応力と応力集中:破壊工学の基礎知識3

破壊工学の基礎知識

更新日:2018年11月21日(第2版投稿)
著者:NDI Japan 代表 谷村 康行

前回は、弾性変形と塑性変形について解説しました。今回は、応力集中と破壊について説明します。応力集中は、材料や部材のき裂(傷)部分など、特定の箇所に発生する大きな応力です。部分的であるとはいえ、大きな応力が発生することは、部材にとっての弱点となり、破壊を早める原因となりかねません。

1. 応力集中とは?

応力は、外部からの力(外力)に対して形を保とうと抵抗する単位面積当たりの力です(参照:第1回)。応力集中は、断面の形状が変化する箇所に生じます。断面の形状が変わらず断面積が一様な材料に、応力集中は発生しません。切欠きや貫通孔などがあると、その箇所で断面の形状が変化するので応力集中が発生します。

まず、切欠きや貫通孔を持たない単純な形状の帯板で考えてみましょう。図1は、一般構造用圧延鋼材SS400製の、長さ220mm、幅37mm、厚さ4mmの帯板です。

この板を引張試験にかけると、69kNで破断しました。この場合、引張力によって平板が切り離されないように抵抗している断面の面積は、どの部位でも同じです。断面積Aは、以下のように求められます。

断面積A

単位をミリメートルからからメートルに変換すると、148mm2は148×10-6m2となります。破断時の力(荷重)を断面積Aで割ると、引張強さを求めることができます。引張強さσtAを計算すると、

引張強さσtA

N/m2はPa(パスカル)に置き換えることができ、106はM(メガ)なので、466×106N/m2は466MPaとなります。これに25kNの引張力を加えます。破断荷重よりも小さな力なので破断はしません。この場合の応力を計算してみます。25kNの値を応力の計算式 σ=W/Aに代入すると、応力σは以下のように求められます。計算式のWは、外部の力に抵抗する内力を表しています。

応力σ

単位をPaに変換すると169MPaになります。

図1:切欠きや貫通孔のないSS400の帯板

図1:切欠きや貫通孔のないSS400の帯板

次に、図1と同じ材質、形状で、中央に直径6mmの貫通孔が開いている帯板に、25kNの引張力を加えた場合を考えてみましょう(図2)。図2の青矢印の箇所は、貫通孔があるため、幅は37-6=31mmです。このため、引張力に抵抗する断面積A’は、以下のように求められます。

断面積A’

断面積 A’は、図1の断面積 Aよりも減少していることが分かります。また、応力σ’は、以下のように求められます。

応力σ’

図2:中央に直径6mmの貫通孔が開いたSS400の帯板

図2:中央に直径6mmの貫通孔が開いたSS400の帯板

貫通孔によって断面積が小さくなった帯板(図2)でも、生じている応力は引張強さの半分以下なので、一見、破断する心配はないように思えます。

しかし、ここでは応力集中を考えなければなりません。引張応力が生じている帯板に円形の貫通孔があると、円の縁付近に大きな応力が生じます。端のない無限平面で計算すると、貫通孔がある場合の応力は、貫通孔がない場合の応力(平均応力σn)の、約3倍の大きさになります(図3)。202×106N/m2(MPa)の3倍の応力は、材料が耐えうる限界の応力、すなわち、引張強さを超えてしまいます。

図3:円形の貫通孔の縁に発生する応力集中

図3:円形の貫通孔の縁に発生する応力集中

2. 応力集中と破壊

貫通孔のある帯板(図2)の断面積は貫通孔により減少しているので、単純計算では、破断荷重は58kNになるはずです。しかし、引張試験にかけると、実際の破断荷重は61kNでした。58kNよりも、やや大きい力で破断しています。このことは、破断する力に応力集中が影響していないことを示しています。応力集中は、空論だったのでしょうか?

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3. き裂と応力集中

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