前回は、スーパーエンプラのFR(フッ素樹脂)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、LCP(液晶ポリマー)、PAR(ポリアリレート)の概要と用途を説明しました。今回解説するのは、同じくスーパーエンプラのPSU(ポリスルホン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)です。
1. PSU(ポリスルホン)
PSU(ポリスルホン)は、スルホン基(-SO2-)を含み、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)と、ビスフェノールAのナトリウム塩との脱塩重縮合により合成される、非晶性のスーパーエンプラです。1965年にUCC社(現ソルベイスペシャルティポリマーズ社)により開発されました。耐加水分解性、耐薬品性、衛生性に優れ、これらの特徴を生かし、医療分野(医療用生体膜代替品、医療器具)や、食品加工分野(食品容器、調理器部品)で使用されています。また、電気的特性、耐熱性にも優れ、コネクタやプリント基板など電子機器部品にも使用されています。
分野 | 用途例 |
自動車分野 | バッテリーキャップ、ヒューズ、自動水栓センサ部品、イグニッション部品 |
電気・電子分野 | コネクタ、コイルボビン、ブッシング、コンデンサフィルム、スイッチ、ICキャリア、CDの光ピックアップレンズ、複写機部品、小型モータケースなど |
家庭用品分野 | 電子レンジ用食器・部品、コーヒーメーカー部品、加湿器部品、アイロン部品、複写機部品、蛇口カートリッジ、フードサービストレイ |
医療機器分野 | 外科医用器具、歯科治療用器具、コンタクトレンズ殺菌用器具、メディカルトレイ、医療器具(微細密封流路)、人工腎臓(ケース、中空糸)、フロースイッチ、内視鏡部品 |
各種機械分野 | 熱水配管、ポンプ部品、各種配管フィッティング、各種機器用基材、ろ過器逆浸透膜 |
その他 | 実験動物飼育箱、水処理用メンブレン、航空機内装部品 |
PSU(ポリスルホン)の用途例と採用理由
・自動センサ部品(自動車)
PSU(ポリスルホン)の耐熱水性、透明性などが生かされています。
・コーヒーメーカー部品(家電製品)
PSU(ポリスルホン)の透明性、耐加水分解性、高強度、耐熱水性、耐スケール付着性、食品衛生性などが生かされています。軽量で割れにくいコーヒーポットにも使用されています。
・人工腎臓の透析膜(医療)
PSU(ポリスルホン)は、溶液状態での加工が可能なため、精密ろ過や限外ろ過に使用する多孔性ファイバーを製造できます。低分子量たん白質など、低分子量物質の除去が可能で、生体適合性にも優れ、血液浄化のための透析膜などに使用されます。このとき、生体適合性の向上を目的に、PSUにはビタミンEがコーティングされます。
・実験動物飼育箱(医療)
PSU(ポリスルホン)の透明性、耐薬品性、耐衝撃性などが生かされています。高頻度の強アルカリ性洗浄剤を用いた洗浄や、蒸気滅菌処理(少なくとも100回のサイクル)など、過酷な条件に耐えることができます。
・ポンプ部品(一般機械)
熱水などの製品搬送に用いられる部品です。PSU(ポリスルホン)の強じん性と耐クリープ性、卓越した耐加水分解性、寸法安定性などが生かされています。
日本のPSU(ポリスルホン)の供給メーカー
日本のPSU(ポリスルホン)の供給メーカーは、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン、BASFジャパンの2社です。
2. PES(ポリエーテルスルホン)
PES(ポリエーテルスルホン)は、エーテル基(-O-)とスルホン基(-SO2-)を含み、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)と、ビスフェノールS(Bis-S)との脱塩重縮合により合成される、非晶性のスーパーエンプラです。1970年代に英国のICI社(現ビクトレックス社)により開発されました。機械的性質や、耐熱水性、耐薬品性、難燃性などの化学的性質、さらに成形加工性にも優れています。これらの特徴を生かして、電気・電子部品、自動車、航空機、医療、食品、塗料など、広い分野で使用されています。
分野 | 用途例 |
電気・電子分野 | コイルボビン、コネクタ、LCDベースフィルム、バーンインソケット、ランプケース、リレー、スイッチ、ヒューズケース、センサケース、ICトレイ、プリント基板 |
自動車分野 | ベアリングリテーナ、スラストワッシャー、ランプリフレクタ、ブレーキシャフト用ブッシュ、ギアボックスのベアリングリテー |
熱水関係 | 温水ポンプ部品、防蝕電極絶縁材、スチーム用バルブジョイント、温度センサセル |
医療・食品 | 医科・歯科用器具、コンタクトレンズ用殺菌容器、注射器シリンジ、食品工業用バルブ |
その他分野 | 複写機部品、航空機部品、航空機・機内食用トレイ・食器、複写機・カメラ部品、ベアリングリテーナ、光ピックアップ部品、OA機器摺動部品、メンブレンフィルタ |
PES(ポリエーテルスルホン)の用途例と採用理由
・ヘッドランプレフリクタ (自動車)
光源が高温となるため、PES(ポリエーテルスルホン)の高耐熱性、高寸法精度が生かされた部品です。PESを使用することで、薄肉軽量化やダイレクト蒸着処理が可能となります。PES以外のプラスチック素材では、熱硬化性樹脂のBMC(バルクモールディングコンパウンド)などが使用されます。
・バーンインソケット(電気・電子)
バーンイン試験(電子機器の検体を、温度と電圧で加熱し劣化を加速させ、初期不良を事前に取り除く試験)に使用するソケットです。検体には、半導体、LCD、メモリモジュールなどがあります。PES(ポリエーテルスルホン)の優れた耐熱性、寸法精度、寸法安定性などが生かされています。耐熱性の要求に応じ、PEI(ポリエーテルイミド)やPAI(ポリアミドイミド)、TPI(熱可塑性ポリイミド)なども使用されています。
・ベアリングリテーナ、ギア(機械部品)
PES(ポリエーテルスルホン)の耐熱性、寸法安定性、機械的強度、耐クリープ性などが生かされています。しゅう動性グレードが使用されています。
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3. PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)
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