応力拡大係数とき裂による破壊:破壊工学の基礎知識6

破壊工学の基礎知識

更新日:2018年3月28日(初回投稿)
著者:NDI Japan 代表 谷村 康行

前回は、き裂と強度の関係を説明しました。今回は、応力拡大係数と破壊の関係について、き裂のある材料における具体的な破壊条件と、ロケットの材料開発と破壊検査の事例を解説します。

1. 破壊じん性とその意味

連載第5回で、破壊じん性値を求める試験方法を紹介しました。あらかじめ疲労き裂を入れたCT試験片に力を加え、き裂が急速に進展して破壊するときのき裂長さを測定します。また、き裂に対する力のかけ方には、3つのモード(モードI~III)がありました。表1に、代表的な材料に、モードIで力を加えたときの、破壊じん性値 KIcと、引張強さを示します。ここでは、引張強さは降伏強さ σy(塑性変形が始まる降伏点における応力)で示しています。

表1:代表的な材料の降伏強さと破壊じん性値(モードIの破壊試験)
材料 引張強さσy(MPa) 破壊じん性値KIc(MPa√m)
マルエージング鋼
(18% Ni)
1,890 112
高強度鋼
(4340 調質)
1,070 67
低合金鋼
(A533B-1 調質)
480 218
チタニウム合金
(Ti-6AI-4V)
940 60
アルミニウム合金
(7075-T6)
510 23
アルミニウム合金
(2024-T3)
340 30

図1に、き裂の長さを横軸に、応力を縦軸に取った破壊じん性のグラフを示します。赤い曲線は破壊じん性を表し、き裂長さのルートに反比例しています。応力とき裂長さが曲線の下の領域にあれば、その部材は壊れません。曲線を超えると、き裂が急速に拡大して破壊します。この破壊の仕方を、線形弾性破壊といいます。また、ピンク色の横向きの直線は、引張強さを表しています。応力がこの線を超えると、き裂がなくてもその材料は大きく塑性変形を開始して、破壊します。この破壊の仕方を、塑性崩壊といいます。

図1:き裂のある材料が線形弾性破壊する条件

図1:き裂のある材料が線形弾性破壊する条件

2. ソフトウェアで見る応力拡大係数と破壊じん性

筆者のブログでは、図1のようなグラフを簡単に描くことができるソフトウェアStress Intensity Factorを公開しています。図2は、高強度鋼(4340)のデータを設定した場合の実行例です。応力200MPa、き裂長さ10mmは、赤い線の下側にあるので、破壊しないことが分かります。しかし、応力が200MPaのままでも、き裂長さが27mmを超えると、応力拡大係数が破壊じん性値67MPa√mを超え、線形弾性破壊します。また、き裂長さが10mmのままでも、応力が388MPaを超えると、やはり応力拡大係数が破壊じん性値67MPa√mを超え、線形弾性破壊します。

図2:ソフトウェアStress Intensity Factorの実行例、高強度鋼(4340)

図2:ソフトウェアStress Intensity Factorの実行例、高強度鋼(4340)

図3に、低合金鋼(A533B-1)のデータを設定した場合の実行例を示します。この材料では、応力200MPaの場合、き裂長さが100mmを超えても、線形弾性破壊しないことが読み取れます。低合金鋼(A533B-1)は、高強度鋼(4340)に比べ、き裂に対して強いことが分かります。

図3:ソフトウェアStress Intensity Factorの実行例、低合金鋼(A533B-1)

図3:ソフトウェアStress Intensity Factorの実行例、低合金鋼(A533B-1)

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3. ポラリスロケットの材料開発

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