前回は、配線設備について説明しました。今回は、動力設備を解説します。動力設備は、動力を利用するための設備です。動力とは運動エネルギーであり、モータの使用によって電気エネルギーから変換できます。つまり、動力設備とはモータを使う設備だと考えていいでしょう。動力設備は、さまざまな動力機器と動力盤から構成されます。ここでは、代表的な動力機器である空調設備と搬送設備(エレベータ)を取り上げます。また、動力設備に共通する機器であるモータとインバータについても説明します。
1. 動力機器
動力機器とは、三相200Vや三相400Vを電源として三相モータを使う機器のことを指します。低圧電力において、単相の電力を電灯、三相の電力を動力と通称しています。これは、家電などの小型機器以外では三相モータを使用して動力を得ていることからきています。低圧の動力機器における電源には、三相200Vと三相400Vがあります。動力設備は、この2種類の三相電源を必要とする動力機器に電力を供給する設備です。動力機器には、図1に示すようなさまざまなものがあります。このうち大容量のヒータなどの場合、モータは使わないものの三相の大電力を使用するため、動力機器と考えます。
動力盤は、動力機器に電力を供給するだけでなく、排水ポンプの液面制御、ファンの発停(始動・停止)、故障警報などの自動制御の機能があり、さらに盤面で操作・監視できるようにもなっています。
2. 空調設備
空調設備は、空気調和を行う設備です。空調とは、単に冷暖房だけでなく、温度や湿度の他、気流や空気の清浄度を整える機能を含みます。空調設備では、空気や水に熱を供給する源である熱源が必要です。熱源には、冷凍機やボイラなどがあります。ヒートポンプは、1台で冷熱と温熱を作ることのできる熱源です。空調方式は、熱源をどこに置くかによって中央熱源方式と個別分散熱源方式に分けることができます。
・中央熱源方式
中央熱源方式とは、熱源を機械室などに集約して空調を行う方式です。熱源から空調する場所までの熱輸送が必要です。冷温風をダクトで送る方式と、冷温水を配管で送る方式があります。水で熱輸送する場合、ファンコイルユニットで空気の温調をします。
・個別分散熱源方式
個別分散熱源方式とは、熱源を分散させて、各階あるいはゾーンごとに空調を行う方式です。いわゆるエアコンです。パッケージエアコンやマルチエアコンは、室外機と室内機を接続することによって、その間を冷媒により熱輸送しています。この方式は、機器単体で個別に制御できることが特徴です。
熱源は、空調設備で最も消費電力が大きいところです。代表的な熱源として、冷凍機のしくみを紹介します。冷凍機の方式の代表的なものは蒸気圧縮式冷凍機と呼ばれる、圧縮機を使った冷凍機です。この冷凍機は、冷凍サイクルにより熱を移動させます。冷凍サイクルとは、冷媒を循環させることにより熱のやり取りを行うしくみです。図2に、蒸気圧縮式冷凍機の冷凍サイクルを示します。
- 1:圧縮機で圧縮することにより、冷媒を高温高圧の気体にする。
- 2:凝縮器と呼ぶ熱交換機で冷媒を冷却し、高圧低温の液体に変化させる。このとき外部に放熱する(暖房)。
- 3:膨張弁で冷媒の圧力を下げ、低温低圧の液体に変化させる。
- 4:蒸発器と呼ぶ熱交換機で冷媒を気化させる。このとき、気化熱を外部から吸熱する(冷房)。
圧縮機にはレシプロ式やターボ式があり、いずれもモータで駆動されます。また、最近では、モータをインバータで制御することが多くなっています。空調設備で最も消費電力が大きいのは、この圧縮機のモータです。熱源にはこの他、ガスを燃焼させて水溶液の濃度を変化させて熱をやり取りする吸収式冷凍機、コージェネ(コージェネレーション:熱電併給)などがあります。
空調設備には、熱源の他にクーリングタワーやファン、ポンプなどがあります。いずれもモータで駆動されています。空調設備では数多くのモータが使われ、それぞれ個別に制御されています。個別分散熱源方式の場合、個別に空調機を制御できます。最近は集中制御、監視システムにより建物全体をまとめて監視制御することもあります。
3. 搬送設備
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4. モータとインバータ
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