伝達関数を利用した動きのデザイン:制御工学の基礎知識4

制御工学の基礎知識

更新日:2022年2月16日(初回投稿)
著者:大阪大学 大学院 工学研究科 准教授 南 裕樹

前回は、制御対象のステップ応答と周波数応答を紹介しました。今回は、それらの応答を制御の力で望ましいものにする「動きのデザイン」について解説します。制御対象の動きのデザインでは、設計仕様を明確にしなくてはいけません。単に安定化するだけではなく、応答を速くしたい、振動を小さくしたいといった目標を達成するために、指標を定めて定量的に評価します。ここでは、時間応答における評価指標と、制御対象の動きを変えるためによく用いられるPID制御則を解説します。また、PID制御則の改良版や、他の制御則も紹介します。

1. デザインのための仕様

本稿では、ある制御対象に対して、図1のようなフィードバック制御系を構築し、制御対象の動きをデザインすることを考えます。具体的に、制御対象の出力yを、目標とする値rに近づけるための制御器Kを設計します。この場合、出力yを目標値rに近づけるといっても、速さを重視するのか、精度を重視するのか、安全性を重視するのかなど、その評価はさまざまです。そのため、制御系設計では、設計者の感覚に頼るのではなく、定量的な評価が可能な仕様を考えます。以下では、その基礎となる時間応答における評価指標を説明します。

図1:時間応答における評価指標

図1:時間応答における評価指標

図1に示すような時間応答を考えてみましょう。これは、フィードバック制御系における目標値rから、出力yへの伝達関数Gyrのステップ応答です。応答波形で振動している部分を過渡特性といい、十分時間が経過して振動が収まった部分を定常特性といいます。制御対象の出力を、目標値にできるだけ速く、かつ正確に追従させることを目標としたとき、過渡特性で「できるだけ速く」という仕様の達成度合いを評価し、定常特性で「正確に」という仕様の達成度合いを評価します。

過渡特性を定量的に評価するものとして、立ち上がり時間、整定時間、行き過ぎ時間、最大行き過ぎ量(オーバーシュート)があります。立ち上がり時間は、ステップ応答が定常値yの10%から90%に達するまでの時間です。整定時間は、ステップ応答が定常値の±ε%の範囲に落ち着くまでに要する時間です(ε=2やε=5がよく用いられます)。行き過ぎ時間は、最大行き過ぎ量Amaxに達するまでに要する時間です。最大行き過ぎ量は、ステップ応答が定常値を超える場合における最大値ymaxと定常値の差のことで、ymax–yの値です。さらに、定常特性を定量的に評価するものが定常偏差です。これは、目標値と定常値の差r-yを表します。

ところで、時間応答は伝達関数の極と対応しています(図2)。極は複素数です。そして、極の実部が負であれば安定(ステップ応答はある値に収束する)で、負でなければ不安定(発散する)です。極が純虚数の場合は、持続振動となります。さらに、実部の絶対値が大きいほど、収束や発散のスピードは速くなります。また、極の虚部の大きさも応答に影響しており、虚部が大きくなるほど振動的な応答になります。従って、時間応答の評価指標をベースとする仕様を考える代わりに、極の位置をベースとする仕様を考えることもあります。

図2:極の位置と時間応答の関係

図2:極の位置と時間応答の関係

2. PID制御

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3. さまざまな制御則

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