前回は、都市計画の計画に関して、都市計画マスタープランの役割と内容に着目して説明しました。今回は、都市計画の実現手段、その中でも規制について見ていきましょう。
1. 土地利用制度のメニュー
本連載の第1回で概説したように、都市計画の実現手段には、規制、誘導、事業があります。都市計画において、道路や公園などの都市施設が事業によって整備される一方、都市を構成する個々の土地利用は、主に規制によってコントロールされます。日本の都市計画における土地利用制度は、以下の4つで構成されています。
- 都市計画区域(および準都市計画区域)
- 市街化区域と市街化調整区域の区域区分(線引き)
- 地域地区(用途地域とその他の地域地区)
- 地区計画
都市計画区域とは、そもそも都市計画を実施するエリアを定めるものです。区域区分(線引き)は、本連載第3回でその出発点について説明したように、都市計画区域の中を、「積極的に市街化を促進する区域」と、「当面は市街化を抑制する区域」とに分ける手法です。後者の市街化調整区域では、都市開発や建設行為のための、行政の特別な許可が必要になります。一方、市街化区域については、基本的に都市開発や建設行為を自由に行うことができます。
ただし、そこで生まれてくる建築物の用途や密度、形態、構造、防火性能などは、地域地区によって規定されます。その中で代表的なものが用途地域で、市街化区域内を住宅地、商業地、工業地など性格別に分け、それぞれに応じて用途や密度、形態などに制限を加えるものです。地区計画とは、都市の中の特定の地区に限って、その地区固有の目標に応じて、地域地区では対応できない都市計画を定めるものです。これについて詳しくは後述します。
2. 用途地域が生み出す街並み
用途地域について、もう少し詳しく見ていきましょう。現在、用途地域は13種類が用意されています(図1)。良好な戸建て住宅地を想定した第一種低層住居専用地域から、工場の立地を想定した工業専用地域まで、それぞれの目標とすべき地域像に照らして適切な用途、建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)や容積率(敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合)などの密度、さらには道路や隣地の環境保全のための斜線制限(第3章で詳述)などが決められています。各自治体では、これら13種類の用途地域リストの中から、自分たちの都市の各地域にふさわしい用途地域を選んで指定します。

用途地域は、まちの風景をつくりだす隠れたデザイナーです。例えば、駅前に並んだ高いビルには飲食店や遊戯施設などが入居し、そこから買回り品を扱う店舗が軒を連ねた商店街が一本道で延びている。その周りにはマンションが立ち並ぶ一帯があり、少し駅から離れると、次第にマンションは姿を消して戸建て住宅の団地が広がっている。
そういった光景の背後には、用途地域による規制が存在しています。その一つが容積率の規制です。駅前には商業地域が指定されており、容積率は400%までと認められています。商店街は近隣商業地域の指定で容積率は200%まで、マンション街は第一種中層住居地域の指定で容積率はやはり200%まで、そして、戸建て住宅の団地は第一種低層住居地域の指定で容積率は100%までと、それぞれ別の用途地域が指定され、それらが異なる街並みをかたちづくっています。
3. オーダーメイドの地区計画―銀座を例に
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4. ただし、地区計画だけでは街並みはできない
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