ダムの施工:ダムの基礎知識5

ダムの基礎知識

更新日:2022年12月28日(初回投稿)
著者:法政大学 デザイン工学部 都市環境デザイン工学科 教授 溝渕 利明

前回は、ダム構造の3原則や形式、使用材料などダムの構造について解説しました。今回は、ダムの施工を紹介します。ダムの形状や施工法は、使用する材料によって大きく異なります。コンクリートを使用するコンクリートダム、天然の材料を組み合わせて施工するフィルダム、その他、現地発生材に水とセメントとの混合物で構築するCSG工法についても紹介します。

1. コンクリートダムの施工

コンクリートダムの施工には、従来から行われている柱状工法、拡張レア工法およびRCD工法があります。この3つについて解説します。

・柱状工法

柱状工法(ブロック施工)は、コンクリートダムの代表的な施工法です。建設するダムを左右岸方向にブロック分けし、さらに上下流に長い場合は、上下流方向もブロックに分けて施工します。近代ダムの施工法を確立したとされる「フーバーダム」(アメリカ)(図1)では、コンクリートブロックの施工を1day1feet(コンクリートを1日1feetずつ打つ)とし、幅と長さは15m以内としています。実際の施工に当てはめると、1リフト(1回で施工するコンクリートの高さ)を2mとした場合、1feetは約30cmなので約7日間で打継ぐ計算になります。つまり、1リフトのコンクリート打込みを約1週間間隔で行い、1ブロックの幅と長さが15mとして施工することが理想的であるということになります。

図1:ブロック施工の「フーバーダム」

図1:ブロック施工の「フーバーダム」

1ブロックの幅と長さを15m以上にしてしまうと、セメントの水和熱に伴う温度応力によって、ブロックの間に温度ひび割れが生じる可能性が高くなります。このため、リフトの打継ぎ間隔を1週間程度とすることで、次リフトと1週間前に打ち込まれたリフトとの剛性の差が大きくならず、すぐ下のリフトの拘束による温度によるひび割れの発生も少なくなります。これらは、上述したフーバーダムの建設時に検討を尽くした結果であり、さらにその後のコンクリートダム建設での経験値も踏まえて、現在コンクリートダムで柱状工法を行う場合の規範となっています。また、この柱状工法では、大きな水圧がかかった時にブロック間にずれが生じないよう、ブロックの上下流方向の横継目にせん断キーと呼ばれる凸凹を付けます。

・拡張レヤ(ECLM)工法

拡張レヤ工法(ECLM工法:Extended Layer Construction Method、面状工法)は、1回に打ち込むリフトを柱状施工よりも薄く(1m以下)し、ジョイントグラウトやパイプクーリングなども行わず、できるだけ継目を設けることなく複数のブロックをまとめて施工するものです(図2)。コンクリートダムの施工では、これまで柱状工法が主流でした。しかし、柱状工法ではジョイントグラウトやパイプクーリングなどを堤体内に組み込み、垂直方向の継目にはせん断キーを設ける必要があるため、省力化や施工の合理化を目指してそれらを行わないで済む拡張レヤ工法が開発されました。

図2:拡張レヤ工法によって施工された「浄土寺川ダム」(ブロック施工よりも大きな範囲を一度に打設できる)

図2:拡張レヤ工法によって施工された「浄土寺川ダム」94(ブロック施工よりも大きな範囲を一度に打設できる)

拡張レヤ工法は、従来の柱状工法に比べて、埋設物の設置や型枠造りの低減などで施工の効率化が図られ、短期間でのダム建設が可能となりました。また、柱状工法ではブロック間に8リフトまでの段差(例えば、1リフトが1.5mの高さの場合、最大で12m)が許容されている反面、施工中の転落などの危険性があります。一方、拡張レヤ工法では、複数のブロックをまとめて施工するために柱状工法よりも段差が付きにくく、安全性が高くなります。さらに、施工する場所が柱状工法よりも広くなるので、大型機械の投入も容易になります。

ただし、施工するコンクリートは柱状工法で用いているものと同じなので、複数のブロックを薄く施工すると、温度変化に伴って起こる温度ひび割れが生じやすくなります。そこで、拡張レヤ工法では、振動目地切機と呼ばれる機械でブロック間の目地(横継目)を15mごとに強制的に設けるようにしています。

・RCD工法

RCD(Roller Compacted Dam-concrete)工法は、上記の拡張レヤ工法に対してさらに施工効率を上げるための工法が検討され、コンクリート中のセメントを極力少なくし、超硬練りコンクリートを用いた工法としたものです(図3)。

図3:RCD工法の施工状況「八ッ場ダム」

図3:RCD工法の施工状況「八ッ場ダム」

RCD工法は1970年代後半から導入され、従来の柱状工法で10年かかるといわれていたダム本体の施工を、その半分以下の工期で実現できるようになりました。RCD工法は、拡張レヤ工法と同様に面状施工で行われます。ただし、大きく異なる点として、重力式ダムで堤体内部に用いる内部コンクリートに、セメントと水を必要最小限まで低減した超硬練りコンクリートを用い、ブルドーザによる敷均(しきなら)しと振動ローラによる転圧によって締固めを行うことが挙げられます。RCD工法は、1980年代以降の大規模な重力式ダムに次々と用いられ、現在ではコンクリートダム施工法の主流となっています。さらに、RCD工法の進化形として、内部コンクリートを先行させ外部コンクリートを後から施工する巡航RCD工法が開発されています。

2. フィルダムの施工

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3. 新しいダムの施工法・CSG工法

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