(図1)。

図1:最大砥粒切り込み深さ

図1:最大砥粒切り込み深さ(引用:海野邦昭、研削加工基礎のきそ、日刊工業新聞社、2006年、P.37)

平均切りくず断面積は、単一砥粒に作用する研削抵抗に影響し、研削時における砥粒の摩耗や工作物の変形などを考える上で大切です。また、鋼材のような延性材料の研削加工において、研削条件を設定する際によく用いられます。一方、硬ぜい材料の研削加工では、最大砥粒切り込み深さが考慮されます。

最大砥粒切り込み深さ(tmax)は、平面研削の場合、幾何学的な解析より、tmax=2・μ・(v/V)・(t/D)0.5として計算されます。μは有効切れ刃間隔、vは工作物速度、Vは砥石周速度、tは切り込み、Dは砥石径です。最大砥粒切り込み深さは、有効切れ刃間隔や工作物速度に比例して大きくなり、反対に砥石周速度が高くなると小さくなります。

2. 臨界砥粒押し込み深さ(Dc値)

最大砥粒切り込み深さは、セラミックスやガラスなどの硬ぜい材料を研削するときの亀裂(クラック)の発生状況を推定するために用いられます。例えば、砥粒切れ刃の形状を四角すいで近似し、それを工作物に押し込んだと仮定します。工作物が鋼材のような延性材料の場合、押し込まれた四角すいの先端形状が圧痕として工作物表面に残ります(圧子圧入)。硬ぜい材料の場合、圧痕の稜線(りょうせん)部に亀裂が発生します。亀裂を目視で観察することは困難です。超音波顕微鏡を用いると鮮明な画像が得られます(図2)。

図2:窒化ケイ素に圧子圧入時の亀裂発生状況(超音波顕微鏡)

図2:窒化ケイ素に圧子圧入時の亀裂発生状況(超音波顕微鏡)(引用:海野邦昭、研削加工基礎のきそ、日刊工業新聞社、2006年、P.49)

圧子圧入の際に、工作物表面に発生する亀裂の進展状況は、セラミックスの種類により異なります(図3)。ジルコニアZrO2の亀裂の進展長さは短く、次いでホットプレス窒化ケイ素HPSN、アルミナAl2O3となり、ホットプレス炭化ケイ素HPSCは最も長くなっています。このことは、炭化ケイ素HPSCやアルミナAl2O3を研削する場合に、亀裂が進展しやすく、すりガラスのような破砕形の研削となりやすいことを示しています。

図3:各種セラミックスの圧子圧入時の亀裂の発生状況

図3:各種セラミックスの圧子圧入時の亀裂の発生状況(HPSC:ホットプレス炭化ケイ素、Al2O3:アルミナ、HPSN:ホットプレス窒化ケイ素、ZrO2:ジルコニア)(引用:海野邦昭、CBN・ダイヤモンドホイールの使い方、工業調査会、1991年、P.178)

前述のように、砥粒切れ刃の形状を四角すいに近似し、一定の負荷荷重で工作物(硬ぜい材料)に押し込んだ場合を仮定してみましょう。四角すい圧子の押し込み深さは、負荷荷重に依存します。荷重が大きくなり、砥粒押し込み深さが一定の値に達すると、圧子の下に亀裂が発生します(図4)。亀裂の発生に対応する砥粒の押し込み深さを、臨界砥粒押し込み深さ(Dc値)と呼びます。研削時に砥粒切れ刃の食い込み深さが工作物材質に依存する臨界押し込み深さを超えると、破砕形の研削になりやすいことを示しています。

図4:圧子圧入時の亀裂の発生モデル

図4:圧子圧入時の亀裂の発生モデル(引用:安永暢男、はじめての研磨加工、工業調査会、2010年、P.57)

3. 硬ぜい材料の臨界砥粒押し込み深さ

硬ぜい材料の亀裂の発生に対応する臨界砥粒押し込み深さを、Dc値と呼びます。臨界砥粒押し込み深さは、破壊じん性の2乗に比例し、弾性係数(ヤング率)と硬さに反比例します。この場合、破壊じん性は、亀裂の伝播(でんぱ)に対する抵抗力を示します。

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4. 延性モード研削とぜい性モード研削

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