前回は、二元配置法において交互作用が存在するときの解析方法を紹介しました。今回は、交互作用の考え方を説明します。また、交互作用が存在しないときの二元配置法を取り上げ、最適水準における推定や予測の方法を紹介します。3つ以上の因子を同時に取り上げる多元配置法への拡張についても解説します。
1. 交互作用
交互作用とは、2つの因子が組み合わさることで現れる相乗効果のことをいいます。前回、処理温度と加工方法の2つを因子に取り上げ、ある樹脂を加工する際の、粘着力の測定実験を行いました(図1の左図)。B1(従来法)では、処理温度が高くなるにつれて粘着力が下がり、B2(新工法)ではA2(130℃)のときに最も粘着力が高くなりました。つまり、工法によって最適な処理温度が変わります。これが交互作用です。
交互作用がなければ、図1の右図のようにグラフの折れ線はほぼ平行になります。工法によらず、処理温度が高くなると粘着力は下がります。グラフ化することで、交互作用の有無や強さを、直感的に把握できるようになります。
交互作用を適切に把握することは、とても重要です。そのためには、実験を繰り返し、誤差を見積もる必要があります。繰り返し実験がなければ誤差の大きさが分からないため、水準間の変動なのか、誤差による変動なのかを区別できません。誤差の大きさが分かることで、交互作用と誤差の分離が可能になります。
2. 交互作用のプーリング
要因配置実験では、要因効果があると考えられる因子を取り上げ、実験を行います。そのため、主効果は存在していると考えます。一方、交互作用については、要因効果があるかどうかははっきりとしないことが多いため、効果の有無を確認することになります。交互作用がなければ、それぞれの因子を独立に考えます。交互作用があれば、2つの因子は別々にではなく、組み合わせで考える必要が生じます。
分散分析の検定結果において、有意であれば要因効果があるといえます。しかし、有意でないということは、要因効果があるとはいえないということで、要因効果がないわけではありません。例えば、有意水準5%を基準にして効果の有無を判断すると、実際には効果があるにもかかわらず、ないと判断してしまう誤り(第2種の過誤)が生じる確率が高くなってしまいます。
そこで、有無の判断をする基準を約20%にまで下げます。この基準を適用しやすくする目安として、F値が2以下の要因は効果がないと判断します。ただし、これはあくまでも目安なので、1.99だから効果がないと見なすのではなく、技術的な見地による判断が求められることもあります。
効果がないと判断された要因は、誤差と見なします。そのとき、その要因の平方和と自由度は、誤差平方和と誤差自由度に加えて、誤差を再計算します。これを、プーリングといいます。プーリングによって誤差分散の値が変わるため、改めて分散分析表を作成します。
3. 繰り返しのない二元配置法
2つの因子を取り上げるとき、技術的にもそれらに交互作用が存在しないと考えられるのであれば、主効果だけを検出できるような二元配置実験を行うこともあります。これが、繰り返しのない二元配置法です。繰り返しをしないため、実験回数は半分以下にまで減らすことができます。
繰り返しのない二元配置法の例として、処理温度と配合比率を取り上げ、粘着力に影響しているかを調べてみます。この場合、処理温度と配合比率には交互作用はないと考えられています。処理温度と配合比率にそれぞれ3水準を設定し、9通りの水準を組み合わせて1回ずつ実験を行ったところ、表1のデータが得られました。
B1 | B2 | B3 | 合計 | 平均 | |
---|---|---|---|---|---|
A1 (120℃) | 40 | 42 | 47 | 129 | 43.0 |
A2 (130℃) | 38 | 40 | 44 | 122 | 40.7 |
A3 (140℃) | 38 | 39 | 41 | 118 | 39.3 |
合計 | 116 | 121 | 132 | 369 | |
平均 | 38.7 | 40.3 | 44.0 | 41.0 |
繰り返しがないため、交互作用の平方和は計算できません。公式通りに計算すると、誤差平方和と一致します。総平方和STは、処理温度(A)によるばらつきを表す要因平方和SAと、配合比率(B)によるばらつきを表す要因平方和SB、および誤差平方和SEに分解されます。この数値例では、次の式のように計算されます。
これらの計算結果を分散分析表にまとめました(表2)。処理温度の主効果A、加工方法の主効果Bはいずれも有意となり、粘着力に影響を及ぼしていることが分かります。
要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F値 | P値 | F境界値 |
---|---|---|---|---|---|---|
A | 20.67 | 2 | 10.33 | 8.86 | 0.034 | 6.94 |
B | 34.67 | 2 | 17.33 | 14.9 | 0.014 | 6.94 |
E | 4.66 | 4 | 1.17 | |||
T | 60.00 | 8 |
ここまでの計算をExcelで行うには、分析ツールで「分散分析:繰り返しのない二元配置」を選び、入力範囲でデータを指定します。繰り返しデータは縦方向に入れ、「1標本あたりの行数」で繰り返し数を入れます。最後に「出力先」を指定して「OK」をクリックすれば完了です。
分散分析表での、要因を表す用語が少し異なっていることに注意してください。標本は行方向に入れた因子A、列は列方向に入れた因子Bを指します。また、繰り返し誤差は誤差を表しています。
4. 最適水準における推定と予測
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5. 三元配置法
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