地震のリスクコントロール:地震リスクマネジメントの基礎知識7

地震リスクマネジメントの基礎知識

更新日:2017年5月26日(初回投稿)
著者:防衛大学校 システム工学群 建設環境工学科 教授 矢代 晴実

前回は、地震リスク定量化による地震リスク曲線の求め方と、その見方について紹介しました。第3回で述べたとおり、リスクの処理は「リスクコントロール」と「リスクファイナンス」に分けられます。リスクは「発生確率(P)×影響度(C)」で表すことができます。しかし、地震の発生頻度や確率はコントロールできないため、その影響をいかに小さくするかが、地震のリスク処理の主眼となります。今回は、地震のリスクコントロールについて紹介します。

1. リスクコントロール

「リスクコントロール」とは、被害の発生を防止したり、被害を最小限に抑えたりするための方策です。一例として、施設の耐震性向上対策や、事業継続計画(BCP:Business Continuity Planning)などの策定が該当します。

地震の企業への影響は、直接的な物的損害にとどまりません。例えば、近年発生した大地震では、自動車メーカーの生産が大きな影響を受けました。これはもともと、下請けの自動車部品メーカーが被災して操業が中断されたことが一因となっています。また、地震でサプライチェーンが寸断し、さまざまな事業が深刻な打撃を受けました。

上記を踏まえて、地震リスクの低減は施設の耐震化だけでなく、非常時の優先リソース配分や取引先との互助体制の構築など、いわゆるレジリエンシー(Resiliency:弾力性のある回復力)の強化が、より重要視されています。これらの対応策を、地震リスクマネジメントに導入して活用していくのです。

2. 建物・施設の耐震性能向上と事業継続計画(BCP)

レジリエンシー強化の大前提は、重要拠点の耐震性を向上することです。重要拠点とは、企業の場合は本社機能を有する所やデータの収集処理施設など、大地震が発生しても事業継続を求められる中枢場所(建物)です。また、交通インフラや病院など公共機関のほか、生活必需品の製造・物流拠点なども、重要拠点となります。これらの施設は、建築基準法などで定められた最低限の耐震性よりも、目標耐震性能を高く設定することが望まれます。

ここで、日本建築学会が作成した耐震メニューの概念図に、耐震等級別の耐震性能を追記したものを紹介しましょう(図1)。図の横軸は想定する地震動レベル、縦軸は想定地震に対する許容被害ランクを表しています。地域ごとに想定地震動レベルは異なっても、免震構造物や超高層建築物は建築基準法の最低耐震性能より、優れた耐震性能を持っていることが分かります。日本では病院やデータセンターなど、大地震発生時も機能途絶を最小限にすべき重要施設など各拠点で、免震構造の採用が増加しています。今後も、施設の重要性に応じて、耐震性能向上によるリスク低減策は普及していくでしょう。

図1:建築物の耐震等級と地震動レベルの関係

図1:建築物の耐震等級と地震動レベルの関係(引用:矢代晴実、震災工学、コロナ社、2016年、P.143)

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