生産形態に合わせたFA:FAの基礎知識4

FAの基礎知識

更新日:2023年3月23日(初回投稿)
著者:神戸大学 大学院 工学研究科 機械工学専攻 教授 白瀬 敬一

前回は、第4次産業革命と呼ばれるインダストリー4.0を取り上げて解説しました。今回は、製品の生産形態に合わせた工場自動化について紹介します。

1. 製品の生産量と種類による生産形態の違い

1970年代頃から、マシニングセンタやターニングセンタといった、NC工作機械や産業用ロボットなどのプログラミング可能な自動化設備を統合したFMS(Flexible Manufacturing System)が登場し、多品種製品の混合生産を自動化することが可能になりました。しかし、製造する製品の種類や生産量は企業や工場によって異なるため、種類が多い場合には柔軟性を重視し、生産量が多い場合には生産効率を重視するなど、生産形態を変える必要があります。

製品の生産量と種類に応じた生産形態は、図1に示すように、トランスファーライン(TL)、フレキシブルトランスファーライン(FTL)、フレキシブルマニュファクチャリングシステム(FMS)、フレキシブルマニュファクチャリングセル(FMC)の4つに分類されます。なお、5つめに当たる汎用機とは、作業者が手動で操作する自動化されていない生産設備であり、生産効率は低いものの作業者のスキルによって多彩な製品の生産に対応できます。このことから、汎用機は製品の試作などに特化した、柔軟性が非常に高い生産形態といえます。また、インダストリー4.0が目標としているマス・カスタマイゼーションは、高い生産効率と柔軟性を兼ね備えた全く新しい生産形態といえます。

図1:製品の生産量と種類に応じた生産形態
図1:製品の生産量と種類に応じた生産形態

2. トランスファーライン(TL:Transfer Line)

トランスファーラインとは、生産効率を最優先する、大量生産のための生産形態です。工程分割により作業工程が分割され、自動化された製造設備が一つの作業工程を実行します。トランスファーラインのトランスファーは、移す・渡すという意味です。図2に示すように、搬送ラインに投入された素材は、搬送ライン上を最初の製造設備から次の製造設備へと移され、移動先の製造設備で一つの作業工程が実行され、徐々に完成品となります。

図2:トランスファーライン(TL)の構成(引用:Mikell P. Groover、Fundamentals of Modern manufacturing、PRENTICE HALL INTERNATIONAL、1996、P.916)
図2:トランスファーライン(TL)の構成(引用:Mikell P. Groover、Fundamentals of Modern manufacturing、PRENTICE HALL INTERNATIONAL、1996、P.916)

3. フレキシブルトランスファーライン(FTL:Flexible Transfer Line)

フレキシブルトランスファーラインとは、生産効率を優先しつつ、少品種の製品に対応できる柔軟性を備えた、少品種大量生産のための生産形態です。1種類の製品について大量生産を行うトランスファーラインに対し、2~3種類の製品の大量生産が可能です。自動化された製造設備は、図3に示すように、製品の種類に応じてタレットや工具マガジンから工具を選択します。柔軟性を備える反面、生産効率ではトランスファーラインに及びません。

図3:フレキシブルトランスファーライン(FTL)の構成(トヤマ機械、1980年代後半)(引用:精密工学会編、生産システム便覧、コロナ社、1997、P.693)
図3:フレキシブルトランスファーライン(FTL)の構成(トヤマ機械、1980年代後半)(引用:精密工学会編、生産システム便覧、コロナ社、1997、P.693)

4. フレキシブルマニュファクチャリングシステム(FMS:Flexible Manufacturing System)

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5. フレキシブルマニュファクチャリングセル(FMC:Flexible Manufacturing Cell)

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