これからのダム:ダムの基礎知識6

ダムの基礎知識

更新日:2022年2月2日(初回投稿)
著者:法政大学 デザイン工学部 都市環境デザイン工学科 教授 溝渕 利明

前回は、ダムの施工について解説しました。昨今の異常気象によって激甚(げきじん)化する洪水被害に対し、ダムの再生といわれるリニューアル工事が始まっています。また、ダムとダム湖周辺を、観光資源や地域活性化の起爆剤として利用したさまざまな施設や企画、イベントも行われるようになっています。今回は最終回です。ダムの再生やダムの観光資源としての価値など、これからのダムのあり方について紹介していきます。

1. ダムの再生

ダムの再生とは、既存ダムの洪水調整能力強化などの機能向上を目指したリニューアル工事をいいます。近年、異常気象による集中豪雨やゲリラ豪雨などによる河川の氾濫が全国で頻発しており、異常出水による堤防の決壊など、被害も年々増加しています。他方、ダムの洪水調整機能の強化を目的に、利水ダムでの事前放流に対するガイドラインが国土交通省から打ち出されています。しかしながら、今後ますます増加が予想される洪水被害への対策としては、これだけでは不十分です。とはいえ、今から数10年もかけてダムの新設を行う時間的余裕はありません。そこで、既設ダムを有効活用するダムのリニューアル工事が進められています。

ダムの貯水量を増加させる方法としては、ダムの嵩(かさ)上げ工事があります(図1)。ダムの嵩上げとは、既設ダムの下流側に新たにコンクリートなどを積み上げていき、ダムをさらに高くするものです。この嵩上げ工事では、既設ダムと新設する部位の一体性を確保することが重要であるため、経年劣化が想定される既設ダム下流面の表面部分を切削し、新設部分との一体化を図るようにしています。

図1:ダムの嵩上げ工事「新桂沢ダム」(現場にて撮影)

図1:ダムの嵩上げ工事「新桂沢ダム」(現場にて撮影)

この他、ダムの洪水調整能力を高める工事として、既設ダムに穴を開けて新たな放流施設の設置を行うものもあります。ほとんどの場合、既設ダムを運用しながらの工事となるため、放流施設が貫通した際に掘削孔に水が流入しないよう、上流側に仮設の締切設備を設けています。また、今後予想される大規模地震に備えた既存ダムの耐震補強工事も各所で行われています。新設ダムの建設が減少していく中、ダムの再生は今後ますます重要になっていくといえます。

2. ダムと観光

ダムの建設は、地元に大きな経済効果をもたらします。ダム建設のための付け替え道路工事などは、多くの場合、地元の建設会社が行います。ダム本体の工事でも、施工会社は多くの場合JV(共同企業体)となり、ほとんどの場合そこには地元の建設会社が加わっています。ダム本体工事の費用は、数100億円になる場合があり、地元の建設会社にとって大きな収益になります。しかし、これらはダム建設中の経済効果に限られるため、ダム完成後にはダムを中心とした観光事業などを考えていく必要があります。

ダムが完成することによって、上流側には水を満々と湛(たた)えた湖ができます。ダム周辺の四季折々の風景は、観光ガイドに掲載されるほどです(図2)。全国各地にあるこのようなダム湖は、絶好の観光資源といえます。実際、ダムの建設によってできる人造湖には観光名所となっているところが多く、またほとんどの場合、湖にはその地域に由来する名前が付けられているので、過疎化が進む地域を活性化する起爆剤となっているケースも見られます。ダム湖の周辺には、観光資源となるキャンプ場やホテル、さらにスポーツ施設やアスレチックなどのリクリエーションが楽しめる総合運動場のような施設が造られることもあります。ダムの管理施設自体がダムやその地域の資料館になっていたり、ダムカード(ダムを訪問した観光客などに配布されるカード)がもらえる施設になっていることもあります。ダム周辺でしか食べられない御当地ダムカレーなどの商品も、全国各地で評判になっています。

図2:秋の黒部峡谷、新山彦橋とトロッコ電車

図2:秋の黒部峡谷、新山彦橋とトロッコ電車

最近では、ダム施設を体感できるツアーも登場しています。例えば、ダムの中の監査廊を見学したり、洪水吐(こうずいばき)を間近で見られたりといったものです。さらに、ダム湖を一周する遊覧船や水陸両用車を使って、ダムの周囲からダム湖に入って周遊するアトラクションのようなダムツアーもあります(図3)。ダム周辺で、四季折々に地域主催のイベントを開催するところもあります。ダムとダム貯水池までのアクセス道路が完備しているため、家族連れでの小旅行には打ってつけの場所ともいえます。もちろん、ダムは観光のために造られているわけではないものの、今後は、観光を目的に利用することも大事だと思っています。

図3:八ッ場ダムと水陸両用バス

図3:八ッ場ダムと水陸両用バス

3. これからのダム

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