前回は、コンクリートの長所と短所、強度特性、物理的性質を紹介しました。コンクリートの弱点を補い、優れた性質を生かすことで、長寿命のコンクリート構造物を実現できます。今回は、構造物(インフラストラクチャー)に求められる性能を実現するための、コンクリートの配合設計技術について解説します。
1.構造物に要求される性能
構造物の用途によって、要求される性能は異なります。例えば、同じ橋りょうでも、道路橋と鉄道橋では荷重条件、使用条件が異なります。それがコンクリート構造物の場合、使用環境によって劣化の速度が異なります。また耐久性を確保するために、コンクリートに対する要求性能も異なります。
一例を挙げると、寒冷地の山間部に建設される道路橋のコンクリートは、自動車のスリップ事故を抑制する凍結防止剤を散布することから、塩害の恐れがあります。そのため、配合面で塩害対策を講じます。(生コン用語の「配合」は、建築では「調合」と呼ばれます。本稿では「配合」を用います)
構造物に要求される性能には、地震が生じても被害を最小限にとどめる構造安全性や、供用時の快適さなどの使用性があります。また、災害時に早期に復旧できる復旧性や、コンクリートの一部が剥落しても第三者に被害をもたらさない性能、公共施設としての美観や景観が要求されることもあります。さらにこれらの性能が、計画供用期間に、継続的に確保されるための耐久性があります。
土木学会の『コンクリート標準示方書 設計編』では、要求性能を、安全性、使用性、第三者への影響度、美観、(これらの性能の)耐久性、環境性などに分類しています(表1)。
構造物の要求性能 | コンクリートの仕様 |
安全性 | 主として強度 |
使用性 | 変形性能など |
復旧性 | 災害などからの性能回復 |
第三者への影響度 | 剥落抵抗性など |
美観 | 材料の素材、フォルムなど |
耐久性 | 物質透過性、化学的安定性など |
環境性 | 地球環境、地域環境、作業環境など |
2. コンクリートの性能の定め方
構造物に使用されるコンクリートの性能を定める際には、構造物に要求される性能を想定する必要があります。例えば構造設計時には、構造安全性を確保するためにコンクリートの設計基準強度が設定され、これを満足する目標強度が定められます。また、型枠内に確実にコンクリートを充填するための施工性能(スランプや材料分離抵抗性など)が定められます。さらに、耐久性を担保するための空気量や、水セメント比が仕様として与えられます。
コンクリートの目標強度は、設計基準強度が一定の不良率を許す条件で割り増しをして定められます。以下のグラフは、強度の変動が正規分布するという仮定から、設計基準強度に対して不良率を5%とした場合、割り増しをして配合強度(製造時に目標とする強度)を定めた事例です(図1)。
配合強度から求めた水セメント比と、耐久性などから仕様として定められた水セメント比のうち、どちらか小さい方を選定します。したがって、耐久性から定められた水セメント比を選定する場合は、強度に余裕が生じます。ただし、これが過剰にならないための設計上の工夫が必要です。
コンクリートの施工性能(ワーカビリティー)は、流動性を示すスランプ(生コンの柔らかさの程度を表す値)だけでは評価できません。型枠内への充填性や、均質に充填するための材料分離抵抗性も必要とされます。コンクリートの材料分離抵抗性は粘性に支配されているものの、これを示す簡便な評価方法がないことから、通常はスランプだけで、コンクリートの施工性能を評価しているのが現状です。しかし、粘性にも十分に着目しなければなりません。
コンクリートの耐久性を仕様として定めるには、構造物の置かれる環境が定まっている必要があります。例えば、寒冷地では耐凍害性が求められます。この場合、耐凍害性を評価する凍結融解繰り返し試験における相対動弾性係数が仕様とされます。ただし、この試験は数カ月の時間を要するため、コンクリート中の空気量を代用値とします。図2に、コンクリートの空気量と耐久性指数の関係を示します。
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3. コンクリートの配合設計方法
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4. 試し練りと配合修正方法
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