協働ロボットの登場と近未来のスマートファクトリー:FAの基礎知識6

FAの基礎知識

更新日:2023年4月12日(初回投稿)
著者:神戸大学 名誉教授 白瀬 敬一

前回は、無人機械加工工場の変遷から、製品の生産量に合わせた工場の自動化を解説しました。最終回となる今回は、FAの未来を予感させる協働ロボットの登場と、近未来におけるスマートファクトリーについて紹介します。

1. 協働ロボットの登場

従来の産業用ロボットは、溶接や塗装といったきつい・汚い・危険な3K作業を人に代わって行うことで、工場の自動化に貢献してきました。産業用ロボットは、出力が非常に大きく、万が一人と接触すれば大事故になるため、安全確保のためにロボットを柵で囲み、人の作業スペースと隔離することが求められました(駆動モータの定格出力が80Wを超える産業用ロボットは、安全柵の設置が必要)。

しかし、2013年12月に労働安全衛生規則が改定されたことで、「ロボットメーカー、ユーザーが国際標準化機構(ISO)の定める産業用ロボットの規格に準じた措置を講じる」などの条件を満たしていれば、ロボットを柵で囲うことなく使用できるようになりました。こうして、人とロボットは同じ作業スペースで協力して働くことが可能になり、安全柵の設置が不要なロボットは協働ロボットと呼ばれるようになりました。英語ではCollaborative robot、Cobotと表現されることから、コボットとも呼ばれます。

図1は、従来の産業用ロボットと協働ロボットの特徴を比較したものです。協働ロボットは、組み込まれたセンサで人との接触を検出すると停止するなどの安全対策が講じられています。このことで、人と一緒に多様な作業に携わり、製品の種類や生産量が変動する変種変量生産にも、柔軟に対応することが可能になりました。

図1:従来の産業用ロボットと協働ロボットとの比較(引用:株式会社キーエンス、FAロボット.com)
図1:従来の産業用ロボットと協働ロボットとの比較(引用:株式会社キーエンス、FAロボット.com

また、従来の産業用ロボットは、製品の品種変更に伴う生産ラインの更新や作業のティーチングに多大な時間と労力が必要であり、このことが導入や運用をはばむ一因となっていました。一方、協働ロボットには、人がロボット本体を直接操作して作業をティーチングできるダイレクトティーチング機能があり、導入や運用のための労力が大幅に軽減されています。

前回、ビジョンセンサや立体センサがロボットセルの実現に大きく貢献したことを紹介しました。その後のビジョンセンサや立体センサの性能向上は、より簡便で高精度な製品の認識や位置補正を可能にしています。さらに、従来は現場での手作業が必要だった教示プログラムの修正作業(位置決め誤差を補正するキャリブレーション)が自動化されました。そのため、生産する製品の品種変更に容易に対応できるようになり、ロボットの導入や運用の障壁も低くなりました。

2. 近未来のスマートファクトリー

第3回で、ダイナミックな生産管理を行うスマートファクトリーを紹介しました。オークマ株式会社は、2017年に竣工したDream Site 2(Dream Site - Okuma Smart Factory -)で、このスマートファクトリーの実証に取り組んでいます。ここでは、最新の自動化システムにIoTを活用して、工場全体の最適化を行っています。進化した自動化、フロントローディング、工場全体の最適化に大別して説明します。

・進化した自動化

Dream Site 2では、最新のNC工作機械やロボット、無人搬送車(AGV)が多数設置され、それらは生産計画に合わせて制御されています。扱う加工物の寸法や形状に合わせてロボットのハンドを交換することで(図2)、ロボットによる多様な加工物の着脱が自動化されます(図3)。加工後のバリ取りもロボットによって行われ、素材投入から加工完了まで、人が手を加える必要がなくなりました。また、無人搬送車(AGV)による素材や加工物の搬送も自動化され、1日24時間、週7日間の連続稼働が実現されています。

図2:ロボットのハンド交換(提供:オークマ株式会社)
図2:ロボットのハンド交換(提供:オークマ株式会社)
図3:ロボットによる加工物の着脱(提供:オークマ株式会社)
図3:ロボットによる加工物の着脱(提供:オークマ株式会社)

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