鍛造加工とは?鍛造加工の種類は?:鍛造加工の基礎知識1

鍛造加工の基礎知識

更新日:2018年2月22日(初回投稿)
著者:名古屋工業大学 電気・機械工学専攻 機械工学分野 教授 北村 憲彦

鍛造(たんぞう)加工は、金属の塊を金型で強くたたいて、目的の形に成形する加工法です。強くたたく(鍛える)ことで、材料に粘り強さ(じん性)を与え、強度を高めることができます。本連載では6回にわたり、技術者に必要な鍛造加工の基礎を解説します。第1回では、鍛造加工の特徴と種類を紹介します。

1. 鍛造加工の特徴

鍛造加工は、日本でも古くから用いられてきた金属加工法です。高い強度が求められる刀や鉄砲などの武器や、鋤(すき)や鍬(くわ)などの農具が作られていました。現在では、発電用ローター主軸や航空機の部品といった大型のものから、自動車部品、工具や刃物など身近な製品の製造にも鍛造加工は適用されています。

鍛造加工の長所は、高い生産性と、材質の改良によって得られる高い強度にあります。鍛造加工の製品精度は、鋳造(ちゅうぞう)加工と切削加工の中間といわれています。ただし、近年では精密鍛造技術が進歩し、切削や研削などの後加工を行わなくても使用可能な精度が得られるようになりました。一方、鍛造加工の短所としては、大型の鍛圧機械や丈夫で精密な金型、大きく変形しても割れない延性に優れた材料など、高価な設備や材料を必要とすることが挙げられます。

2. 鍛造加工、鋳造加工、切削加工の違い

鍛造加工、鋳造加工、切削加工による除去加工の仕組みを、図1にまとめました。

図1:鍛造加工・鋳造加工・除去加工の仕組み

図1:鍛造加工・鋳造加工・除去加工の仕組み

鍛造加工は、鋳造(ちゅうぞう)加工と漢字が似ていて、間違えられることがあります。鋳造は、溶かした金属を型に流し込んで成形する加工法で、日本最古の貨幣といわれる和同開珎や、奈良の大仏も鋳造により作られました。鋳造は複雑な形状や、大きな製品の製造に向いています。しかし、生産性、精度、強度に関しては、鍛造の方が優れています。

鍛造や鋳造によって加工された製品は、多くの場合、後工程で加工精度を高めます。後工程として用いられる加工方法の一つに、切削加工があります。切削加工は、工具を使って部品を少しずつ削る加工法です。時間はかかるものの、超精密な製品を作ることができ、多品種少量生産に向いています。近年、切削加工に使われる工作機械は、加工速度が格段に向上し、ITを取り入れるなどシステム化が進められています。

3. 加工方法による鍛造の分類

鍛造加工は、材料をつぶしながら形を作る自由鍛造、金型の凹凸を材料に転写する型鍛造、材料を押し出して形を作る押出の3つに分類できます。

1:自由鍛造

自由鍛造は、一対の平らな工具を用いて材料をつぶして加工する、単純な鍛造法です。材料の高さを縮める据込み(図2)や、材料を引き伸ばす展伸などの種類があります(図3)。

図2:据込みの仕組み

図2:据込みの仕組み

図3:展伸の仕組み

図3:展伸の仕組み

2:型鍛造

型鍛造は、凹凸が彫刻された一対の金型で材料をたたき、金型の形状を材料に転写する鍛造法です。密閉鍛造、半密閉鍛造、閉そく鍛造などの種類があります。

・密閉鍛造

密閉鍛造では、材料を押し切ったとき、上型と下型を隙間なく閉じ、材料が密閉されます(図4)。そのため、鍛造荷重が増大し、金型にかかる負荷が大きくなる危険を伴います。

図4:密閉鍛造の仕組み

図4:密閉鍛造の仕組み

・半密閉鍛造

半密閉鍛造では、型の隙間から余った材料をはみ出させることで(バリの発生)、金型内に材料をしっかりと充満させることができます(図5)。

図5:半密閉鍛造の仕組み

図5:半密閉鍛造の仕組み

・閉そく鍛造

閉そく鍛造は、近年開発・実用化された革新的な鍛造法です(図6)。複雑な型と特別な操作を必要とするものの、材料の無駄と荷重を軽減できます。閉そく鍛造によって、高精度・高強度な自在継手部品(スパイダーなど)や、等速継手部品(トリポートなど)の量産が可能になりました。

