地震リスクの定量化:地震リスクマネジメントの基礎知識6

地震リスクマネジメントの基礎知識

更新日:2017年5月12日(初回投稿)
著者:防衛大学校 システム工学群 建設環境工学科 教授 矢代 晴実

前回は、地震リスクマネジメントでの、対象地点の地震ハザードの予測を紹介しました。今回は、対象地点における施設の地震被害予測方法を解説します。

1. 地震による被害の定量化

地震リスクマネジメントでは、施設の物理的損害、機能停止に伴う間接的損害、第三者への波及的損害などのリスクを総合的に定量評価します。この定量評価により、効果的な対策への意思決定ができます。地震リスクマネジメントでのリスクは、施設の復旧金額や期間などを指標とした施設リスクを示します。これは、地震対策に伴うコストと、優先順位などの対策計画(耐震補強など)を決定する際の客観的指標として用いられます。今回は、金額ベースを指標とした地震損失予測手法について述べます。なぜなら、地震リスクは企業経営者などもすぐ使えるように、金額指標に換算して評価することが多いためです。対象施設が地震により受けるリスクを工学的に分析し、災害により発生するリスクの大きさを分かりやすいかたちで示します。また、このリスク指標を復旧日数として評価することで、地震時事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)などにも活用できます。

地震損失予測では、評価対象施設の地震動特性を分析し「地震動の大きさ」と「損傷発生確率」の関係を示す地震損傷曲線(Seismic Fragility Curve)を作成します。図1に地震損傷曲線の一例を示します。

図1:地震損傷度曲線の例

図1:地震損傷度曲線の例

横軸の地震動指標は地震の大きさを示し、地表面最大加速度(PGA:Peak Ground Acceleration)、地表面最大速度(PGV:Peak Ground Velocity)、計測震度、震度階級などを用います。地震損傷曲線は、大破、中破、小破などの被害レベルごとに発生確率を求めることができます。地震損失曲線から施設の損失率(損害額/施設の再調達価格)を予測し、地震ロス関数(Seismic Loss Function)と呼ばれる「地震動の大きさ」と「施設の損失率」の関係を示したものを作成します。図2に地震ロス関数の一例を示します。

図2:地震ロス関数の例

図2:地震ロス関数の例

地震ロス関数は、地震動を条件とした損失分布の平均値を取ったものです。縦軸は、損失率だけでなく復旧日数なども使用できます。

地震損傷曲線を求めるには、地震による施設などの損傷形態を分類する必要があります。損傷形態を分類するには、イベントツリー解析(ETA:Event Tree Analysis)を使います。イベントツリー解析は、施設損傷を発生要因に分解し損傷を分類する方法です。図3に示すように「地盤の液状化が発生しない」に続き「建物の倒壊」が発生する損傷事象は「地盤の液状化はないが建物倒壊が発生する」という事象に分類されます。そして、その形態の発生確率と損害の大きさでリスクを算出します。

図3:地震被害イベントツリー

図3:地震被害イベントツリー

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2. 地震リスク曲線による定量化

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