結露で影響を受ける性能:結露対策の基礎知識4

結露対策の基礎知識

更新日:2022年1月21日(初回投稿)
著者:大阪工業大学 元准教授 佐藤 眞奈美

前回は、結露が引き起こすさまざまな現象を紹介しました。今回は、湿害の診断の具体例(実害の発生要因、過程、材料など)を解説します。

1. 湿害の診断

水分(気体、液体)が建物の部材・構成材料にもたらす現象と、その発生要因を追うためには、それぞれの関連性を検討する必要があります。日本建築学会環境基準AIJE SH0003-2021(以下「環境基準」と呼びます)では、3軸の関連性により、現象の診断と評価、原因究明、対策、または予防、設計・施工での対策が立てられる概念を示しています(図1)。

図1:湿害の診断方法(環境基準)

図1:湿害の診断方法(環境基準)

図1の左から、青い面は現象と部材・構成材料とで発生した現象の読み取りを可能とし、その結果、現象の診断と評価ができる概念を示しています。赤い面は現象と原因とで原因究明と対策や予防ができる概念を示します。緑の面は原因と部材・構成材料とで予防のための設計や施工での対策ができることを表しています。

本連載の第3回では、環境基準を参照し、結露が原因で発生する現象(凝縮水、膨張、収縮、変形)を紹介しました。これらの現象が発生した部位や材料に、許容できない実害をもたらすものが湿害です。そのため、結露対策とは湿害対策であるといえるでしょう。

湿害がもたらす建物の機能・性能への影響には、構造耐力や部材機能の低下、意匠(いしょう)の劣化などが挙げられます。以下に詳しく解説します。

・構造耐力の低下

構造耐力の低下とは、建物が設計したとおりの空間形状を安全に維持することができなくなり、崩壊につながる恐れがあることを指します。

建物の代表的な構造部材は、木材や鋼材です。木材が腐朽したり、鋼材が錆(さ)びたりすると、建物の形状が保てなくなります。しかし、通常の生活では、構造耐力が低下していることに気付かずに暮らしていることもあります。

そもそも建物は構造設計基準に従い、想定される災害に耐えられるように設計がなされています。災害のエネルギーが想定内であったにもかかわらず建物が倒壊し、検証の結果、倒壊の原因が湿害による構造耐力の低下であったというニュースはよく耳にします。

・部材機能の低下

部材機能には、防湿、防水、断熱、気密、遮音、電気絶縁などがあります。部材の選択は、設計上、必要な性能が発揮されることを想定して行われます。水分が原因となり、これらの性能が意図したレベルを保てなければ、湿害と判断されます。

例えば、断熱材は微細な空隙(くうげき)に空気を含むことで熱の伝わりを小さくした材料です。この断熱材の空隙が液水で満たされると、水は空気の約20倍も熱を伝えやすいため、断熱材の断熱性能は失われます。一般建材も同様で、結露により、材料内の含水率が増加すると、建物の断熱性は失われ、湿害となります。

・意匠の劣化

意匠の劣化とは、建物の内外装仕上げに発生する湿害です。水分によって、建物の内外装仕上げが設計者の意図した状態でなくなり、元に戻らないことを劣化といいます。これも、対策すべき湿害です。

・各種機器の機能低下

建物には、電気・通信設備、空調設備、給排水設備など、さまざまな機器が設置されています。結露によって生じる、これらの機器の機能低下、および障害も湿害といえます。

コンセントボックス内の結露は、漏電、ショートなどを引き起こします。こうした事故が起きる建物では、安全な暮らしは営めず、対策が必要です。

・収蔵物の財産価値の減少

収蔵物の財産価値の減少も湿害といえます。クローゼットに保管していた衣類が、結露の凝縮水やカビのため使用できなくなる例があります。

・健康被害

材料や物ばかりでなく、人の健康を損ねる現象の数々も湿害といえます。空気中には、健康問題を引き起こさない程度のカビ胞子が浮遊しています。気密性の高い環境では結露が発生しやすく、壁の表面などは含水率が高くなります。そこにカビの胞子が付着し、さらに温度条件が整うと、発芽し菌糸を広げていきます。カビが発生して集合体になると、私たちは、緑色や赤色、黒色の菌糸の広がりを目視できるようになります。発芽したカビは盛んに胞子を放出します。カビ胞子の濃度が高くなるとカビ臭を感じるようになります。また、カビ胞子が呼吸で取り込まれると、呼吸器疾患やアレルギー疾患を誘発します。

発生した現象が湿害であるか否かの診断と評価は、図1の左図(「現象ー部材・構成材料」関連図)で、2軸上での関連性を見ることができます。また、非透湿材料で発生した表面結露による濡(ぬ)れや落滴(落水)は、比較的容易に湿害の判断ができるため、設計や施工段階でのさまざまな対策がされています。例えば、窓サッシに、落滴を外部に排水できる水切りを設置し、水が室内の木製額縁や室内に回らないようにしたり(第3回、図1)、表面結露を防止するために設計段階であらかじめ断熱材を厚くするなどの対策が行われています。

一方、多孔質材料での湿害の診断には、材料含水率と温度の時間変動の把握が必要です。多孔質材料の温度と含水率の時間変動を年単位で計算し、設計に応用する場面が増えています。

2. 湿害の原因究明

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