図6:閉そく鍛造の仕組み

図6:閉そく鍛造の仕組み

3:押出

押出は、主に精密鍛造で使われる鍛造法です。前方押出(図7)、後方押出(図8)、前後方押出(図9)、側方押出などの種類があり、パンチの進行方向に対して材料がどの方向に押し出されるかによって分類されています。

図7:前方押出の仕組み

図7:前方押出の仕組み

図8:後方押出の仕組み

図8:後方押出の仕組み

図9:前後方押出の仕組み

図9:前後方押出の仕組み

押出では、材料の周囲はコンテナと呼ばれる型で拘束されています。材料の逃げ場が少ないため、通常圧縮する場合の2~5倍もの高い圧力を必要とします。そのため、高圧に耐えられる高強度な工具や、剛性の高い鍛圧機械を用いる必要があります。ブレーキのシリンダや等速継手用容器部品(アウターレース)の製造には、後方押出や前方押出などの鍛造加工が適しています。

4. 鍛造加工の分類

鍛造加工は、加工する金属の温度によって、半溶融鍛造・熱間鍛造・亜熱間鍛造・温間鍛造・冷間鍛造に分類できます(図10)。今回は、使用頻度の高い熱間鍛造・温間鍛造・冷間鍛造の3つを解説します。

図10:加工金属の温度による鍛造加工の分類

図10:加工金属の温度による鍛造加工の分類

1:熱間鍛造

熱間鍛造は、材料を再結晶温度以上に加熱し、軟化することで、変形能を高めた状態で圧力を加えて成型する鍛造法です。十分な圧縮量を与えて、内部の空孔欠陥をつぶし、粗い鋳造組織を細かくして、材質を改善します。

熱間鍛造は、大型製品や高強度材に適用されます。例えば、直径数メートルの巨大な発電用ローター主軸は、鋳造加工で鋳込んだ材料を熱間自由鍛造で鍛錬します。そうすると、材質が改善され、自重による遠心力でも破壊しない強い主軸に生まれ変わります。また、自動車部品に適用される熱間鍛造では、非調質鋼(焼入れ・焼戻し処理や球状化焼なまし処理などの熱処理が省略可能な特殊鋼)を使った制御鍛造が広く使われています。これにより、後工程の熱処理がなくても、細かい結晶粒の頑丈な製品に仕上げることができます。

熱間鍛造の材料には、圧延材が多く用いられます(超大型の製品を除く)。圧延材は、圧延によって結晶粒が長手方向に伸ばされ、緻密で強い繊維組織が形成されます。しかし、除去加工で切削すると、この繊維組織は分断されてしまいます。一方、鍛造では、繊維組織は分断されず、連続した鍛流線として残ります。そのため、鍛造品は、過酷な繰り返し負荷にも高い耐久性を示します。

2:温間鍛造

温間鍛造は、熱間鍛造と冷間鍛造の中間温度で行う鍛造法です。青熱ぜい性(加熱した炭素鋼が塑性変形し、強度が上昇し、延性が低下する現象)が発生する200~500℃を避け、600~900℃の温度域で行います。日本では1980年代に、自動車のFF化(フロントエンジン・フロントドライブ:車の前方にエンジンを搭載する方式)に伴い、精密で高強度な部品が必要となり、本格的な普及が始まりました。

温間鍛造は、熱間鍛造と同様、酸化スケールが発生せず、冷間鍛造よりも小さい荷重で鍛造できることから、高強度材の精密鍛造に適していると注目を集めました。しかし、加工温度域に適した潤滑剤や型材の開発が難航し、実用化には時間を要しました。

3:冷間鍛造

冷間鍛造は、常温で行う鍛造法です。熱間鍛造と比べて、材料の延性が低く、割れやすいため、鍛造前に材料を軟化する熱処理(焼なまし)を施す必要があります。

冷間鍛造の場合も、熱間鍛造と同様に鍛流線は残り、加工硬化による強化も期待できます。また、材料の表面に厚い酸化膜(酸化スケール)がないため、表面は滑らかに仕上がります。表面を顕微鏡で観察すると、表面粗さの山部がつぶれて滑らかになっていることが分かります。また、粗さの谷部はそのまま残り、鍛造品を使用する際の油だまりとして潤滑を助ける効果が得られます。

いかがでしたか? 今回は、鍛造加工の特徴と種類を解説しました。次回は、鍛造加工工程について取り上げます。お楽しみに!