前回は、製品の生産形態に合わせた工場自動化について解説しました。今回は、製品の生産量に対応した自動組立工場を取り上げます。また、1980年代から2000年代にわたる無人機械加工工場の変遷についても紹介します。
1. 無人機械加工工場の変遷
無人機械加工工場の変遷について、第1世代の無人機械加工工場、第2世代の無人機械加工工場、第3世代の無人機械加工工場の3つについて説明します。
・第1世代の無人機械加工工場
1980年代の機械加工工場では、パレットマガジン装置(第4回)を備えたマシニングセンタによる、夜間無人運転が行われました(図1)。これが、第一世代の無人機械加工工場で、日中に作業者がパレットにローディング(取り付け)したワーク(工作物)を、夜間にマシニングセンタが無人で加工していきます。ワークの数と加工時間に左右されるものの、およそ24時間の無人運転が可能でした。

・第2世代の無人機械加工工場
1990年代の機械加工工場では、立体パレットストッカ(自動倉庫)と無人搬送車(AGV)を備えた複数のマシニングセンタやターニングセンタによる、週末の無人運転が行われました(図2)。これが、第2世代の無人機械加工工場で、前回紹介したFMS(Flexible Manufacturing System)の形態になっています。第一世代の無人機械加工工場と比較すると、立体パレットストッカ(自動倉庫)に数多くのパレットを収納できることから、週末から週明けまで、72時間の無人運転が可能でした。しかし、作業者によるワークのローディング(取り付け)とアンローディング(取り外し)が必要であり、しかも、長時間の運転になるほど数多くのパレットと大容量の立体パレットストッカ(自動倉庫)が必要であることから、連続無人運転できる時間は限られていました。

・第3世代の無人機械加工工場
2000年代になると、第2世代の無人機械加工工場と同じくFMSの形態であるものの、ワークのローディングとアンローディングは、作業者に代わってロボットが行います(図3)。これが、第3世代の無人機械加工工場で、ロボットセルと名付けられました。

また、第2世代の無人機械加工工場と同数のパレットと、同容量の立体パレットストッカ(自動倉庫)であっても、図4に示すように、ロボットがワークのローディングとアンローディングを繰り返すことから、長時間の連続無人運転(ファナック株式会社によると720時間)が可能になりました。

ファナック株式会社は、ロボットセルの開発に際して、サーボハンド、ビジョンセンサ、立体センサ、専用の加工治具を準備しました。
サーボハンド:
サーボハンドは、形状や寸法が異なる多様なワークが把持できるよう、サーボモータでハンドの把持位置を制御します(図5)。

ビジョンセンサ:
ビジョンセンサは、バラ置きされたワークのカメラ画像から、サーボハンドで把持するワークを認識します(図6)。

立体センサ:
立体センサは、ワークを把持するロボットとは別のロボットが、立体センサでワーク把持位置を認識し、ローディングの際の設置位置を修正します(図7)。

専用の加工治具:
専用の加工治具は、機械加工の第2工程において、ワークをプルボルト(ワークを加工治具に引き寄せて固定するためのボルト)と油圧クランプ(油圧を用いてプルボルトを固定する装置)を用いて正確に把持します(図8)。ロボットは、ソフトフロート機能(ワーク把持位置のばらつきに左右されず、取り付け時の力を加減しながら位置決めをする機能)により、把持したワークを加工治具に取り付けます。

2. 生産量の変動に対応する自動組立工場
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